テラーノベル
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赤 。
翌日の朝、またも赤が俺に耳打ちしてきた。
やっぱり見られてたらしい。
人の噂って、どうしてこんなに早いんだろう。
赤 。
赤 。
緑 。
赤 。
赤 。
クラスの空気は、相変わらず"橙=近寄るな"で固まっていた。
でも俺は、あの猫カフェでの彼女を知ってしまっている。
甘いものを嬉しそうに食べて、猫に頬を擦り寄せて、少しだけ照れて笑う彼女を。
緑 。
赤 。
思わず漏れた独り言に、赤が首を傾げる。
俺は慌てて誤魔化すように机の引き出しを漁った。
授業中、ふと横目で彼女を見る。
橙は、今日も無表情で窓の外を見ていた。
教科書は開いているけど、視線はそこにはない。
先生が質問しても、「知らね」と一言。
それだけで、教室が少し凍る。
それでも俺は思う。
あの子は、あんなふうにしか自分を守れないだけなんだって。
本当は、甘いものが好きで、猫に癒されて、少し不器用で_
気づけば、どんどん惹かれてた。
放課後、彼女はまた一人で帰っていく。
俺は迷った末、後を追うように歩き出した。
猫カフェの角を曲がったところで、ふいに彼女が止まった。
橙 。
緑 。
橙 。
橙はジッと俺を見たあと、小さく肩をすくめた。
橙 。
橙 。
緑 。
橙 。
その言い方が、やけに可愛くて、思わず笑ってしまった。
橙 。
緑 。
橙 。
そう言いながらも、橙の耳が少し赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。
こんな彼女を、俺だけが知っている_
そう思うたびに、胸の奥がくすぐったくなる。
この気持ちは、たぶんもう止められない。
コメント
4件
題名とかセンスありますね! 続きの物語待ってまーす!