Beyond this sea…

橘 美羽（たちばな みわ）

高校３年生

２年間付き合った恋人に、 今日振られてしまいました。

橘 優奈（たちばな ゆうな）

とーっても優しい、 私の自慢のお姉ちゃん。

美人で文武両道

おまけに２１歳で大手美容院を支える、 若手エリート美容師。

心配するお姉ちゃんを置いて、 リビングまで歩いた。

お姉ちゃんと、 "あいつ"に勘づかれないように、

できるだけ早歩きで。

リビングに着いて、 ご飯の置かれた席に座った。

それと同時に、 扉を開ける音が後ろで聞こえた。

お姉ちゃんかと思い、 振り返ると…

この人は、 橘 奏多（たちばな かなた）

お姉ちゃんの弟で、私の兄。

歳は１９歳

昔は仲が良かった私と兄だが、 ある時から…

私と顔を合わせても、 なにも喋ってくれなくなった。

私から話しかけても、 返答が返ってくることはない。

お兄ちゃんに毛布を掛けながら、 私はふとお姉ちゃんに聞いてみた。

ある時から生まれてしまった、 お兄ちゃんと私の溝の原因を。

洗い物をしながら、 お姉ちゃんはなにかを誤魔化すように、 そう答えた。

お姉ちゃんはそう言って笑うけど、 私の心のモヤは消えなかった。

お姉ちゃんには、 全てわかってるのかな。

私たち兄弟には、

親がいない。

私が８歳の時に、 両親は交通事故で亡くなった。

よくある話で、 それ以降は祖母の家で育てられた。

でも、 そんな祖母も５年前に息を引き取った。

そしてそのあと、 お姉ちゃんはひたすら働いた、

私とお兄ちゃんのために。

お姉ちゃんが切磋琢磨して働く日々で、 お姉ちゃんはスカウトされた。

お姉ちゃんの指先の器用さが、 とある美容師の目に止まったのだ。

美容師として働くお姉ちゃんは、 キラキラしていた。

存在や目、 全てが輝いていた。

そんなお姉ちゃんに、 無駄な心配をかけたくない。

大好きなお姉ちゃんに、 迷惑をかけたくない。

別れてください

こんなことで、 弱音を吐いたりなんてしない。