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コメント
2件
めちゃこういう作品大好きなんですよ!!!!続きまってます!!
放課後。
私は一人、階段の踊り場にしゃがみこんでいた。
誰にも会いたくなくて、誰にも見られたくなくて。
カバンの中のスマホが震える。
画面に浮かんだ名前は、「緑」だった。
_『今どこ?ちょっと話したい』
通知を見た瞬間、胸がきゅっと締めつけられる。
返事を打とうとして、やめた。
最終的に送ったのは、たった一言。
_『ごめん、今日は無理』
送った後、電源を消した。
緑に何か言われるのが怖かった。
「最近、様子変だよ」とか「なにかあった?」とか、優しい声で聞かれるのが。
だって、そんなふうに心配される度に、期待してしまう自分がいるから。
そういう目で見てくれる可能性を、まだどこかで探している。
本当はもうわかっているのに。
緑の視線の先にいるのは、"私じゃない"ってこと。
桃 。
小さく呟くと、胸がまた傷んだ。
動き出したのは、きっとあの子が現れてからだ。
緑の気持ちも、私の心も。
静かに、でも確かに、変わっていってしまった。
変わらないでほしかった。
ずっと、隣で笑っていられると思ってた。
でもそれは、ただの甘えだったんだと思う。
その夜、緑からのメッセージはもう来なかった。
しばらくスマホの画面を見つめていたけれど、通知は何ひとつ増えなかった。
そうしてようやく私は気づく。
止まっていたのは、私の気持ちだけだったんだ。
緑の時間は、ちゃんと前に進んでいたんだって。