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張り込み?

1 - 張り込み? 第1話

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2019年06月15日

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我妻厚史

有本が脱獄した

突然の呼び出しを受けた久松と木本の刑事コンビが我妻署長から聞かされたのは、

麻薬密売及び殺人の罪で刑務所に服役していた凶悪犯・有本良彰の脱獄だった。

我妻厚史

君たちにやってもらいたいのは

我妻厚史

T通りにある民家の監視だ

我妻厚史

そこに有本が現れる可能性がある

久松忠男

久松忠男

張り込みですか

我妻厚史

そうだ

我妻厚史

そこは今、飯沼という男が暮らしてるんだが

我妻厚史

有本が逮捕される直前に交流のあった男だ

我妻厚史

有本には取引以外につるむ相手はいなかったから

我妻厚史

現れるとしたら飯沼の家だろう

木本収

で、有本がもし現れたら俺たちはどうすればいいんです?

我妻厚史

俺に報告しろ

我妻厚史

上層部は有本の脱獄でいきり立ってるからな

我妻厚史

行方知れずのままじゃ俺だって落ち着かん

我妻厚史

念のため釘を差しておく

我妻厚史

決して、自分たちの手で捕まえるんじゃないぞ

我妻厚史

特に久松

署長は怖い顔で久松を見た。

久松は署内でも命令無視による過剰捜査が問題視されている刑事だからだ。

我妻厚史

お前は特に正義感が強いからな

我妻厚史

独断で有本を捕まえようなんて絶対に思うんじゃないぞ

我妻厚史

木本にはお前の監視役に当たらせる

久松忠男

こいつでいいんですか?

我妻厚史

どういうことだ

久松忠男

いや…あまりにもひ弱そうな体してますから(笑)

木本収

あ?

我妻厚史

おいおい、喧嘩はやめてくれよ

我妻厚史

とにかく、木本は久松の監視

我妻厚史

それから暴走を食い止めることに徹底しろ

木本収

分かりました

我妻厚史

久松

我妻厚史

お前も無茶な行動だけは起こさないよう気を付けてくれ

久松忠男

イェッサー

久松はおどけた調子で敬礼した。

その姿を見た我妻の顔付きはやはり不安で一杯だった。

有本の仲間である飯沼謙の家はごく平凡な一軒家だった。

小さな道路のある商店街通りで、近年高齢化問題による経営困難も加速してか、

ほとんどゴーストタウンに近い静けさが漂っている場所に建っていた。

道路を隔てた飯沼の家の向かいにあるボロアパートの一室を、久松たちは借りた。

張り込みに使う機材をセットしていると、久松は露骨に溜め息を吐いた。

久松忠男

署長も俺のこと分かってねぇなぁ

木本収

なにが?

久松忠男

俺は「やるな」と言われたらやりたくなる性分なのさ

久松忠男

もし有本が現れたら飛び出すかもしれないなぁ

久松は木本の反応を伺うように楽し気にしゃべっていたが、

木本収

もし規則違反な動きをしたら俺があんたを押さえるまでさ

久松忠男

へぇ…

久松忠男

命令に忠実なんだな

木本収

従うだけさ

木本収

そういうあんたはーー

久松忠男

あんたはよせ

久松忠男

せめて苗字で読んでくれ

木本収

久松さんは正義感が強いって署長が言ってたけど

木本収

本当は違うんじゃないの?

木本収

単に自分の性分に逆らえないから上層部の命令とは反対のことをして

木本収

それが結果的に正義感溢れる男をイメージさせてるだけじゃないの?

久松忠男

言うねぇ(笑)

久松忠男

久松忠男

俺にだって正義感はある

久松忠男

有本のこと詳しく知ってるか?

木本収

いや

久松忠男

有本は根っからの悪党だ

久松忠男

麻薬密売、恋人殺しもやり

久松忠男

息子の更正を願った実の親までも平気で殺した野郎だ

久松忠男

俺はそんな人間ができないことを平気でするやつを

久松忠男

野放しにしたくないんだ

久松忠男

上の命令云々で動きを制御されて逃げられるのが怖いんだ

久松忠男

連中みたいなキャリアは現場で動かないからちょっとした制御が

久松忠男

犯人を逃がしてしまう結果に招き兼ねないことを理解してない

久松忠男

だから、俺は俺なりに命令無視をするんだ

久松の熱弁に納得した木本。

…だが、半分は話してるときの久松の迫力に圧されたとも言えた。

準備を整え、二人は張り込みの姿勢を取った。

この日は、飯沼が出歩く姿が確認されただけで、有本は現れなかった。

深夜になると、交代の刑事に後を任せて一旦久松たちは引き揚げた。

翌日の昼。

久松が食料の買い出しから戻ると、木本が双眼鏡を使って窓の外を眺めていた。

久松忠男

有本が現れたのか?!

慌てて木本から双眼鏡を取り上げ、窓の外を眺めた久松だが…。

木本が見ていたのは飯沼の家ではなく、隣の家の前にいる女性だった。

恐らく大学生だろう彼女は、携帯電話を片手に家の前をうろうろしている。

久松忠男

この野郎

久松忠男

張り込みってのはストーキングが目的じゃないんだぞ

久松忠男

女にうつつを抜かすようじゃーー

木本収

彼女、迷ってんだよ

久松忠男

は?

木本収

きっと彼氏に電話しようと思って表に出てるんだけど

木本収

中々決心が付かないんだ

久松忠男

どうでもいいだろ

久松忠男

それより有本は?

木本収

いや、まだ現れてない

久松忠男

久松忠男

というかお前

久松忠男

昨日も懸命に向こうを見てると思ったら

久松忠男

隣のあの家の子を見てたのか?

木本収

だって可哀想じゃないの

木本収

彼女、男と付き合いたいけど両親が許さないからか

木本収

昨日もああやってわざわざ外に出て携帯片手にうろうろしてる

木本収

俺も昔恋愛で苦労した経験があるから放っておくのが…

久松忠男

アホ!

久松忠男

お前は刑事だろ、恋愛カウンセラーじゃねぇんだ

久松忠男

そんなことより仕事にーー

木本収

あっ!

木本収

携帯を耳に当てた

叱りつける久松の手から今度は木本が双眼鏡を取り上げた。

久松も(無意識に)釣られて見たが、確かに女子大学生(と思う)は携帯を耳に当て、

落ち着かない素振りでその場を行ったり来たりしていた。

久松忠男

(これって張り込みだよな…?)

ふと、久松は今の自分たちがやっているのが張り込みなのか?と疑問を抱いた。

2019.06.15 作

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