気分転換を兼ねて、護衛も連れずに夜道を散歩していた。
それは、汚い路地裏に落ちていた。
瞳の濁り、ハイテーション。その様子から、そいつは、ジャンキーだと一目で分かった。
そういや、手駒(てごま)減っちゃったな。
半グレと揉めた時に、手駒を人間爆弾として使用した影響で、人手不足になっていた事を思い出す。
便利な手駒が欲しかったんだよね。命令通り、死んでくれる、使い捨ての出来る手駒。
手駒にするのに、ジャンキーはうってつけ。なんたって、ヤクをキメ過ぎて、まともな思考力なんてない。万能感に支払いされ、死ぬ事に恐怖すらしない。ヤクの為なら、犯罪だって厭わない。これ程、最適な人材はいない。
我妻京也
上堂新一
我妻京也
上堂新一
我妻京也
上堂新一
これは驚きだ。会話が成立するなんて、思っても見なかった。
ラリっている割には、目の前の男は自我を保っている。
目の前の男に、少し興味が引かれる。
我妻京也
左手に握られた注射器を指しながら、聞いてみる。
上堂新一
我妻京也
ヤクをキメる目的は、未来への希望と生に対する渇望(かつぼう)。
我妻京也
我妻京也
上堂新一
喧嘩に勝つのは、何も腕っぷしの強さではない。そいつに勝てないと思わせれば勝ち。
イカれてる奴を相手するなら、そいつの上をいく程に、イカれてればいいだけ。
上堂新一
上堂新一
我妻京也
我妻京也
ポケットかは取り出した銃を、そいつの手の上に置く。
上堂新一
銃を渡すと即座に、何の躊躇いもなく、俺の眉間目掛けて発砲してきた。
銃の弾道は真っ直ぐ、避けるのは簡単。
顔を横に傾けるだけで、簡単に回避する。
我妻京也
人を殺す事は、朝食にパンを食べると同義(どうぎ)であるかのような気軽さで、引き金を引く。
人を殺す事も厭わない。
途端に、名も知らない、この男が欲しくなった。
上堂新一
目の前の男を手に入れるいい方法はないかと、考えを巡らせる。
男は甘言には、乗りそうにもない。
なら、次は
我妻京也
上堂新一
煙草を取り出し、吸いながら、煙草の先に火をつける。
そして、おもむろに、俺は男の手に、煙草の火を押し当てた。いわゆる根性焼き。
肉の焼ける匂いがする。
我妻京也
そいつの表情は変わらない。
上堂新一
反対に男は、挑発的ともとれる笑みを浮かべる。
我妻京也
上堂新一
遠くから、パトカーのサイレントの音が聞こえてくる。
銃声を聞きつけた住人が、サツを呼んだようだ。
我妻京也
我妻京也
それから俺は、路地裏であった男について、情報屋に調べさせた。
男の名は上堂新一、半グレ集団邪ツ躯(ジャック)のボスで、窃盗、殺人、傷害、恐喝、と色んな犯罪に手を染めており、そうして得た金のほとんどが、上堂の麻薬に消えている事。×××バイヤーからヤクを定期的に購入してる事。
得た情報を元に、男の攻略法を導いていく。
我妻京也
孤高(ここう)を好むくせに、人は孤独に耐えられない矛盾した生き物。
俺は先ず始めに、手下を使い、上堂の仲間、知り合い、知人、親族に至るまで殺すように命じた。
彼以外、彼に関わる全てを抹消した。
次に、彼が懇意にしているバイヤーを殺し、その他のバイヤー達には、上堂にヤクを売るなと圧を裏からかける。
上堂もあっさりと引き下がりはせず、バイヤーを殺し、ヤクを手に入れようとした。
勿論、そんな事は想定済みだから、バイヤー達にはヤクを持たせてなかった。
この計画の為だけに、麻薬の元締めの座を奪いとったからね。
頼る先もなく、枯渇していく資金。
手に入いらないヤク。
数時間もヤクを打てないとなれば、そろそろ、離脱症状が出てもおかしくないだろ。それに痛みすら感じない程のヤク漬けとなれば、その離脱症状は、想像を絶する程の苦痛に苛まれてる事だろ。
我妻京也
俺は上堂と出会った、路地裏に足を踏み入れた。
始めて出会った時と同じく、彼はゴミ袋の中に埋もれていた。
ただ、始めに出会った時とは、明らかな違いがある。
彼はヤクの離脱症状に苛まれ、髪を振り乱し、喉を引っ掻き、この世に対する呪詛(じゅそ)を吐き連ねている事。
上堂新一
我妻京也
上堂新一
自我崩壊(じがほうかい)は凄まじく、俺の声にすら反応を見せない。
我妻京也
上堂の前で、取り出した小袋を目の前で、ひらひらとふってみせる。
上堂新一
目の焦点が急に合う。
我妻京也
上堂が取れないように体を翻(ひるがえ)し、避ける。
我妻京也
我妻京也
我妻京也
我妻京也
上堂新一
我妻京也
上堂新一
我妻京也
我妻京也
我妻京也
上堂新一
今にも焼き切れそうな精神回路を繋ぎ止め、脳を回転させ、俺が求める答えに、上堂はたどり着い。
我妻京也
我妻京也
我妻京也
君の為に、こんだけ労力割いたんだから、貰えるモノは貰っとかないとね。
上堂はズボンを脱ぎ捨て、躊躇(ためら)いもなく、足を開いてみせる。
上堂新一
我妻京也
我妻京也
小袋を投げて上堂に寄越す。
上堂は小袋をあけると鼻から吸引し始める。
さぁ、君は俺にどんな愛をもたらせてくれるかな
逸(はや)る気持ちに促されるままに、俺は上堂の足を掴みあげた。
おわり
あとがき 誕生日過ぎてるけど、好きちゃんハピバ(о´∀`о) 一方的な愛の形にも、色んな形があるので、今回は逃げ道をなくして追い込んでみる方向にしてみた。 実は、麻酔のモルヒネと麻薬の○ロイ○は、同じモノだったりする。モルヒネの科学構造を少し変えたモノが、○ロイ○になる。この麻薬の怖いとこは、モルヒネよりも鎮痛、麻酔効果が4~8倍も強く、一度でも使用すれば、耐性がついてしまうこと。だから、日増しに量が必要になってくるし、段々と間隔も短くなっていく。 昔ニュースで、ジャンキーが病室を抜け出し、薬品棚を襲撃してた事があって、その時は、なんで病院から抜け出した方がヤク買えるのに、何故薬品棚狙うのか疑問だったけど、これを知ってから、そりゃあ、真っ先に薬品棚狙うわなと納得した。本当、昔の人はうまく言ったよね。まさに、薬も過ぎれば毒となるだよね。 昨日、変な夢みた。青山ニキがフルフェイスでスク水を着てて 『この水着のピッタリ感がいい』って、言うもんだから思わず 『変態仮面やんけ!青山ニキまさかの路線変更?南雲ニキ死んだからかな』って、謎の理論を展開してるとこで目が覚めた。意味分からん。どうせなら、華太ちゃんのスク水姿を見たかった( ´△`)
おまけ
上堂が死んだ。
物言わぬ骸(むくろ)となって帰ってきた。
我妻京也
我妻京也
我妻京也
我妻京也
我妻京也
我妻京也
どんなに声を掛けようとも、上堂は微動だにしない。
死んでるんだから当然といえば当然か。
我妻京也
我妻京也
まっ、口だけで、残念なんて思ってないんだけどね。ただの社交辞令(しゃこうじれい)だ。
我妻京也
それなのに、何かが俺の頬濡らしていく。
おわり
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