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オーディション前日。 周りは皆緊張だったり自信だったりに侵されてる中、ゆうさんは1人パソコンと睨めっこ。
オーディションフォームの必要事項。 『アイドルを目指す理由は何ですか』
全く何を書けばいいのやら…。 いや書くことは決まってるんだけどね。
本当に自分でもどうしてアイドル部に入部したいのか、もう一度アイドルになりたいのかが分からない。
いや、ステージに立つのが嫌いなだけで、アイドル自体はきっと好きだった。 でも、もうゆうさんはきっとステージに立てない。 人前で歌を満足に歌えない。
それなのに、またもう一度アイドルを目指そうって思った。 だから医療人になる夢も捨てて、この高校に入学した。
オーディションは明日だから、今日中に提出しなきゃなのに…。
屋上の入り口の方を見るとないこくんがいた。 一応三年生だし、先輩って呼んどいた方がいいよね?
そう言ってゆうさんの隣に腰を下ろす。
アイドルって、ゆうさんの中ではどういう存在なんだろう。 楽しかったし、大変だったけどやり甲斐はあった。
ファンのみんなとたくさん笑い合って、たくさん辛い思いもしたし、辛い思いもさせた。 でも、笑顔も分け与えられた。
期待…か。 何で自分なんかにそんな言葉かけてくれるんだろう。
最終的にファンを笑顔にできないで、自分の都合で引退したアイドル。 大事なファンから笑顔を奪った。 そんなゆうさんに、どうしてそんな言葉をかけるんだろう。
……気持ちが伝わればいいんだよね。 じゃあ、ゆうさんがアイドルを目指す理由はやっぱり…。
せっかく練習したけど、今のゆうさんの気持ちを言葉にするのは、こっちの曲の方がいい気がする。
一度はやめてしまったけど、諦めてしまったけど、それでもこの曲が今のゆうさんには1番似合う。
ないこ先輩が、審査員の皆さんが何を求めているのか。 その答えを出せる曲。 ……それに、特別悔しい思いをした思い出の曲でもあるから。
体育の授業は基本、やることをやっていれば何を喋っても許される。 だから同じ中学校出身の紫乃宮こたに話しかける。
両親が元有名アイドルで、こたもアイドルを目指しているらしい。 ルックスもよくて歌もダンスも出来るし、流石にオーディション合格は余裕だろうなって勝手に考えてる。
アイドル部に入部できたからと言って、必ずアイドルになれるわけじゃない。 それにオーディションも半分以上の人が落ちるらしい。
でも俺はオーディションを合格できる自信があった。 流石に現役時代と比べると、体力も技術も落ちてる。
だけど、それでも合格できる自信が謎に湧いてくる。
オーディションは多分歌とダンスの両方を見られる。 ちなみに俺は歌だけでなんとかするつもり。
っていうのも、現役でアイドルやってたのもう3、4年前の話だから多分ダンス踊れない。
それに、今までの俺とは違うんだぞってとこ見せるため。 選曲は正直歌いやすさもクソもない曲。
ラップアレンジで、1回でも噛んだら間違いなく終わる。 練習でも未だに成功したことがない。
でも、だからこそ成功すれば合格できる可能性はすごい高い。
今まで結構の数ライブをこなしてきたけど、基本的に毎回緊張してた。 本番には強いタイプではあったけど、多分心配性なんだよね。
今ふと思ったけど、オーディション合格できても活動は個人でやるのかな…。 いれいすはグループだけど、他の先輩たちもグループ組んでるのかな?
でもグループで出来るならワンチャンこたと一緒に活動できるのか…。 結構いいかも…?
顔に出てたのか……。 恥ず…。
急に呼ばれてびっくりしたぁ…。 こたに関しては固まってるし。
こたってそう考えると結構人見知りだよね。 オーディション大丈夫なのかな。
うわぁーやばい、もうすぐ本番だぁ。 こんなに緊張するの久々かも。
さっきまでの自信はどこへやら……。 急に不安が押し寄せてきた。 大丈夫、だよね…?
オーディションは何故か体育館倉庫に呼び出され、順番にやるらしい。 他の生徒からの茶々が入るとかどうとか。
そしてついに、ゆうさんの番が近づいてきた。 あと3分あるかないかぐらい。
倉庫の周りには何人もの生徒が集まって、オーディションの様子を覗いている。 だから余計緊張してる。
ゆうさんの前の人が出てきて、その人と入れ違う形で中へ入る。
うわぁ、やばい緊張。 倉庫内の人間全員がゆうさんのことみてるよぉ…。
ちょっとだけライブのこと思い出すな…。 落ち着け、如月ゆう。
そういって、3分間が表示されたタイマーを目の前に出される。
大丈夫、練習と同じことを喋るだけ。
……緊張してるからなのか、ちょっとだけ言葉が詰まる。
ずっと、アイドルをやっていた頃から、どうして自分がアイドルをやっているのかが分からなかった。
考える必要もなかった。 ただマネージャーの言う事を聞いているだけのロボットになっていればよかったから。
でも、今は違う。
2分45秒……意外と時間余っちゃったな…。
アピールというよりかは、ただ想いを伝えただけの時間になったな。 …でも、これでオーディション落ちたとしても、ゆうさん的には結構満足かも。
もうオーディションを受けた人たちの中で、ここで質問されてる人はあんまりいなかったな…。
五月雨こえさんと一星れるさん…だったっけ? あの二人は結構注目度高そうだったし、質問いくつかされてたな。
やばい、緊張…。 何言われるんだろう…。
現実味がないことなら、東京ドームでライブとか…? いやゆうさんがステージに立てない時点でライブは無理か。
現実味がないこと……。
ライブをしたいのも、ファンの皆を喜ばせたいのもそうだけど、やっぱり一番はこれかな。
ステージに立てるようになれば…きっとまた…。
とうとうきた…。 曲の紹介って、何言えばいいんだろ。 ライブのMCみたいな感じでもいいのかな。
一息、息を吸ってから……