誉が目を覚まして数日後。
真紘とその母はもう一度京都の病院へやってきていた。
母
誉くん。本当に大丈夫なの?
美園 誉
はい!
美園 誉
起き上がれるようにもなったし、元気です!
母
本当にごめんなさい…
母
真紘、ホントに何も出来なくて…
母
本当に私の子かしら
母
ねえ、どう思う?
天城 真紘
(病人相手に話す話じゃないでしょ)
美園 誉
…いや、2人ともメガネだし
天城 真紘
(嫌味にしか聞こえない)
母
うふふ。誉くんってば面白い
美園 誉
あざーす
母
今日ご両親は来てないの?
美園 誉
仕事で忙しくて……
母
そう。もう一度謝りたかったんだけど…
母
あ、りんご剥く?
美園 誉
いえいえ!気にしないでください
天城 真紘
(誉の前だと上機嫌になる…よかった)
母
真紘。ちゃんと謝ったの?
天城 真紘
えっ、あ、うん
母
ほんっとに責任感ないわよね
母
もし誉くんがもっと酷い怪我を負ってたらどうしたつもり?
母
あなたのせいで誉くんは傷ついたのよ
母
しかも、私の名誉までね
天城 真紘
……
母
あなたってホント、人を汚すために生まれてきたみたい
母
取り柄もなくて恥ずかしくないのかしら
母
誉くんとは大違いね
母
何のために生きてるの?
美園 誉
……
美園 誉
俺のためっす
天城 真紘
え?
母
……、え?
美園 誉
なんつーか、さっきの話聞いててイライラしてます
美園 誉
すみません。これから大人相手に威張りますね
天城 真紘
(な、なんだ急に…)
美園 誉
真紘の人生汚してんのはお前だろ
誉は母のことを睨んだ。
母
っ!?!?
母
わ、私に言ってるの!?
美園 誉
お前以外誰がいんだよ
美園 誉
あー、あと俺も汚してるけど…
美園 誉
とりあえず、真紘はお前の人形じゃない
美園 誉
真紘は不器用でバカなだけ
美園 誉
お前の理想押し付けんな
美園 誉
真紘が出来るわけねーんだから
天城 真紘
……
天城 真紘
(後半ディスられてる気がするけど…誉、僕を庇って…)
母
そんな事してない!!!
美園 誉
すぐに怒鳴んな
美園 誉
鼓膜ちぎれる
母
ほ、誉くん……急にどうしたの
母
事故で頭打って__
美園 誉
とーにかく
美園 誉
真紘は俺のもんなんで、これから真紘の全ては俺が決めますね
天城 真紘
は…?
母
……
母
な、何を言ってるの?
美園 誉
だって真紘、俺の事の方が好きだし
母
なんで?
母
真紘。私は真紘に良い大人になってほしかっただけなの
天城 真紘
……
天城 真紘
ごめん母さん
天城 真紘
俺と母さんの「良い大人」の価値観は違うみたい
母
そんな……
天城 真紘
俺、誉より母さんの方が好きだよ
美園 誉
え
母
真紘……
天城 真紘
最近はちょっと嫌いだけど、…実の母親だし__
天城 真紘
俺は母さんが望む「俺」になれるように頑張るから
天城 真紘
今の俺を認めて欲しい
母
…
天城 真紘
否定されるのは傷つく
母
ごめんなさい…ッ
母
私…!知らぬ間に……!
美園 誉
え何この雰囲気。俺が想像してたのと違う
天城 真紘
大丈夫だよ母さん
天城 真紘
俺こそごめんね
母
うっ…
母
ごめんなさい……
母
頭、冷やしてくる…
天城 真紘
うん
母は病室から出ていった。
美園 誉
ちょ!なに和解してんの
天城 真紘
ありがとう誉。和解するキッカケをくれて
美園 誉
全然あげたつもりない
美園 誉
「母さんにはついていけないっ!俺、誉くんと住む!」ってなる予定だったのに
天城 真紘
脳みそチンパンジーかよ
美園 誉
あ?お前言うようになったな?
美園 誉
つーかさ、
美園 誉
これからも母さんが望む「俺」になれるように頑張る…だっけ?
美園 誉
結局、お母さんの人形にはなったままだけど?
天城 真紘
もう人形じゃない
天城 真紘
これは俺の意思でもあるから
美園 誉
変なやつ
天城 真紘
……さっき
天城 真紘
誉が母さんに…ズバッと俺が思ってること言ってくれて嬉しかった
天城 真紘
ありがとう
真紘は誉に向かって微笑んだ。
美園 誉
まじ、
美園 誉
不意打ち……
天城 真紘
なにが
美園 誉
お前の笑顔に弱いの、俺
美園 誉
抱きしめていい?
天城 真紘
喧嘩する?
美園 誉
病人相手によくそんなこと言えるな
天城 真紘
そういえば、こっちに転院するのはいつなの?
美園 誉
来週!
天城 真紘
その日から毎日病院通いかー
美園 誉
よろしくー
天城 真紘
まだまだ入院する予定でしょ?
美園 誉
おう。リハビリとか色々あるし
天城 真紘
……
天城 真紘
早く退院してよね
天城 真紘
毎日病院に通うくらいで、俺全然償えた感じしてないし
美園 誉
はいはい
美園 誉
じゃあ俺が退院してから色々してもらおっかな
天城 真紘
うん!
天城 真紘
あ、最後に言いたいことあるんだった
美園 誉
なになに
真紘は誉の手を取った。
美園 誉
???
天城 真紘
友達になろう
美園 誉
な、
美園 誉
なんだよ!急に!
天城 真紘
え、ダメ?
美園 誉
いや、ダメじゃないけど……
美園 誉
お前はいいのかよ
美園 誉
俺の事……嫌いって言ってたじゃん
天城 真紘
最近は好きだよ
誉の顔がカッと赤くなった。
美園 誉
お前っ、好きとか軽々しく言うもんじゃねーぞ
美園 誉
女はその一言で勘違いするんだから
天城 真紘
少なくとも誉は女の子じゃないね
美園 誉
う、うっせえ
美園 誉
じゃ、これからは改めてよろしくな
天城 真紘
うん!ペットとか言っていじめないでよ
美園 誉
いじめねーよ
天城 真紘
ならいいや!
天城 真紘
(誉とは昔の関係に戻れないと思ってた)
天城 真紘
(だけどこうやって戻れることが出来て__)
じわりと真紘の目に涙が浮かんだ。
美園 誉
え?!
天城 真紘
うっ、…
天城 真紘
もう遠くに行かないでよね…
美園 誉
行かねーわ
美園 誉
お前が呼んだらすぐに駆けつける
そう言う誉の顔は優しくて、どこか心強かった。
作者
次回完結!
作者
寂しいですね、😭