一覧ページ

LINE593

第1話 - あ

2023年05月07日

#スカッと

田中俊樹

ライミ

フウコちゃん、明日ヒマ？

フウコ

ライミさん、お疲れ様です。明日は私、学校です。

ライミ

学校、何時に終わるの？

フウコ

部活があるから、夕方5時に帰る予定ですけど。

ライミ

そっか！ちょうどよかったぁ。

ライミ

実はさ～、明日の夜、急に彼氏と会う事になっちゃって。

ライミ

バイトのシフト変わってくれない？夜は時給割り増しだし、良いでしょ？

フウコ

え？良くないですよ。私高校生だから、門限7時なんですよ。

フウコ

門限を守る約束で、休みの日だけバイトを許してもらってるんです。

ライミ

もう高校生なのに門限があるって、ダサっ！

ライミ

ってゴメンゴメンww。フウコちゃんはお子ちゃまだもんね。

フウコ

そんな事言われても。私、学生ですよ。

ライミ

ねぇねぇ、お願い！21時までのシフト、変わって♪

ライミ

時給も100円増しだよ！今度一緒にライブ行く時、ご飯おごるから。

フウコ

…ちょっと親に相談してみます。

ライミ

話が分かるね～。うん聞いてみて！

フウコ

お母さんに聞きました。21時に迎えに行くので、それまでならいいって。

ライミ

良かった。ありがと～。じゃ、明日よろしくね。

～1週間後～

ライミ

フウコちゃん、「GAT-TUNの夏ライブの事なんだけど。」

ライミ

一緒に行く約束だったじゃん。チケットは取ってくれた？

フウコ

はい。もう予約しましたよ。

ライミ

あのさ、言いづらいんだけど今月は金欠なんだよね。

フウコ

そうですか。もしかして、行けなくなっちゃったんですか？

ライミ

いや、行けるっちゃ行けるんだけど。

ライミ

バイト代が入るのって月末でしょ？

フウコ

はい。

ライミ

チケット代を払うのに間に合わないから、フウコちゃん立て替えてくれない？

フウコ

え～ライミさんの分を払うんですか？

フウコ

二人分合わせてだと2万円くらいになっちゃうんですけど。

ライミ

別にいいでしょう？後で返すんだし。

フウコ

そりゃ、そうですけど…。学生の私には2万円は厳しいっていうか。

ライミ

先週、シフトも変わりに入れて上げたでしょ？結構稼げたんじゃない？

フウコ

バイトのシフトを変わってほしいなんて頼んでないですよ。

フウコ

ライミさんがどうしても、って言うから変わっただけです。

ライミ

そういうイジワルな言い方しちゃうの？冷たい子だね～。

フウコ

イジワルなんて、そんなつもりじゃないですよ。

ライミ

だったら良いでしょう？ね、立て替えといて。月末には返すから。

フウコ

うーん。必ず返してくれますよね？

フウコ

2人分も払ったら、手元に残るバイト代がちょっとしか無くなっちゃう。

ライミ

もちろんだよ～。必ず返すから！だからよろしくね！

フウコ

しょうがないなぁ。約束ですよ。

ライミ

わかったわかった。じゃあね～。

～さらに1週間後～

フウコ

ライミさん、昨日お給料日でしたね。

ライミ

そうだね。

フウコ

このあいだのチケット代1万円は？

ライミ

あ～ごめんねぇ。忘れてたww。

フウコ

忘れてた、じゃないですよ。返してもらえません？

フウコ

私も今月、買いたいものがあるからお金が必要なんです。

ライミ

え、もしかしてデート代？彼氏が出来ちゃった？

フウコ

違います！勉強で使うタブレットが壊れちゃったから。

フウコ

自分で買うんですよ。バイトはこういう時の為でもあるんです！

ライミ

お勉強の為？マジメだね。彼氏じゃないんだ。

ライミ

もう高校生なのに彼氏居ないとか、めずらしいよね。女子高なの？

フウコ

共学ですけど、彼氏彼女いないのは、私の周りじゃ普通です。

ライミ

え～終わってる。私が高校の時なんて、入学して半年で告白されなかったら、

ライミ

〇高ブスって呼ばれちゃってたよ。フウコちゃんだいじょうぶ～？？

フウコ

そんな悪口言う人はいないから大丈夫です。そんなことより。

フウコ

バイト代が入ったら、チケット代を返してくれる約束でしたよね。

ライミ

あのね、そのことで相談なんだけど。

フウコ

なんでしょう？

ライミ

来月、私の親友が結婚する事になってね。

フウコ

それは良かったですね。

ライミ

ご祝儀で10万円包むから、また金欠なの。チケット代はまた今度でいい？

フウコ

今度でいい？って…必ず返すからって約束だったのに。

ライミ

返す事は返すけど、できれば来月に延ばして欲しいんだよね～。

フウコ

そんな。

ライミ

フウコちゃんはまだ高校生だし、お友達の結婚式なんて行った事ないよね。

フウコ

ありませんけど。

ライミ

ご祝儀ばかりじゃなくて、女は衣装代とかヘアセット代とかね。

ライミ

お呼ばれされると、お金が色々かかるのよ。

フウコ

そうなんですか。でも私もお勉強にお金が必要なんですよ。

ライミ

フウコちゃんはさぁ、まだ親と一緒に住んでるんでしょ？

フウコ

もちろん。

ライミ

なら、タブレット代なんて親に払ってもらいなよww。余裕でしょ！

フウコ

ぜんぜん余裕じゃないですよ。

フウコ

塾代もかかるし、毎月カツカツだって母がいつもボヤいてます！

ライミ

へ～、でも今月返すのは無理。来月返すから。

フウコ

え…信じられない。

ライミ

たった1万円でしょ。ちょっと待ってて。

フウコ

またですか？ほんとに返しますよね。

ライミ

ほんとだって！フウコちゃん。やさしいね。

フウコ

ほめられてもうれしくないです。

ライミ

まあまあ、もう一個お願いしてもいい？

フウコ

借金なら無理ですよ。私、高校生ですから。

ライミ

ううん、お金じゃなくて～今度の土日のシフト、まるっと代わってほしいの。

ライミ

彼氏と旅行に行く事になったから。

フウコ

それ本気ですか？お金が無いのに旅行ですか？

ライミ

あー大丈夫。彼氏が全部、旅費を払ってくれるからww。

フウコ

でも私、来週は定期テストがあるんですよ。

フウコ

だから今度の週末はシフト入れてなかったのに。

ライミ

フウコちゃんは真面目ちゃんだね～。受験生でもないし、勉強なんて。

ライミ

女の子はさ～。頭より愛嬌だよ？テストなんて適当でいいじゃん。

フウコ

そういうわけにはいきません！頑張って入った高校なんだもん。

ライミ

あ、そう。でも半日だけのシフトだよ？

ライミ

フウコちゃんは要領良いから、そのくらいイケるでしょ。

フウコ

え、ちょっと。

ライミ

店長に、シフト代わったって言っておくから。よろしく。

フウコ

も～…冗談じゃないよ。

～２週間後、店長とのLINEにて～

ダイコク

フウコさん、バイトの勤務表の事で確認したいんだけど。

フウコ

お疲れ様です、店長。どうかしましたか？

ダイコク

先週の土日、フウコさんが出勤してた？

フウコ

ええ、ライミさんに強引に頼まれて、シフトを変わりましたけど。

ダイコク

そうか。

フウコ

定期テスト前だって言ったのに、どうしても変わってくれって、しつこかったから。

フウコ

仕方なく変わりましたけど、テスト勉強が大変でしたよ…。

ダイコク

そうか、それは申し訳なかったね。そういう時は私にいってくれ。

ダイコク

人出が足りない時は、店長の私がシフトに入らないといけないからね。

フウコ

すみません。店長がその日、２号店のシフトが入ってらっしゃるって聞いたので。

フウコ

それに、私も少しバイト代稼ぎたかったから。

ダイコク

それは分かるが、学生は勉強が第一だからね。

ダイコク

本業に支障が出ない範囲で働いてくれればいいから。

フウコ

はい、わかりました。

ダイコク

なんでシフトの事を確認したかと言うとだね。

ダイコク

先週の土日の勤務が、フウコさんではなくてライミさんが出た事になってるんだよ。

フウコ

えっ!そんなハズはないですよ！私、その日はしっかり働きました！

フウコ

だってライミさん、その日は彼氏と旅行って言ってましたもん。

ダイコク

そうか、ウチの勤務表は手書きで記入する事になっているから。

ダイコク

多分誰かが勝手に書き換えたな。

フウコ

そんな事、出来るんですか？

ダイコク

多分、勤務表のページを勝手に新しいものに差し替えて、書き換えたんだろう。

フウコ

うそでしょう。それ絶対あの人の仕業ですよね。

ダイコク

多分そうだろうな。しかし、こんなバカな事をして、アイツは！

フウコ

アイツ？

ダイコク

ああ、いや。つい、本音が。実はライミは私の姪なんだ。

フウコ

そうなんですね！驚きました。

ダイコク

もう、学生の頃から人様に迷惑ばかりかけてきたもので。

ダイコク

根性を叩きなおしてくれとライミの親から頼まれて、ウチで雇ったんだよ。

フウコ

ああ…（すべて納得）。

ダイコク

こんな、高校生の女の子に迷惑をかけるようじゃ、どうしようもない。

フウコ

はい。

ダイコク

先週の土日の勤務は、きちんとフウコさんに付けておくから。

フウコ

ありがとうございます。助かります。

ダイコク

ライミには厳しく言っておくよ。だから今回は大目にみてやってくれ。

フウコ

はぁ、分かりました。

～その夜、兄とのLINEにて～

フウコ

お兄ちゃん、お仕事お疲れさま。

ジン

お、どうした、フウコからLINEなんてめずらしいな。

ジン

学校でなんかあったか？それとも母さんと喧嘩したとか？

フウコ

お母さんとは喧嘩しないよ(笑)。学校も順調。

ジン

それは良かった。

フウコ

それより、バイトの事なんだけど。こまった先輩がいてね。

ジン

へー、どんな先輩？

フウコ

最初の頃はね、同じ「GAT-TUNファンだし、気が合う先輩だと思って、」

フウコ

ライブも一緒に行く約束しちゃったんだけど。

ジン

だけど？

フウコ

チケット代を私に立て替えさせようとしたり。

ジン

なんだそれ。フウコが高校生だって分かってて立て替えさせるのか。

フウコ

そうなの！それだけじゃないの。

フウコ

彼氏とデートだとか旅行だとか言って、バイトのシフトを強引に

フウコ

変えたあげく、自分が働いたって事で店に報告してたの！

ジン

それはダメだろ。店長に報告した？

フウコ

店長が先に気付いて、修正してくれた。

ジン

なら良かった。でもそのバイト、辞めたほうがいいな。

ジン

今後も都合よく利用されるぞ、その先輩とやらに。

フウコ

そうしたいのは山々なんだけど、田舎だし近所にいいバイトが無くて。

フウコ

それに、「GAT-TUN]のチケット代も踏み倒されそうなの。

ジン

踏み倒されそう？なんで。

フウコ

ファンクラブに入っているのは私だから、チケットも手配したの。

ジン

そうか。

フウコ

うん。チケット代を今月のバイト代で返すっていうから、

フウコ

2人分立て替えたんだけど、お友達の結婚式があるから今月は返せないって。

ジン

はぁ？ありえんな。

フウコ

結婚式のご祝儀が10万円って普通なの？高すぎない？

ジン

友達の結婚式なら、2,3万が相場だよ。

ジン

10万円は、兄弟とか親戚レベルの金額だな。

フウコ

そうなんだ、知らなかった。

ジン

知らなくても無理はないよ。将来の為に覚えておけば良いよ。

フウコ

うん。

ジン

それより、チケット代が回収出来ないのは困るよな。

ジン

チケットはどっちが持ってるの？

フウコ

私だよ。二人分ね。

ジン

そっか、もう届いてるんだな。

フウコ

自分で手配したんだよ！偉いでしょ。

ジン

チビだったフウコも成長したなぁ。手配、結構メンドウだったろ？

フウコ

うん。色々手続きが多くて、ややこしかったよ。

ジン

そっか。でも、それならいい考えがあるぞ。

ジン

その先輩から、わざわざチケット代を回収しなくても済むようにしてやる。

フウコ

ほんとに？どうやって？

ジン

明日の夜、ちょっとそっちに帰るから！兄ちゃんに任せとけ。

フウコ

ありがとう！また相談に乗ってね。

ジン

わかったよ。勉強とバイト、がんばれよ。

フウコ

はーい。

～その２日後～

ライミ

フウコちゃん、ライブのチケットってもう届いてるんだっけ？

フウコ

届いてますよ。

ライミ

２枚とも？

フウコ

そうですけど、それが何か？

ライミ

それさぁ、ライブの当日に私が持っていくから、２枚とも預かるよ。

フウコ

いえ無理です。

ライミ

遠慮しないで！私が安全に預かっておいてあげるから。

フウコ

だから無理だってば。それにチケット代も未だ貰ってませんし。

ライミ

それとこれとは話が別！

ライミ

高校生のフウコちゃんが持ってたら、失くしちゃうかもしれないでしょ？

フウコ

失くしませんよ。失くしようがないチケットだもの。

ライミ

なに、その謎の自信ww。

フウコ

だってパスワードが無いと使えない、eチケットなんだもん。

ライミ

へ？

フウコ

だから、紙媒体のチケットじゃなくて、アプリとパスワードで提示する、

フウコ

電子チケットなんですよ！

ライミ

なによそれ！転売出来ないじゃん。

フウコ

えっ？ライミさん、チケットを転売する気だったんですか！？

ライミ

あ、しまった。

フウコ

だから、お金を払おうとしなかったんですね？

ライミ

ち、違うよ。そんな訳ないじゃん。

フウコ

チケットは絶対譲りませんよ。２枚とも。

ライミ

なんでよ。一緒に行く約束だったじゃん。

フウコ

約束って…。

フウコ

お金もまともに払ってくれない人となんて、もう行きませんよ。

ライミ

ちょっと、どういうこと。

フウコ

もう、ライブは他の人と行くって決めたんで。

ライミ

何を勝手に決めちゃってんの！チケットは私のものでしょう？

フウコ

現時点ではチケットは２枚とも私のものです。お金、貰ってませんから。

ライミ

は？そんな理屈が通ると思ってんの？２枚とも私によこしなさいよ。

フウコ

だから、eチケットだから無理なんだって。転売防止対策ですよ。

フウコ

ライミさんみたいな人が世の中に沢山いるから。

ライミ

そんなバカな。

フウコ

それにライミさん、他にもやらかしてますよね？

ライミ

へ？

フウコ

バイトのシフト、私が働いてた日の勤務記録を改ざんしたでしょ？

ライミ

え、そんなことしてないよ～。

フウコ

その日の店の防犯カメラ、ライミさんは一切映ってないですよ。

フウコ

だから店長にもバレバレでした！

ライミ

え、叔父さんにも？

フウコ

それに、いままでのLINEの記録も全部スクショしたから。

フウコ

今更私をブロックしても遅いですよ。全部叔父様に報告済です！

ライミ

ちょっと、なんでそこまでするのよ？

フウコ

お金の恨みは怖いですよって事。

フウコ

高校生の私に思い知らされるって、情けないですよね～。

ライミ

なんて事を…。

フウコ

それじゃ、私バイトも辞めるので。店長にしっかり叱られて下さいね～。

～後日談～

フウコ

その後、私はコンビニのバイトを辞め、働いた分の給料もしっかり払ってもらえた。

フウコ

ライミさんは、もう一度店長が厳しく教育する事になったそうだ。

フウコ

一度、店の外からレジを見たら、店長にめちゃくちゃ怒られている彼女の姿が見えた。

フウコ

兄からのアドバイスで、LINEのスクショを取ったり、

フウコ

チケットの転売防止の仕組みを学んだ事が、ライミさんとのやりとりで役に立った。

フウコ

自分より大人だからと言っても、尊敬出来る人ばかりではない。

フウコ

そういう現実を学べた、という意味では良い経験だったと思う。

フウコ

ちなみにライブは、なんと兄が一緒に行ってくれる事になった。

フウコ

せっかくだから2人で楽しんで来ようと思うのだ。

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

田中俊樹

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE593

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE593

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧