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yhんhb

第1話 - あ

2023年03月16日

#恋愛

結城真矢

テンジ

おい、流石にこんな高額な領収書は無いだろ。

テンジ

うちみたいな中小は潰れるぞ。

ラクミ

商談なんだから、仕方ないでしょ！

テンジ

だいたい、その商談相手はなんだよ！

ラクミ

お得意様になりそうな、いい人なの。

ラクミ

取引が上手くいったら、大口の契約が取れそうだわ。

ラクミ

あなたが思っているような、身元がはっきりしない人ではないわ。

テンジ

おまえのいい人は、あてにならないんだよ。

ラクミ

そんなことないわ。私を信じてよ。

ラクミ

何年二人で一緒に、会社をやっていってると思うの？

ラクミ

もう、１０年以上も経つじゃないの。

テンジ

そんなにもなるのかい？

テンジ

いいだろう。おまえの言う通り大口の契約が取れそうなら、

テンジ

頑張ってみなさい。

ラクミ

頑張るわ。

テンジ

しかし、今回みたいに高額な請求書は、今後回してこないように。

テンジ

頼むよ！

ラクミ

もう、分かったわよ。

ラクミ

でも、もっと私を信用してね。

～数時間後～

ラクミ

あなた、さっき話していた大口のお客様から、

ラクミ

連絡が入ってきたの。今日、商談がしたいってことだったわ。

テンジ

それじゃ、会社に来てもらえよ。

テンジ

ちょうど、会ってみたいと思っていたんだ。

ラクミ

えーと、それがね・・・

ラクミ

食事でもしながら、商談の話がしたいとおっしゃってたの。

テンジ

そうなのか、それは残念だな。

テンジ

会社を閉めるわけにもいかないしなぁ。

テンジ

仕方ない、今回お会いするのは諦めて、

テンジ

おまえだけ行ってきなさい。

ラクミ

分かったわ。

テンジ

ところで、どんな方なんだい？

ラクミ

それが、そのー、お会いすれば分かるわ。

テンジ

前もってどういうお客様なのか、聞いておきたいんだ。

テンジ

商談に失敗したくないからね。

ラクミ

えーと、とても貫禄のある、信用できる方だわ。

テンジ

ふん、ふん、それから？

ラクミ

もう！そ、そんなこと、会えば分かるじゃない！

テンジ

細かいことでも、気になる性分なんだよ。

テンジ

まあ、今回はいいとしよう。

ラクミ

ところで、今回の商談の料金なんだけど、

ラクミ

経費で落としても、構わないかしら？

テンジ

ああ。構わないよ。頑張ってきなさい。

ラクミ

分かったわ。

～数時間後～

ラクミ

ねぇ。今日は商談だと言って、

ラクミ

デートの代金を経費で落とせることになったの。

ジン

えー。本当ー？さすが社長！

ジン

だったらさー、食事の後、僕のお店にも来てよ。

ジン

今月、僕の誕生日なんだ。

ラクミ

そうなの？

ラクミ

何か欲しいものない？

ジン

特にはないんだけど、シャンパンを店で開けてくれない？

ジン

シャンパンタワーを一度だけでも、できたらいいな・・・

ラクミ

もちろん、いいわよ。

ラクミ

会社の経費にするから、シャンパンタワーでも何でも大丈夫だわ。

ジン

ありがとう。うれしいよ。ラクミさん。

ラクミ

ところで、今日は何か食べたいものがある？

ジン

ラクミさんと一緒だと、何を食べてもおいしいけど、

ジン

まだ、寒い季節だし、てっちりが食べたいな。

ラクミ

そうね、鍋がおいしい季節よね。

ラクミ

そうしましょう。

ジン

わーい。だからラクミさんのことが、大好きだよ。

～後日～

テンジ

今、どこにいてるんだ？

テンジ

この間の商談の領収書を見たんだけど、

テンジ

なんだ、この金額は？

ラクミ

なんだって、商談を会社の経費で落としたっていいと

ラクミ

言ってたわよね？ちゃんと、許可を取ってからだし・・・

テンジ

だからって、５０万円なんて、あり得ないだろ。

テンジ

一体、どこに行ったらこんな馬鹿げた値段を請求されるんだ！

ラクミ

えっ。えーと、

ラクミ

先日は、お客さんが一人じゃなかったの。

ラクミ

７人いらっしゃったの。えーと、

テンジ

それで！

ラクミ

お酒を飲めるところを探してくれと言われて、ラウンジへ行ったの。

テンジ

だからって、おかしいだろ！

テンジ

こんな値段のするラウンジなんて！

テンジ

ぼったくりじゃないか！

ラクミ

そうなのかしら？私もそんな気がしたけど・・・

テンジ

それで、商談はどうなったんだ？

ラクミ

それが、そのー、まだ契約までいってないの・・・

テンジ

そんなことって、お前は馬鹿だったのか？

ラクミ

ごめんなさーい。

ラクミ

絶対に次は契約してもらうから・・・

テンジ

当たり前だろ！

テンジ

こんなことして、次はないと思えよ！

テンジ

上手くいかなかったら、お前はクビだ！

ラクミ

そんなー・・・

～数日後～

ギンジ

元気か？テンジ

テンジ

久しぶりだなー。どうしたんだい？

テンジ

珍しいね。こんな時間に電話をかけてくるなんて。

ギンジ

実は、気になってたことがあって電話したんだ。

テンジ

気になってたこと？

ギンジ

それがさ、ラクミさんのことなんだけど・・・

ギンジ

俺が出会いのマッチングアプリをやってるって

ギンジ

前に話していたことがあっただろ？

テンジ

そういえば・・・

テンジ

それと、ラクミがどうしたって？

ギンジ

それが、ラクミさんが登録してるのを、

ギンジ

たまたま見つけたんだ。

テンジ

え！見間違えとかじゃないのか？

ギンジ

そう思いたかったんだけど・・・

テンジ

分かった。つい最近のラクミの様子がおかしいんだ。

テンジ

マッチングアプリとなんか関係あるのかな・・・

ギンジ

まぁ、ちょっと気に留めておくぐらいにしといたら？

ギンジ

俺もラクミさんのことは信じたいからな。

テンジ

また、何かあったら、連絡してくれよ。

～数日後～

ラクミ

この間、商談に行った大口になりそうなお客様なんだけど、

ラクミ

連絡が来たの。また、商談して欲しいんだって。

テンジ

そうなのか・・・

テンジ

商談はよしとしても、前回みたいに馬鹿げた金額の接待はよしてくれよ。

ラクミ

もう、何回も同じことを聞いたわ。

ラクミ

分かってるわよ！

テンジ

本当か？おまえは抜けているところがあるからな・・・

テンジ

心配なんだよ。

テンジ

ちゃんとした商談なんだよな？

テンジ

詐欺にあってるわけじゃないよな？

ラクミ

もちろんよ！

テンジ

これまでお前と会社を経営してて、こんな高額な接客なんて

テンジ

したことがないじゃないか？

テンジ

騙されてるんじゃないよな？

ラクミ

うっ。当たり前じゃないの。私を信じてよ。

ラクミ

いくつもの商談で、ずっと成功してきたじゃない？

テンジ

そうだよな。俺が心配性なだけなんだよな？

テンジ

気になるけど・・・

ラクミ

しつこい男は嫌われるわよ！

テンジ

わかったよ・・・

テンジ

それはそうと、クレジットカードを渡しておくから、

テンジ

次からは、それで決済しておいてくれ。

ラクミ

分かったわ。ありがとう。

～数日後～

テンジ

なぁ。テンジだけど、ちょっと頼みたいことがあってさ・・・

ギンジ

どうしたんだい？

ギンジ

この間の話と関係あるのか？

テンジ

そうなんだよ。ラクミの奴、つい最近おかしいんだ。

テンジ

先日、１回で５０万円の接待をしておいて、

テンジ

知らん顔してたんだぜ。

テンジ

随分怒っておいたから、また同じことはしないと思うんだけど・・・

ギンジ

それで、頼みっていうのは？

テンジ

そうそう、ラクミが明日商談があるって言ってたんだ。

テンジ

だから、明日はラクミを尾行してやろうと思ってるんだ。

テンジ

そこで、お願いだ。

テンジ

明日、ラクミを一緒に尾行して欲しいんだ。

ギンジ

えー、尾行？探偵じゃあるまいし、そんな事・・・

テンジ

急なお願いで、申し訳ないと思ってるんだが、

テンジ

そこを何とかお願いできないかな？

ギンジ

おまえ、仮に本当の商談だったら、ラクミさんに尾行がバレた時、

ギンジ

一瞬で信用をなくすぞ？

ギンジ

それでも、尾行するつもりか？

テンジ

ああ。今のところ、疑いは全く黒に近いグレーだと思うよ。

ギンジ

仕方ないなぁ。マッチングアプリの話を持ち掛けたのは俺だし、

ギンジ

ここは一肌脱いでやろうか。

テンジ

ありがとう、持つべきものは友だよ。

ギンジ

俺はラクミさんの友人でもあるから、ばれたら俺も信用なくすなぁ。

～翌日～

ギンジ

おい。テンジ、ラクミさんを見つけたぞ。

ギンジ

若い男と腕を組んで歩いているぞ！

テンジ

やっぱり・・・

テンジ

そんな事かと思っていたよ。

テンジ

そのまま、尾行を続けてくれ。

ギンジ

おい、テンジ、お前いったいどこにいるんだ？

テンジ

悪い、ちょっと立て込んでいるんだ。

～数時間後～

ギンジ

おい、テンジ、ラクミさんと若い男が、ホテルに入っていったぞ！

テンジ

あいつー。まさかと思ったが、ホテルにまで行く仲だったとは。

ギンジ

本当だな。悪い方でおまえのカンが当たったな。

テンジ

まだ、しばらく見張っておいてくれ。

テンジ

悪いな。

ギンジ

なに、今更、遠慮するな。

テンジ

これから、すぐに行くから！

～数時間後～

ラクミ

ちょとー、テンジ、カードで接待費を払っていいって言ったわよね？

ラクミ

使えないじゃない―！どうしてくれるのよ！

ラクミ

かっこ悪いったらありゃしないわ。

テンジ

使えなかったって？おかしいなー。

ラクミ

おかしいなー、じゃないわよ！

ラクミ

どうしてくれるの？

ラクミ

私、あんたがカード使っていいって言うから、

ラクミ

現金を持って出なかったのよ！

テンジ

そうなんだ。悪かったねー。

ラクミ

分かってやってるんじゃないの？

ラクミ

嫌がらせなの？

テンジ

そんなんじゃないよ。

テンジ

どうして俺がお前に嫌がらせなんてするんだ？

テンジ

じゃ、現金を持って行くから、

テンジ

今どこにいるか、教えてくれよー。

ラクミ

えっ、それはその・・・、えーと・・・

テンジ

ちょうど、近くにいると思うんだ。

ラクミ

どうして、近くにいるって分かるのよ？

テンジ

それは、お前が今どこにいるのか知ってるからだよ！

テンジ

どうも、つい最近金遣いが荒いと思ったら、

テンジ

こんなことになってたなんて。

ラクミ

なんのことかしら？

テンジ

よくも商談だなんて言えたものだな！

テンジ

まさか、会社のお金を横領していたなんて、

テンジ

思いたくもなかったけどな！

ラクミ

そんな、誤解だわ。

ラクミ

今日も商談に行っていたんだから。

テンジ

まだ、そんな嘘をついているのか？

テンジ

お前がそんなに面の皮の厚い女だとは、思ってなかったよ！

ラクミ

さっきから、なんの話をしているの？

テンジ

お前、マッチングアプリに登録しているんだってな。

テンジ

今日の商談は、そこで知り合った男じゃないのか？

ラクミ

何言ってるのよ・・・

ラクミ

ちゃんとしたお客様よ。

ラクミ

この間、説明したじゃない。

ラクミ

もう、忘れちゃったの？

テンジ

分かったよ。何を言っても白を切るつもりだな。

テンジ

横領の件もそうだ。

テンジ

一体、いつから会社の金を使い込んだんだ？

ラクミ

そんなの、知らないわよ！

テンジ

さっき、俺が近くにいると、言ったよな？

テンジ

ずっと、ギンジがお前の尾行をしていたんだ。

テンジ

気付かなかっただろ？

ラクミ

えっ。嘘。

テンジ

嘘なんかつくものか！

テンジ

お前、若い男とホテルに入ったそうだな？

テンジ

いつから、俺を裏切っていたんだ！

ラクミ

ひっ！

テンジ

これから、お前のいるホテルまで行って、

テンジ

現金で支払いをしてやるよ。

テンジ

今から迎えに行くから、帰ったら離婚の話合いだな。

～後日談～

テンジ

ラクミは社長だと身分を偽り、若い男と会社のお金で豪遊していた。

テンジ

マッチングアプリで知り合った男とは、今でも続いているらしい。

テンジ

その男は実はホストで、ラクミが必死で働いて稼いだお金を、

テンジ

店で使わせているそうだ。

テンジ

すでにがんじがらめになったラクミは、そんな生活から抜け出せないらしい。

テンジ

結局ラクミは、仕事も家庭も友人さえ、一度に失くしてしまった。

テンジ

実家に帰っても、今回のことで家族に絶縁された。

テンジ

離婚をし、借金をしてまでホスト通いをやめない娘に、愛想が尽きたらしい。

テンジ

何を言っても無駄だと分かってのことだという。

テンジ

今では安アパートに住み、バイト生活をして、一気に老け込んだ。

テンジ

ラクミの数々の横領が無くなり、余裕ができた。

テンジ

真面目な商談で出会った相手に買われ、会社は大きくなった。

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結城真矢

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