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鈍色ブレイクスルー

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鈍色ブレイクスルー

1 - 鈍色ブレイクスルー

♥

9

2022年10月17日

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……今から数百年前…… ーーとある山の中腹辺り

風太

ハァ……ハァ……

風太

【木を見上げて】……

風太

(あそこなら見やすいか……)

バッ ササッ シュタッ

風太

……

山の裾野一面に鈍色の霧が拡がっている

風太

……このクソ霧……

霧はゆっくりとこちらに向かってくる

風太

(数ヶ月前……)

風太

(慎ましく暮らしていた俺たちの前に)

風太

(『ソレ』は突然現れた)

ーー数ヶ月前 月見村

佐知

また負けた〜っ!

風太

にっしし! 三連勝〜!

佐知

コマ遊びでそんなに真剣になんないで〜!

佐知

妹なんだからもっと手加減して〜!

風太

いいか〜? 佐知

風太

遊びだろうが何だろうが

風太

勝たなきゃダメなんだぞ?

佐知

遊びならいいじゃん

風太

チッチッチ

風太

例え遊びでも勝つぞ!って

風太

そういうクセを付けとかないと

風太

いざって時に割食っちまうぜ?

通りすがりA

ハハハ! お前らまたケンカか〜?

通りすがりB

兄妹仲良しなこって

母ちゃん

ただいま……ってちょっとどうしたんだい?

佐知

あ!母ちゃ〜ん!

佐知

また兄ちゃんが変なこと言う〜!

母ちゃん

こら風太! 妹を困らせんじゃないの!

風太

ちぇ〜

通りすがりA

ははは

通りすがりB

ははは

母ちゃん

佐知〜、アンタも自分のやりたいようにすればいいんだからね?

母ちゃん

いっつもコマ遊びに付き合わされてねぇ

母ちゃん

嫌なら断りなさい?

佐知

うん

風太

なんだよ嫌だったのかよコマ

佐知

手加減してくれるなら付き合ってあげてもいいけど〜?

風太

じゃやりたいことって何だよ?

佐知

これから決めるの

風太

ふぅん……

母ちゃん

もちろんアンタもよ

母ちゃん

本当にやりたいこと、やりなさいね

風太

母ちゃんはないの? やりたいこと

母ちゃん

大人になるとね、そんな暇はないのよ

母ちゃん

いつも何かに追われて生きてる、みたいなね

風太

それって……

通りすがりA

ん!? 何だあれ?

風太

え?

村の外れから 鈍色の霧が漂ってきている

風太

……煙?……霧?

通りすがりB

誰だよ〜 畑焼くにはまだ時期が早ぇぞ?

通りすがりB

ちょっと見てくるわ

通りすがりA

あぁ頼まぁ

風太

(あの霧……なんか変な感じがする……)

通りすがりB

うわ……なんだこの霧、全然先が見えねぇ

通りすがりB

……うっ!?

バタッ!

風太

えっ!?

通りすがりA

お、おいどうした!?

風太

(あの霧に入った途端に……?)

風太

あ!待て!迂闊に近寄らない方が!

通りすがりB

う……うう……

通りすがりA

なんだ、立ち上がったじゃねぇか、驚かせやがっ……

通りすがりB

ウガーッ!

通りすがりA

う、うわぁ〜!?

ガシッ! グググ〜……!

通りすがりA

ど、どうしたんだコイツ……すごい力だ……

通りすがりA

や……お、おい、やめっ……!

バキッ!

母ちゃん

キャーッ!

佐知

キャーッ!

風太

な、なにかおかしい……逃げるぞ!

風太

(後から判ったのは)

風太

(あの霧に巻かれると死人のようになって霧の外の人間に襲いかかってくるようになること)

風太

(しかも)

風太

(大混乱に陥った村から必死で逃げている内に)

風太

(佐知や母ちゃんと、はぐれちまった)

風太

(でも絶対に見つけ出す! そして……)

神楽

そんなところにおったのか?

風太

神楽

神楽

降りてきんさい

サッ シュタッ!

神楽

ホレ、麓の村に残っとった食い物じゃ。

神楽

これで2日はもつじゃろ

風太

いつも助かる

神楽

構わん

神楽

あの霧から逃げるだけならまだしも

神楽

いつ襲ってくるかもしれん死人たちから一人で実を守るのは

神楽

巫女であるウチにはちと難しいからの

神楽

頼りにしておるぞ、用心棒

風太

だから用心棒ってやめない?
ただの村人だよ、俺

神楽

フフフ

でん爺

ただの村人にしちゃ大層な刀を佩いとるじゃないか?

風太

でん爺

でん爺

ふぅ……年寄りにこの山道は、ちと堪えるわい

風太

そんなデカい荷物背負ってこの山道登ってくるようなジジイが言っても、説得力ねぇなぁ

でん爺

茶化すんでない

でん爺は大きな箱を背負っている。

でん爺

せっかくもうすぐ出来上がるのに

でん爺

もう作るの辞めちゃおうかなぁ~?

風太

悪かったよ

風太

でもでん爺

風太

本当に出来上がれば、大丈夫なんだよな?

風太

ソレで

でん爺

当たり前じゃい

でん爺

まぁ仕上がりを楽しみにしとけ

神楽

そうじゃな、だが仕上がる前に何とかせねばな

でん爺

え?

神楽

そやつを

風太

でん爺!

でん爺

【振り返り】……え?

どこからか現れた死人がでん爺の背中の荷物に噛み付いている

死人

ガジガジ……

でん爺

のわ〜〜〜っ!?

風太

くっそ!

ダダッ!!

風太

離れやがれ!

シュキィィン!

スパァァァ!!!

死人

ガァァウウ!!!!

風太

なっ!? カスっただけ!?

風太

こいつ、飛び退いて避けやがった!?

死人

グルルル……

神楽

やはり……近頃出くわす死人は……

死人

【フットワークが軽い】ガウ、ガウ

神楽

……どうも知性が備わってきとる

死人

【飛び掛かってくる】ウガー!

風太

……だからどうした……

神楽

え?

風太

俺は負けねぇ〜っ!

ブレイクダンスのウインドミルのように回転しながら刀を振るう風太!

死人

【突っ込んでくる】ウガーーッッ!

ヒュンヒュン!

ギュギュギュン!

スパッ!ズバッ!ズババッ!

死人

ガーーッ……

死人

……【バタリ】

風太

ハァ……ハァ……

でん爺

お見事

でん爺

しかしいつ見ても不思議だのぉ

でん爺

お主のそのコマの様な動き

風太

あ〜……俺自身もそうなんだ

風太

何故か物心ついた時からできてさ……

神楽

もしやすると

神楽

なにがしかの不手際があったのかもしれんな

風太

不手際? 誰の?

神楽

さぁ? 神とか、かの

風太

巫女が神サマの不手際とか疑っていいのか?

神楽

【なぜか明後日の方を見上げて】どうだろのう?

風太

でん爺

とにかく日没が近い

でん爺

もう少し霧から距離をおいて寝床を確保じゃ

風太

……結局今日も逃げるだけ、か……

でん爺

結局一生逃げるだけかもしれんぞ

風太

そんなの我慢できねぇ

風太

あのクソ霧を出してる奴はゼッテー見つけて痛い目遭わせてやる

でん爺

そんな奴、本当におるかどうかも分からんのに……

神楽

フフフ、おるとよいなぁ

神楽

あんなものに追われ続けて生きるのも楽ではないからのぉ

風太

……

母ちゃん

大人になるとそんな暇はないの

母ちゃん

いっつも何かに追われてね

風太

……

風太

変わらないんだな、きっと……

神楽

ん?

風太

いや、なんでもない

風太

少し早く大人になっちまったってだけの話さ

でん爺

余計分からんわい

風太

……

風太

(この霧はどこから来たのか?)

風太

必ず突き止めて消し飛ばしてやる

風太

そんでゼッテー見つけ出す

風太

母ちゃん、佐知……

風太

待ってろよ

つづく……

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コメント

2

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コンテストふぁいとです!!🫶🏻🔥

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