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6人兄弟

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6人兄弟

23 - 幸せの夢

♥

6,235

2022年08月02日

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前触れは静かに

 

そして着実に

 

もしも君に対する
SOSがあっても

 

君は気づけるかな

弟のお見舞いから帰ってきて

手を洗おうとキッチンに入る

𝑁.

...?

足でなにかを踏んだような感覚

かちゃん、という音と共に

足を持ち上げると

𝑁.

...なにこれ

なにかの破片のようなものが 落ちていた

𝑁.

...掃除したのかな...?

割れたものの後処理が出来るのは

次男くらいだろう

𝑁.

...あとで聞いてみよ〜

特に深く考えず

その欠片はゴミ箱に捨てた

𝑁.

ふぃ〜...

今日は大学の授業がない

というか

俺の選択した授業が今日はないのだ

𝑁.

...やるかぁああ

色々あって

進めていなかった仕事

タブレットの充電が 100%なのを確認して

専用のペンを持つ

𝑁.

...げっ、これ納期
明日までじゃん

少し息をついて

ペンを握り直す

大体の想像図を書き終わったら

今度はペンを置く

𝑁.

...今日中に
終わらせられるかな

納期に間に合わないかも、と

少し悶々としながら

キーボードの上で指を働かせる

𝑁.

...よし、ここまでくれば
もう少しだ...!

最後は試験的に再生する

再生してみると

あれもこれも改善点が見えてくる

𝑁.

...っと、ここは
#dro*じゃなくて...

...と

𝑁.

!?

目の前が真っ暗になる

𝑅.

...だーれだ

𝑁.

...莉犬くん

𝑅.

ぴいぃんぽおぉん!

𝑁.

...えへ

苦笑いするように

口角を上げる

目に当てられた彼の手を

そっと首まで移動させる

暖かくて

今は離したくない

𝑅.

まぁた、
休憩とってないでしょ

𝑁.

ばれた?w

𝑅.

俺が帰ってくるのも
気づかなかったじゃん?

𝑁.

てへぺろっ

𝑅.

可愛くしたら
許されると
思うなよ...っ!w

𝑁.

...うわ

長い集中が切れた直後に起きる

特有の目眩

視界が蝕まれていく

𝑅.

...はい、目閉じて

なにが起きてるか理解している彼が

また目を手で隠してくる

𝑁.

...ふわふわする...

𝑅.

...お茶持ってきたから

𝑅.

飲みな?

𝑁.

はぁい

𝑁.

もう多分大丈夫

𝑁.

くらくらするの治った

𝑅.

はいはい

少し呆れたような顔で

コップを渡してくる

一口飲んだだけで

口の中が相当 乾いていたことに気づく

𝑁.

お茶って美味しいなぁ...

𝑅.

水も飲んでなかったの!?

𝑁.

いや、はは...

𝑅.

前みたいに
倒れちゃうよ!?

𝑁.

なーんのことだろぉー...

過去に

集中しすぎて 5時間経っているのに気づかず

立ち上がった瞬間

貧血で倒れたことを

思い出さないようにそっぽを向く

𝑅.

...ったくもぉ...

𝑁.

面倒見のいい弟がいて
俺は幸せだなぁ

𝑅.

...ほんっと...

珍しくお説教を 食らわしてこないので

恐る恐る彼の顔を見る

𝑁.

...あら

𝑁.

...あらあらあら?

いちごみたいに赤くなった耳

𝑅.

いやっ...!

𝑅.

これは
こういうことではなく!

𝑁.

照れちゃってる
感じですかぁ

𝑅.

違う!

𝑅.

断じて違う!!

𝑁.

あれぇ

𝑅.

ほらもう下降りよ!

𝑅.

ご飯できてるから!!

𝑁.

あれ、
もうそんな時間なの?

𝑅.

もう7時過ぎです!!

𝑁.

俺の周りだけ時空
歪んでんのかな...

𝑅.

知るかっ!!

やっぱり耳まで赤くして

ちょっと怒ったように 部屋から出ていく彼

俺の前では

甘えたい小さな弟でいいのになぁ

𝑁.

なぁんてねぇ

ありがたくお茶まで 丁寧に淹れちゃって

𝑁.

いつの間に
こんな頼もしく
なっちゃったかなぁ...

ちょっとだけ

寂しい、なんてのは

言わないけどさ

𝑁.

ふぁー

背伸びをしながら

食卓につく

𝑅.

あれ、ころちゃんは?

𝑅.

後で食べる、ですって

𝐽.

育ち盛りに
ご飯食べないんは
育たんねぇ

𝑅.

おばはんかw

昨日も今日も

四男は俺から逃げている

別に気にしてないのになぁ

俺から謝りに行こうかな、とか

ちょこちょこ考えながら

箸を手に取る

𝑁.

いただきまーす

𝑅.

どーぞー

𝐽.

俺もう食べ終わった!

𝑅.

早食いって
体に良くないんですよ

𝐽.

ちゃうねん、
俺が食べ始めたの
一番早いねん!

𝑅.

はいはい、
今日はジェルが
皿洗い当番だからね

𝐽.

うぇーやだあ

𝐽.

るぅちゃん代わってぇ

𝑅.

やでぇす

𝐽.

ぴえん

ぶつぶつと呟きながら 台所に向かう彼を

少し笑いながら見送る

𝑅.

...俺もちょっと
やることあるから

𝑅.

先にご馳走様

𝑁.

はぁい

変なステップを踏みながら

キッチンへ向かう彼

𝑁.

ふぁー...

少し気まずいくらいの空気が停滞する

𝑅.

...ななにぃって

𝑁.

うん?

𝑅.

将来の夢とか
ありますか?

𝑅.

学校の作文の参考程度に
教えて欲しくて...

𝑁.

え〜...

𝑁.

なんかあったっけなぁ...

目を逸らして

わざとらしく お味噌汁をかき混ぜている弟の問い

ない訳じゃない

確かにあったんだ

ただ、そんなものは

とうの昔に置いてきていた

𝑁.

俺ね

𝑁.

映画監督に
なりたかったんだ

分かってる

俺の父さんは大企業の社長だった

父さんが亡くなってから

俺たちの叔父にあたる人が 社長の椅子を守ってくれている

だから一刻も早く大人になって

社長を継がなきゃいけないから

俺の夢は叶えられない

𝑁.

...昔の夢だけどねw

呆れ笑いのように

はにかんで

目線を泳がせる

𝑁.

...るぅちゃんは
あるの?

𝑁.

お医者さんとか

𝑅.

...なれますよ

𝑁.

ぇ?

小さく

はっきりとした言葉

𝑅.

叶えられます、
ななにぃなら

𝑅.

どんな夢も

頬杖をついて

口元を隠すようにして笑った弟が

少し遠い存在に見えた

𝑁.

...そう、かな

𝑁.

...ありがとねw

𝑅.

ご馳走様でした

満足したように

さっと立ち上がって 去ってしまった

𝑁.

...ぁ

弟の夢を聞くのを忘れていた

𝑁.

なににでも
なれそうだけどね

誰に向かってでもなく

壁の方へ

べっ、と舌を出してみた

食べ終わった状態の食器を持って

キッチンへ入る

𝐽.

あ、なーくん
食べ終わった?

𝑁.

うん!おいしかった〜

𝑁.

お皿洗い手伝おうか?

𝐽.

いーの!
俺がやるの!

𝑁.

…wwわかったw

なぜか少しドヤ顔してるし

お言葉に甘えて

お皿を流しに置く

莉犬くんが作ってくれた

ストレートティーを

コップに注ぐ

すっかり冷えてしまって

少し喉にしみる

美味しい、と素直に思う

𝑁.

…美味しいなぁ…

𝐽.

当たり前やん、
莉犬兄ちゃんが
淹れた紅茶やで?

𝑁.

そっか、
そりゃそうだよねw

まるで自分が淹れた紅茶を 自慢するように

少し胸を張った彼を見て

なんとなく声に出してみる

𝑁.

…こういう、
なんでもない幸せが

𝑁.

いつまでも
隣にあったらいいなぁ

𝐽.

…違うよ兄ちゃん、

𝐽.

あるんじゃなくて

𝐽.

つくるんだよ

さっきのドヤ顔はどこへ行ったのやら

なんでもないことのように

さらっと言ってのける

𝑁.

…ジェルくん、
モテるでしょ?

𝐽.

え、なに急に!w

𝐽.

全然やよww

𝑁.

え〜、気付いてないだけ
じゃな〜い?

𝐽.

あらやだ、
俺そんなに魅力的?

𝑁.

う、うん…?w

皿洗いを終わらせた彼が

こちらを向いて

にかっと笑った

その顔の虜になった人が

少なくないってこと

今はまだ黙っていよう

そういえば

なにか聞こうと思ってたこと なかったっけ

なんて

少し考え込みながら

自分の部屋のドアの前に立つ

ドアノブをまわしかけて

手をとめた

誰かに

背中の服を掴まれていたから

手の位置から

後ろに誰が立ってるかなんて

すぐに分かった

触れられた背中から

細かい振動が伝わってくる

きっとまだ、

迷っているんだろう

彼の言葉よりも先に

声をかける

𝑁.

…どうしたの…?

𝑡𝑜 𝑏𝑒 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑖𝑛𝑢𝑒𝑑...

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コメント

36

ユーザー

めっちゃ時差コメ失礼します💦 今日この作品を見つけて、一気見して、ほんとにすごいと思いました! 続き待ってます!

ユーザー

このお話ほんとに小説読んでるみたいな感覚で見られるので大好きです( Ꙭ )ྀི✨

ユーザー

初コメ失礼しますm(_ _)mまってまって私が見てきたテラーのお話で1番大好きかもしれない!最高でした!!いつでも待ってますんで続きできたら楽しみに待ってます!

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