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言葉がわからなくなった君へ

もしかしたら、これが最後の言葉になるかも知れません

私の言葉がわからなくなった今でも私の声は聞こえますか

あ、ごめん
声じゃないね

あまりにも悲しく
あなたの顔を見るのがツラいので
あなたのスマホに送っています

私、卑怯かな?

ごめんね

あなたと出会ったのは
小学校入学の時だったよね

あれから20年か
ずいぶんと前から知ってるよね

というか、あなたのことは
けっこう知ってると思ってた

中学校の時や
高校の時

あなたとはまだ何もなかった頃

学校も一緒だったからかな?
よく話してたね

けっこうあなたのことは
知ってると思ってたんだけどな

二十歳になって
お互いがフリーになって

私が泣きながらなぜだか
あなたに失恋の話をして

あなたはちょっと笑いながら
ようやく俺の番になったねって

そのとき私も気付いたんだ

あ、そうか、私にとって
あなたが
一番安心する人だったんだって

わたしを理解してくれる人は
あなただし

あなたを理解できる人は
私だし

恥ずかしいけどそう思ったんだ

もう私の言葉は
わからないかも知れないけれど

ホントにそう思ったんだよ

私たちが付き合い出した頃
あなたは自動車免許を
取ったんだよね

そして古くて
ちょっと壊れそうだったけど

かわいい安い軽自動車を
ようやく手に入れたんだ

あなたは大学生だったし
私は看護の専門学生だったし

二人のバイト代からだったから
とっても高価な買い物だったよね

そんなオンボロな軽自動車だったけど
暇ができればいろんな場所に行ったよね

山道でエンジンがかからなくなったりして、、、
あのときは焦ったなぁ

けれど二人でいるだけで
とても安心したし
とても楽しかった

今では二人とも仕事ができて
電車で通うようになって
車なんてあまり使わなくなっちゃったよね

だから駐車場代ももったいなくて、、、
思い出だったけど軽自動車を
知り合いの車屋さんに処分してもらったんだ

言葉がわからなくなった君へ

思い出はいつでも胸にあるから
楽しかった出来事はいつでも思い出せるんだ

ねぇ、そうだよね
それとももう、、、

思い出すことすら
出来なくなったのかな?

少しでも、ほんの少しでもまだ理解できるなら

私のお願いを聞いて欲しい

そろそろ籍をいれようか
なんて言われて舞い上がっていた
私のお願いを聞いて欲しい

舞い上がって
あなたの気持ちがわからなかった
私のお願いを聞いて欲しい

もしかして
こんなあなたには叶えられない
最後のお願いに
なっちゃうかもしれないけれど

私のお願いを聞いて欲しい

わたしに内緒で 勝手に買った あの変な形の車 今すぐ返してこい!!! 今すぐだ!

籍も入れるから 無駄遣いは できないね!! って 私言ったよね!!

私の言葉を 理解できなかったんなら あの変な車に ガムテープで グルグルに巻いたおまえを突っ込んで

一緒に海に 投げ捨ててやるからな!!

わかったか!! ぼけぇ!!

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