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初めて、心の底から欲しいと思った。
俺を前にすると、蛇に睨まれた蛙のように、体を硬直させる。
常に視線をさ迷わせ、おどおどしている姿しかみたことがなかった。
極道は力こそ全て、弱ければ、淘汰(とうた)される。
だから、最初、華太の事は、数いる中の舎弟の一人でしかなかった。
カチコミの際、俺は怪我をおった。傷は浅く、医者にかかるほどでもなかったので、そのままにしておいた。
小峠華太
そんな折、極力、兄貴との接触を避ける、小峠の方から、俺に声をかけてきた。
和中蒼一郎
最初こそ、言い淀(よど)んでいたが、決心が着くと、俺に視線を合わし、口を開く。
小峠華太
小峠に言われて、手当てせず、怪我をほっておいた事を思い出す。
和中蒼一郎
最初から手当てするつもりだったのだろう。後ろ手に持っていた救急箱から、必要な消毒液などを取り出す。
小峠華太
服の上からでは、怪我の程度が分からなかった事もあり、傷の具合を見て、小峠は、ほっとしたのか、ふわりと微笑んだ。
和中蒼一郎
その様は、まるで、聖母を彷彿(ほうふつ)させるかのように、慈愛に満ちていた。
その顔を見た瞬間、俺の胸が高鳴りを告げる。
あの日、俺に向けられた表情が、どうしても忘れられず、気づけば、何時しか、小峠を目で追うようになっていた。
これが恋愛感情のそれからきている行動だと気づくには、そう時間はかからなかった。
小峠の観察を続けているうちに、ある事に気づく。
端から見ていると、よくみえる。
気づきたくないものまでも。
小峠華太
俺が小峠に思慕(しぼ)の念を向けるように、小峠は、南雲に思慕の念を抱いていた。
南雲梗平
南雲梗平
小峠華太
そして、南雲もまた小峠に懸想(けそう)している。
どちらかが関係の進展を望めば、二人の関係は兄貴と舎弟という枠を越えて、晴れて恋人になっただろう。
しかし、小峠の気持ちが俺に向いてなかったからといって、諦めようとは、微塵(みじん)も思わなかった。
組にとっては、悪い知らせだが、俺にとっては、吉報(きっぽう)が届く。
南雲が半グレ粛清中に、逮捕された、と。
恋慕(こいした)う南雲が、捕まった事で、華太は落ち込んでいた。
付け入るには、うってつけ。
俺達は極道だ。欲しい物があれば、力ずくでも奪う。
和中蒼一郎
小峠華太
家の掃除をさせる為に、舎弟を家に呼ぶ事がある。だから、この誘いも、その一環だと華太はとったようだ。
和中蒼一郎
華太の下顎を掴み、上に向かし、強引に唇を奪う。
言葉しなくとも意味は伝わる。
その証拠に、華太の澄んだ瞳が、絶望に染まった。
体を穿(うが)たれる度に、涙を溢し、体をひらかれる痛みからか、それとも望まぬ交渉故にか、華太は嗚咽(おえつ)を漏らす。
その姿に俺の中の嗜虐心(しぎゃくしん)が煽られ、欲望を満たす為に、律動する。
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
わざと名前を呼ばす。
今、お前を抱いているのは、南雲でも、他の誰でもない、和中蒼一郎であるという事を、華太に知らしめる為に。
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
俺の名を呼ぶ度に、華太の絶望が深くなっていく。
華太の中が絶望に満たされた時、お前が誰のものか、嫌でも自覚するだろう。
更なる絶望を与える為に、俺は華太の最奥を貫いた。
おわり
あとがき 前に言っていた昼ドラ並みに泥々のやつ。さわりの部分までやけどな。華太はどっちつかずはせんだろうけど、そのまま和ニキと結ばれる編と、南雲ニキに寝とり返される、焼け木杭に火がついた編が選択出来るように、構想してたんだけど、書くのが大変なんで諦めた(´ρ`)華太受けの、どろどろの話読みたい