※喘ぎ声あり R-15(?)
桃side
あの日は確か、 星あかりが満月を照らす 一年間の中でも相当綺麗な空と思えるような、夜だった。
辺り一面は森で樹に囲まれていて、 俺が唯一頼れる光は 月の明かりと手に持つ松明のみ。
足場が悪い中、森を歩く途中で拾った長い木の枝を地面に突きながら 盛り上がった地面が無いか、 大きい石が転がっていないかと 用心深く歩を進める。
ないこ
後ろを振り返ると、 夜風に吹かれて草花が音を立ていて。 時々鳥の羽ばたく音が 聞こえたと思うと、 ふと遠くに見えた村の明かりに 目を細める。
棒を強く握り締めると、 その影響でポキリと細い棒が折れた。 二分割され短くなった枝を 地面に投げ捨て、 さらに先へと歩いていく。
...落ち葉を踏み締めながら 思い出すのは、 俺が夜に深い森へ向かう事に決めた 経緯だった。
幼い頃から、俺は先程森から見えた村で暮らしていた。
小さい村だから皆の仲が良くて、 俺も近所の子供と遊んだり、 すれ違う大人などからも 「ないこくん、こんにちは」と名前を覚えられている程だった。
毎日が幸せだった。
もうこれ以上無いぐらい、 暖かくて優しくて。
でも...周囲は気づいたら俺から 遠ざかっていた。
ないこ
モブ
声をかけても振り返る事すらしない、 まるで俺の存在なんて 元から無かったかのような。
理由は後からわかった。
俺に対する嫉妬、羨望、逆恨み。 見事に闇の深い3点セットだった。
どうやら同級生たちの無視、いじめは 先生や生徒たちからチヤホヤされる 俺に対する嫌悪感からだったらしい。
本当に馬鹿だ。
そんな嫌悪感で人を無視するのも。
__こんな事で逃げたくなる、俺も。
モブ
ないこ
俺への嫌悪感はいつしか 俺の家族にまで矛先が向いたらしく、 気づけば虐待をされ始めた。
謝る事しかできなくて。
ただひたすら泣きまくって。
でも助けてくれる人なんていなくて。
ないこ
願いはいつか形になる、 どんな時でもそう信じた。
日常が一変してから数年、 俺はある日、とある噂を聞いた。
モブ
モブ
ないこ
どうやら村の近くにある森の最奥まで 進んでいくと、 伝説と言われたヴァンパイアの住む 館があるらしい。
ヴァンパイアは、 この地域では幻の悪魔と呼ばれる 慕われてるのか恐れられているのか、 よくわからない存在だ。
だが昔の書物を開けると、 ヴァンパイアを見たという人の記録が残っているし、 博物館にも折れた歯などの証拠がある
村の高齢者に尋ねてみても、 見た事があると話す人も多い。
鋭い牙に赤く染まる目。
一度見つかれば、 身体の全ての血液が無くなるまで 吸い尽くされる。
この村にはそんな噂が、 一部の怖い物好きに広がっていた。
...しかし、ここ数十年は、 姿どころか存在さえ薄まっていた。
もうヴァンパイアはいなくなってしまったのでは無いか、 そんな事を言う人もいた。
ないこ
でも、今なら会えるかもしれない。
人に嫌がられて、嫌われて。
挙句の果てにはサンドバッグにされて
もう、限界だった。
人はいつしか終わりを迎える、 それならヴァンパイアに血を吸ってもらい、少しでも彼らの力になれれば。
俺の存在意義はあった、 そう言えるかもしれない。
ないこ
もはや自殺願望の精神のため、 食料や衣服さえ持っていかない。
手ぶらの状態で歩き始めた俺を、 村の建物はどこか__ 嘲笑っている様に見えた。
ないこ
既にボロボロだった体に、 さらにダメージが与えられて 俺は思わず膝から崩れ落ちる。
呼吸が浅くなって、 視界がぼやけて見えて、 体が思うように動かなくて。
ないこ
乾いた笑いが口から漏れる。 後悔なんて、 込み上げてこなかった。
神頼みに等しい行為で助かろうと、 自己満足でしか無い自分の考えを ただひたすら憐れむような。
夜風がさらに強くなる。 細くなった体が 吹き飛ばされそうに__
ないこ
?
突如目の前に現れた人物は、 唇を震わせる俺の姿を見て首を傾げる
透き通る様な青い髪が揺れ、 口を開いた彼の姿から ...鋭い歯が垣間見えた。
ないこ
首元で結んだマントを翻す彼は、 少し驚いた様に目を開くと、 少し屈んで俺の頬に伝った涙を そっと拭う。
?
?
今の夜空の様に深い藍の瞳で見据えた 彼は、俺にそう問いかける。
まさか今出会えるとは思っていなかった俺は、口籠もりながらも答えた。
ないこ
?
理解出来ない、 そう思っているのだろうか。
驚愕の声をあげた彼の声に、 俺の瞳は熱を帯びて 再び熱いものが頬を伝った。
ないこ
ないこ
?
枯れた声で泣き叫ぶ俺の言葉を、 彼は両手を振って遮る。
そして俺の肩をそっと掴むと__ 優しく抱き上げて 困った様に笑った。
?
いふ
ないこ
彼...いふ、と言うらしい。
いふは少し顔を歪めながらも 俺の話を聞いて静かに頷いた。
いふ
ないこ
いふは頼み込む俺の願望に唸ると、 腕を組んで考え込んでしまった。
暫くして顔を上げると__ 真っ直ぐな瞳で俺を捉えてから、 口を開く。
いふ
ないこ
思わず前のめりにある俺に、 いふは「落ち着け」と片手で俺の背中を撫でて、宥める。
いふ
ないこ
いふ
答えを質問で返され、 何も思いつかない俺は 咄嗟に口を閉じた。
いふは落ち着いた声で説明し始める。
いふ
ないこ
いふ
いふ
いふ
いふ
いふ
そう笑ったいふの瞳は、 どこか儚げで寂しげで。
こんな森の奥に一人取り残されたいふは、どうやって生きてきたのだろうか
__ないこを殺せるほど血を吸う事が出来ない。
いふの言葉が脳裏に浮かぶ。
ないこ
いふ
ふと俯いた顔を上げるいふに... 俺は額同士をくっ付けて 一つとある提案をした。
ないこ
いふ
俺を膝に乗せて、 対面の座り方になったいふは 俺の顔を覗き込む。
ないこ
いふ
ヴァンパイアの癖に躊躇う彼に、 俺は小さく笑みをこぼしながら言った
ないこ
ないこ
いふ
彼の整った顔が少しずつ近づいてきて...首元にそっと噛み付かれた。
ないこ
一瞬の痛みが身体を走って、 いふが心配そうな表情で 俺を上目ながらも確認した。
ないこ
ないこ
そんな痛みも束の間、 すぐに激痛は柔らかくなり、 気持ちよさが俺を襲う。
ないこ
いふ
頭がふわふわして、 力が抜けそうだった。
後ろに倒れ込みそうになる俺の頭を、 いふが大きな手で支える。
ないこ
彼が舌で首元をなぞると、 俺の体がびくりと跳ねて大きな呻き声が口から漏れる。
彼の背中に手を回すと、 瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
いふ
ないこ
正直彼の声は聞こえてこない。
ただそこにあるのは、 血液が外へ流れ出す感覚と 快楽、ただそれだけだった。
悪魔とは思えない優しい低音、 それさえも今の俺には興奮材料で。
ないこ
その瞬間、 勢いよく彼に首元を吸われる。
これ以上に無い快感が身体中を駆け巡ると同時に...俺の意識は手放された。
ないこ
瞳を開けると、 カーテンの隙間から差し込む光を浴びて俺はベッドから身体を起こす。
目の前には、 不安そうな瞳で俺を見つめる いふがいた。
いふ
ないこ
そう伝えると、 彼は安堵した様に 小さく息を吐いて柔らかく笑った。
いふ
いふ
ないこ
二人でベッドの上に寝転がり、 小さく笑い合う。
ないこ
いふ
頭を撫でるいふと、 彼の胸に顔を埋める俺。
__一人ぼっちの俺たちは、 いつしか互いを求め合う、 不思議な関係の二人に 変化していったのだった。
うらら
うらら
うらら
いふ(ヴァンパイア) 森の奥に聳え立つ館で暮らす。 森で倒れ込むないこを見つけ、 そのまま血を吸わせてもらう代わりに 彼と館で暮らす事になった。
ないこ(人間) 村で暮らしていたが、村民の虐待といじめから逃げる事を決意。 森で倒れ込んでいた所、ヴァンパイアであるいふに助けてもらう。 館で暮らさせてもらう代わりに、 彼に血を与える。
ほとけ(人間) ヴァンパイアである初兎と共に暮らす 初兎とは幼い頃からの親友で、 彼がヴァンパイアだと知ってからも 常に彼のそばに居続けた。 初兎に対しての恋愛感情は無い。
初兎(ヴァンパイア) 人間であるほとけと共に暮らす。 ほとけとは森の中で彼が幼い頃に出会ったが、気味悪がる様子もない彼に惹かれていった。 時々ほとけの血を吸うと、 甘いスイーツの味がするらしい。
りうら(人間) 昔親からの命令でヴァンパイアの餌として館に売られた。 悠佑に出会ってから、 自分に優しくしてくれるヴァンパイアがいるなんてと好意を持つ様になる。 黄金の血液、という誰が吸っても美味しい血を持っている。
悠佑(ヴァンパイア) 色々なヴァンパイアを点々としていたりうらを買う。 愛情を持たずに育ってきた彼に、できるだけの愛情をと毎日頑張っている。 りうらの血さえ殆ど吸わないし、 大抵は市販の血でなんとかしている。
ヴァンパイア 館で暮らす、生き残りが少ない種族。 血は人間の血を吸う事もあるが、 最近は人の警戒心が強まったため 同意がある上での血しか吸わない。 市販の血も売っている。 運命の相手、と言うものも存在する
人間 ヴァンパイアに血を吸わせる側。 血の味は人によって違い、ヴァンパイアによっても好みが分かれる。 運命の相手に吸われる時は、とてつもない快感が身体を襲う。
うらら
うらら
うらら
うらら
コメント
3件
めっちゃ好きです…語彙力の塊ですかね???????
君が好きだと叫びたi((すみませんでした。 めっちゃ書きたいけど多分一気に5流、6流作品になりそうなのでそっとしときますね((