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3XXX年

結翔

やっと...やっと出来た!

結翔

澪、待っててよ

結翔

僕、君を助けに行けるよ!

薄暗い研究室で 24歳の青年、高本結翔は

喜びに顔をほころばせた

結翔は、先輩から 代々引き継がれている研究

タイムトラベルを研究していた

全ては、 7年前に事故でこの世を去った

幼馴染みの澪を救うため

結翔

(好き、だったんだ...僕は)

結翔

(澪、君のことが......)

結翔

(ようやく、助けに行ける...)

結翔

(待ってて......)

機械の中に入り、目を閉じる

日付は7年前 場所は、事故のあった中央通りだ

澪――桜木 澪は7年前

絶対安全と言われていた筈の 浮遊式移動車

つまり2020年での 電気自動車のような物に

追突され、亡くなった

最先端の自動ブレーキと

最先端の人工知能が 搭載されていたのにも関わらず...

結翔

(だけど、事故なら防げる筈...)

結翔

(助けられる筈なんだ...)

遠退く意識の中で澪を想い 結翔は過去に飛んだ

7年前:中央通り

結翔

......

結翔

ん...?

目を開ければ、あの時の 忘れもしないあの道にいた

目の前を歩いているのは その当時の自分と澪

そして、そこに突っ込んでくる 浮遊式移動車

結翔

っ、!

結翔

(間に合ってくれ!)

結翔

危ないっ!

グッと澪の手を掴んで

歩道の隅に引っ張る

あっ...!?

結翔(7年前)

わっ、何!?

地面に倒れ込んだ澪を掠めて

浮遊式移動車は去っていく

結翔

危なかった...

あ...私、もしかして今......

結翔(7年前)

澪、大丈夫!?

う、うん...私は平気......

結翔

良かった...今、轢かれそうになって....

あ、ありがとうございますっ!

結翔(7年前)

ありがとうございます...

あの、名前とか...

結翔

いや...いいんだ

え?

不思議そうな顔の澪に背を向け 建物の影に隠れる

結翔

(これで、大丈夫な筈だ...)

機械を操作し、現代に戻るため もう一度目を閉じた

結翔

っは...!

目を開けると、いつもの研究室

結翔

やった...かな......

結翔

澪...

額に残る汗を無視し 連絡用機械で澪の番号を呼び出す

・ ・ ・

この番号は現在使われておりま...

結翔

(え...?)

結翔

(番号が変わって、るだけ...だよな)

背筋を這うような悪寒に襲われ

結翔は研究室を出て 友人の元に急いだ

結翔

なあ

え?

結翔

澪の...桜木澪の連絡先!

結翔

知らないかっ?

ちょ...結翔どうかしたのかよ

澪なら5年前に...

死んでるじゃないか

結翔

頬を汗が流れ落ち、思考が止まる

結翔

何言ってんだよ

結翔

澪は......

だから!

澪は...5年前に、あの中央通りで

浮遊式移動車に追突されて...

亡くなっただろ!?

結翔、お前も葬式に行ったじゃないか!

結翔

そんな...嘘だ......

結翔

(だって、澪は僕がさっき)

結翔

(助けた、筈なんだ...!)

おい、本当にどうかしたのか...?

結翔

っ...いや、なんでもない

結翔

悪かった....

結翔

(もう一回...もう一回助ければ)

結翔

(きっと......)

5年前:中央通り

結翔

(あいつの話なら...今日また)

結翔

(澪は......)

結翔

(それなら、僕が助ければ良いんだ)

少し機械の操作にも慣れてきた

これで、澪は生きている筈だ

結翔

(成功した...筈)

時を越える時の未だ慣れない感覚に

汗は止まらないが

澪を助けられたならそれで良かった

結翔

(連絡先...変わってる、かな)

あの無機質な音声を聞くのが怖い

取り出した連絡用機械をしまい

結翔は澪の友人に 声を掛けることにした

結翔

あのさ

え?

結翔

桜木澪さんの連絡先って、教えてもらえるかな

......なに、言ってるの...?

結翔

え......

澪は...4年前に

亡くなったじゃない

結翔

っ!!?

結翔

(なんで、また....!?)

結翔

(僕は確かに、助けた筈...!)

結翔

なに、言ってんだよ...?

結翔

澪は、ほら...

信じたかった

信じたくてしょうがないのに

声は震えてしまう

まるで

この結果を予想していたように

ねえ!

本当にどうかしたの!?

結翔

はぁっ、はっ....

息が苦しい

結翔

(なんで、なんでなんでなんで...!?)

結翔

(僕は助けた筈だっ...!)

...だい、じょうぶ......?

結翔

っえ?

結翔

あ...大丈夫、だよ

でも、凄い汗だよ...?

休んだ方が......

結翔

平気だから!

っ、

結翔

......ごめん

頭痛がする

だけど止まってなんていられない

困惑する声を背中に感じながら

研究室に駆け込んだ

【研究日記】

何度も何度も

澪を助けようとした

だけど、なぜなんだ....

何度も助けるのに

必ず澪は死んでしまう

遅くて2年後、早くて3日後に

誰かが必ず死ななければならない とでも言うのか

それが【運命】とでも言うのか

誰か一人が死ぬ事が どうしても避けられないと言うなら

いっそのこと

3XXX,05,25

【研究日記】

澪、頼むから生きてくれよ

もう僕は、引き返せない所まで 来てしまった

何回も、何回も罪を犯してしまった

もう僕の手は、血で染まってる

この汚れた、穢れた手で

澪に触れようなんて思わない

ただ、澪が生きていてくれるなら

それだけでいいんだ...

3XXX,05,26

【研究日記】

先週に飛んだ

澪を助けることが出来た

先週なら、もう誰も殺さずに済む

殺さずに、澪を守れる

もう大丈夫だ

澪はこれからも生きる、生きられる

だけど、どうして 僕が何人も殺してきたのに

澪は毎回死んでしまっていたのか

それだけが解らない

それも【運命】なら

僕はきっと【運命】に勝った

使いすぎか、 機械は故障してしまったが

もう使うことなんて無いのだから

それでいいと思った

澪は僕と同じ大学院にいる

また、言葉を交わせると思うと

嬉しくて堪らない

3XXX年,5,27

・ ・ ・

結翔くん、入っていい?

その声に、 研究日記を書く手を止める

澪を現在まで助け抜く事が出来た

だからこうして 言葉を交わす事が出来る

研究日記を閉じて

結翔

どうぞ

ごめん、途中だった?

結翔

ううん、僕も休憩しようとしたところだよ

結翔

もう18時過ぎちゃったし...

結翔

良かったら一緒にお茶でも...どう?

そうね、じゃあ一緒に

結翔

うん、待ってて

澪が生きている

それだけで、嬉しくて

結翔

あ、ごめん澪

どうしたの?

結翔

紅茶きらしてた...ちょっと貰ってくるよ

わかった

あ、でも...別のでもいいよ?

結翔

ううん

結翔

せっかく来てくれたんだし

結翔

澪が紅茶好きなんだから

ふふ、ありがとう

結翔

うん

結翔

...よし、出来た

結翔

はい、紅茶どうぞ

ありがと...うん、いい匂い

結翔

口に合うかはわからないけど...

......美味しい

結翔くんは器用だね

結翔

器用なんかじゃ...

結翔

(器用だったら)

結翔

(もっと早く助けられてた...)

......あのさ

間違ってたら、ごめんね

紅茶の入ったカップを手で包み

澪はじっと僕を見る

結翔

......どうかした?

一瞬、澪は黙って

そして決意したように話し出した

何回も私を助けてくれてたの、結翔くんでしょ...?

結翔

...!?

なんとなくだけど、憶えてるの

7年前からずっと

私を助けてくれたのは

結翔くんだった

結翔

......

結翔

そっ...か

結翔

憶えてたんだ......

...うん

タイムトラベル、研究してたんだよね

結翔

......そうだよ

ありがとう

結翔

...研究に私情なんて挟んで、って

結翔

思われたかと思った

...そんなこと言わないよ

だけど......

その、機械...そうでしょ?

結翔

あ...いや、これは......!

隠さないでよ...

ごめんね、せっかくの研究...

結翔

そんなの...

結翔

機械なら、また研究して造ればいいよ

結翔

(もう、僕が健康でいられる時代に)

結翔

(完成することは無理だけど...)

そう、かな...

なんか申し訳なくて......

結翔

(なんでそんな...)

結翔

(切なそうな表情......)

結翔

いいんだよ

結翔

僕は...これで

......結翔くんが決めたことなら

私は口を挟むわけにいかないわね

フッと緩まった表情

だけど

どこか陰が見えてしまうんだ

日が暮れかけている道を

2人並んで歩く

澪が生きて、隣にいる

澪を助けるために、 罪を犯してしまった僕なんかの隣に

嬉しいんだよ、それだけで

それだけで、いいんだ...

なんか今日は...ごめんなさい

結翔

どうして澪が謝るの...?

...なんとなく、かな

結翔

......

......

結翔

......あのさ

......あのね

結翔

あっ、ごめん

結翔

澪、いいよ先言って

えっと....

......

ううん、やっぱりいいの

結翔くんどうぞ

結翔

っ......

言おうとしていたのは

7年前の、僕の忘れ物

告白

結翔

あのさ、澪

...なあに?

結翔

僕、言いたい事があるんだ

......うん

結翔

僕は、ずっと

結翔

7年前から、ずっと...

結翔

澪の事が

―――ッッッ!

結翔

す――

結翔くんっ!!!

結翔

ガクン、と傾いた世界

僕自身が 倒れているのだと気が付くまで

少し時間がかかった

澪に引っ張られて

歩道に倒れていると気付くまで

結翔

っう...!

――ドンッ――

結翔

(なん、何が...)

結翔

(あれ....僕は今......)

混乱する頭を必死に整理し

鈍い音が聞こえた方を振り返った

結翔

みお...っ、澪!!!

澪は、倒れていた

横向きに停車している 浮遊式移動車の隣で

頭部から、鮮血を流して

結翔

澪っ!!!

慌てて駆け寄り

その身体を起こして抱き締める

結翔

(なんで、こんなっ...!)

結翔

嫌だよ...死ぬな...っ!

結翔

(何度も何度も、助けたから...!)

結翔

(だから...!)

......結翔、くん

結翔

澪!

うっすらと目を開いた澪は

点滅する浮遊式移動車のライトを 眩しそうにちらりと見た

っ、あのね...結翔くん...

日記...見たの、私....

結翔

っ、え...

ごめ、なさい...

結翔

なんであやま...

でも...でもね

結翔

誰か一人が、死ななければ...ならない

運命...なんでしょ......?

結翔

それはっ!

結翔

ただの僕の仮せ...

正しい、のよ...きっと

私は...7年前に

死ぬ筈...ったもの

澪の口の隙間から

赤いものが零れて

僕の腕に流れる

これで...い、のよ

結翔

...ちが......違うよ...!

僕の頬を、温かいものが伝う

それを見た澪は

困ったような顔で

手を伸ばし、僕の頬に触れた

結翔

っ、ああ......

結翔、くん...

泣かない、でよ....

結翔

(無理だよ...)

結翔

(無理なんだよ...そんなの....)

間違っ、も...

来な、で...ね......?

嗚咽を噛み殺すしか出来ない

ぼやけて曖昧になっていく視界で

いつの間にか 澪の頬に流れていた雫が

ライトの光を反射し、微かに光る

澪は

浮遊式移動車の 点滅するライトよりも

眩しく、優しい

そして

儚く、美しい表情を浮かべ

それから

そっと瞳を閉じた

この作品はいかがでしたか?

1,350

コメント

8

ユーザー

すごくリアルですね!!自分も未来へ行ったようで、ドキドキしました!! 研究日記、主人公の罪、澪の選択。スリルと感動のつまったお話ですね(* ´ ▽ ` *)

ユーザー

いやもうお話の内容好きすぎます...! 表現も素敵😍 めちゃめちゃ審査しますよ!?(?) 参加ありがとうございました🙌

ユーザー

違うんですよ(恒例の言い訳) #笑顔だから、皆ハッピーエンドにするのかなーと思って、だったらハッピーエンドじゃなくても笑顔が表せればいいのかな、とか思ったんですよ... 決してその、鬱作品を書こうとしたのでは無くてですね、ハッピーエンドじゃない笑顔をと思ったらこう......(長くなりそうなのでストップ)

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