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暗闇

6 - VI穢れこそが光の本質であるということ

♥

6

2025年01月11日

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少年

もし、もう一度光の中に出たいと言ったらどうする

少女

驚くわ

少年

着いてきてくれる?

少女

着いていくわ

少年

じゃあもう少し頑張らなきゃならない

少年

ここから出られるように

少女

そんなに、光が気に入ったの?

少年

光が気に入ったのもあるけれど

少年

光を持った人間をここに閉じ込めておくことはできない

少年

責任が伴う

少女

わたしを追い出したいということ

少年

追い出すとは人聞きが悪い

少年

こんなくだらない場所は君には似合わない

少女

くだらないって

少女

わたし、結構ここも気に入ってるのよ

少年

気に入っていい場所じゃない

少年

他人の荒んだ心の中なんて

少女

荒んでなんていないわ

少年

いまさら綺麗事はいらない

少年

正直に言えばいい

少年

人の心の中は、もっと温かくて明るい場所だ

少年

君は今、人生を相当無駄にしている

少年

こんな場所で、俺は君を守れる気がしない

少女

守られなくたっていいわ

少年

いま、何も起こっていないだけだ

少年

この闇の中では暴風が吹き荒れたり怪物が現れたりする

少年

そもそも闇自体、君のような光が残っている人間には毒だ

少年

だから、君にはここを出てほしい

少年

そう考えたんだ

少年

それだけなら君を追い出せば済むかもしれないが

少年

君から離れたくないんだ

少女

離れたく、ない

少年

そう、離れたくないんだ

自分は、どうだろう? わたしは、彼から離れたって構わない

"少年"からわたしへの思いは、 思ったよりも強いのかもしれない

少女

改めて、脱出に乗り出すってことね

"少年"がここを出ようと 考え始めていたことが嬉しかった

"少年"にとってわたしは、守るべき存在で

光をくれる都合の良い存在ではないらしい

馬鹿馬鹿しくて自分の立場を弁えないようなぶっ飛んだ考え方だ

少女

(はぁ……)

少女

(グズグズしているのもあれだわ)

そろそろ、脱出に乗り出してもいいだろう

少年は、わたしに初めて顔を見せた

やはり、見覚えのある顔だ

大袈裟じゃなく、スマホの画面よりも 見た回数が多いかもしれない

光が、彼の鼻筋に深い影を落としている

光のあるところには影ができるが、

光のないところには深い闇が立ち込める

光はあるに越したことはない

少女

あなたがいることによってわたしの心は随分掻き乱されているけれども

少女

あなたがいることに越したことはないとわたしも思っていたところよ

わたしにとって、彼は闇でなく光だ

これは、間違いない

深い影が、わたしの左手の腹を覆っている

少女

(守られる身分じゃないわ)

無で形作られているはずの闇が 意識を持ったように蠢き始めた

身体中で、虫が這っているような感覚だ

少年

この空間そのものが
意思を持っている

少女

わたしも、そう感じるわ

どう抗っても人間の体には、遺伝子レベルで闇への恐怖心が刻み込まれている

闇を好むということは異常な状態だ

光をひとたび求めれば 闇を恐れるようになるのが世の摂理

少年

ここに永遠に居続ける方が怖い

少女

自分に言い聞かせているようね

少年

相変わらず出鼻を挫くようなことを言うな、君は

少女

いつか言ったでしょう?

少女

闇の中にいる人間が正常なわけがないと。

少女

闇の中にいる理由がなんであれ、みんなどこかしら歪んではいるの

少女

わたしも例外ではないわ

少年

これ以上歪みたくはないだろう?

少女

歪んでもいいわ

少女

歪もうが壊れようが、未来を手にするのよ

少女

どれだけ心が綺麗でも、未来も生きている自覚も希望も人を愛することも

少女

何も知らないならそんなものは、生きていないのとまるで同じだわ

少年

君は、たまにいいことを言う

少女

たまには余計ね

少女

ひとまず光の元に向かってみるわよ

少年

君は、勇敢で素敵だ

少女

勇敢じゃなきゃ、こんなのの世話できないわ

少年

失礼だな

少女

あなたの機嫌を伺うのも気だるいもの

少女

光の中に出ることは穢れを受容することよ

少女

覚悟はできてるのね?

少年

案内役みたいなことを言う

少年

覚悟があろうとなかろうと
いまさら逃げたりはしない

少年

わかっているだろう?

少年

俺が優柔不断なくせに頑固な、矛盾だらけな奴だってこと

少女

矛盾はしてないと思うわ

少女

優柔不断ってことは、よく物事を考えてるってこと

少女

よく吟味した物事を疑ってたってどうもならないでしょう?

少女

わたしは、あなたのそういうところ嫌いじゃないわ

少女

少女

さあ、飛び込んでみましょう

少女

光の中に

闇でもなければ"少年"でもないものを見るのは久しぶりだった

情報量と眩しさに頭がおかしくなりそうだった

少年

頭が痛い

少年

10年ぶりの外

少女

あんまり、
明るい世界は好きじゃないわ

少年

それ、君が言うかい?

少女

仕方がないでしょう

少女

嫌いなの、光なんて大っ嫌い

少女

でも、あなたのためだから

少年

結局、話していることは最初と大差ないじゃないか

少女

けれど、覚悟は変わったわ

少年

戦うんだな?光と。世界と。

少女

戦うわ、光と、世界と。

景色が鮮明になってきた

"ノイズ"と似たような雰囲気

少女

出るわよ

少年

進もう

少女

二人は進み始めた

 

 

 

___

お二人さん

___

どこへゆく

視界が暗闇に閉ざされた

わたしは、眠り込むように自らの体重を"少年"の肩に委ねた

それから先の記憶はない

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