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その日は突然やってきた。
荒樹加奈が悪魔になった日だ。
読む人
校庭に､セミの鳴き声と、夏服の生徒たちが「おはよう」とあいさつする声がひびく
読む人
七月の気温は高く、朝だというのに歩いているだけで汗が流れた。
読む人
中学１年生の加奈は、暑い中でも元気いっぱい。
読む人
今日も親友の花取エリカと一緒に校舎へ続く道を歩いていた。
荒樹加奈
ねー、エリカ。旧校舎のユーレイのウワサ、知ってる？
読む人
加奈が言った。ショートボブで、大きな目がくるくるとよく動く加奈は､子供っぽくて甘えん坊。
花取エリカ
ウワサ?
読む人
エリカが顔をしかめた。
読む人
長めの前髪をサラリと横に流し、落ち着いた声で話すエリカは、加奈よりも大人っぽい。
読む人
二人が並んで歩いていると、まるで姉妹のようだった。
荒樹加奈
あのね、二階の教室にある生徒名簿に、自分の名前を書いて、願い事をすると、願いを叶えてくれるんだって。
花取エリカ
なにそれ。超うそくさっ
荒樹加奈
えー。これけっこう本当らしいよ
花取エリカ
私そうゆうオカルト、信じないし
荒樹加奈
今度試してみよーよ、エリカ
花取エリカ
加奈ひとりで行ってきな
読む人
ちっとも乗ってこないエリカを見つめて、加奈はクククと笑った
荒樹加奈
あっ、怖いんでしょー。エリカ、けっこうビビりだからね
花取エリカ
誰がビビりよっ！
読む人
エリカが頬をふくらませ、加奈は大笑いした。
荒樹加奈
あっはははは！
読む人
加奈のかばんについた、クマのマスコットも楽しそうにゆれた。
読む人
クマはTシャツを着ていて、とぼけた可愛い顔をしていた。
読む人
エリカのカバンにも同じマスコットがついている。
読む人
中学に入学する前、二人がカバンと一緒に買ったものだ。
荒樹加奈
（エリカとは、小学生のころから、なんでもかんでもおそろいにするほど、大の仲良しだもんねっ）
読む人
加奈はマスコットのクマをみつめながら、それを買ったことを思い出した。
読む人
春休みのある日、二人はショッピングモールのバッグ売り場に行った。
読む人
ちょうどいいデザインスクールバッグを見つけると、二人して手にとる。
荒樹加奈
中学のカバン、これにしよー。おそろい！
読む人
加奈がそう言うと、エリカも賛成した。
花取エリカ
いいねー
荒樹加奈
うちの中学、カバンは自由ってのがいいよね❢
読む人
加奈は、売り場のフックにかけららていたボールチェーンつきの動物マスコットを
読む人
指さした。
荒樹加奈
ねーねー、エリカ。マスコットもおそろいにしよーよ
花取エリカ
かわいー
読む人
エリカはたくさんならんでいるマスコットに見入った。
読む人
クマやうさぎ、猫などいろいろな種類があって、1つ選ぶのがむずかしい。
花取エリカ
くまも可愛いし、うさぎも可愛いし……………悩むなぁ。加奈は、どれがいい？
荒樹加奈
うーん今日は一個買って、また別のが欲しくなったら買いに来るってのは？
花取エリカ
そうだね。じゃあ…………このTシャツ着てるクマはどう？
荒樹加奈
あ、私もそれ可愛いと思った！
花取エリカ
じゃあこれにしよ
読む人
エリカはくまのマスコットを2つ、フックからはずして微笑んだ。
花取エリカ
楽しみだね、中学
荒樹加奈
うん、楽しみ！
読む人
マスコットを買った日のことを思い出していた加奈は、となりを歩くエリカに声をかけられて、ハッと我に返った。
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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