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雨の音が大きくなる

何も考えられなくなる

これは恐怖なのか はたまた別のモノなのか

今のわたしには全くわからなかった

そんなわたしを突き動かしたのは

鈴…?

梅宮

鈴…っ

君たちだった

紫宮鈴蘭 過去編1

おい

怪我すんなって言っただろ

鈴蘭

はぁ?なんでよ

なにがなんでだよ

鈴蘭

なんで登馬にそんなこと言われなくちゃいけないの

俺が言わないと聞かないだろうが

鈴蘭

登馬が言ったって聞かないよ

鈴蘭

というか、別にこっちが悪いわけじゃないんだからいいじゃん

鈴蘭

そもそも向こうが喧嘩ふっかけてきたんだよ?

鈴蘭

買わなくてどうすんの

だから買うなよ

鈴蘭

いや

…はぁ

その時喧嘩した本当の理由は 登馬の悪口を言われたことだった

だけどそう言ったら登馬は 「気にするな」って言うし

言ってやる気は全くなかった

とにかく帰るぞ

鈴蘭

えぇ〜もう?

お前これから出かけんだろ

鈴蘭

あっ

鈴蘭

そうだった!!走ろ!

なんで俺もなんだよ!

そんなことを言う登馬の腕を掴んで わたしは帰り道を走った

鈴蘭

ただいま〜

お母さん

あ、鈴おかえり!

お母さん

って、また怪我してるじゃない!

お母さん

喧嘩してきたの?

鈴蘭

…うん

お母さん

なんで?

鈴蘭

あいつらが登馬の悪口言ったから

お母さん

そっか〜

お母さんはそう言いながら 手当てをしてくれた

お母さん

あのね、鈴

鈴蘭

なに?

お母さん

人の悪口を言う奴と喧嘩するのはいいことだよ

お母さん

だけどね

お母さん

鈴が怪我しちゃったら、登馬くんも梅宮くんも悲しむでしょ?

お母さん

それは私も、お父さんも同じなんだよ

お母さん

だからそんな奴は無視しちゃえばいいの

お母さん

無視しちゃえば、向こうもつまんなくなって言わなくなる

お母さん

ね?

鈴蘭

…うん、わかった

お母さん

本当!?やった〜!

鈴蘭

嬉しがりすぎだよお母さん

お母さん

だって嬉しいもん

お父さん

嬉しくなるのもいいことだけど

お父さん

あまりはしゃぎすぎるのはダメだよ

お母さん

は〜い

鈴蘭

ねぇ早く行こうよ〜

お父さん

ああ、そうだね

お父さん

それじゃ行くぞ〜!

これからみんなで遊園地に行く

それが楽しみで

車の中ではずっと話をしてた

鈴蘭

遊園地楽しみ〜!

お母さん

そうだね!

お父さん

何乗ろうか?

鈴蘭

わたし、ジェットコースター乗ってみたい!

お母さん

おっ!いいね〜

お父さん

ぼ、僕はいいかな…

お母さん

なんでよ〜みんなで乗ったら怖くないって!

お母さん

ね!鈴

鈴蘭

ね〜!

お父さん

わかったよ、乗ろう

鈴蘭

やった〜!

何に乗るか

何をするか

そんなことを話して 目的地に着くのを楽しみにした

していたのに

交差点を渡ろうとした時 横から車がぶつかってきた

とても衝撃が強くて 体に少し重みがあった

鈴蘭

お母、さん…?

そう言ってもお母さんは返事しなかった

お母さんだけじゃない

お父さんも何も言わなかった

鈴蘭

おと、さん…

鈴蘭

お母、さん…っ

鈴蘭

いや……なに、これ

わたしの周りには 液体が広がっていた

それがお母さんのものなのか お父さんのものなのか わからなかった

ただただ絶望だけで

わたしの意識はそこで途切れた

次に目を覚ました時には 病院にいた

周りにはお母さんのお姉ちゃんがいた

そのほかにも何人も親戚がいて

そして2人もいた

叔母さん

鈴蘭ちゃん、落ち着いて聞いてね

叔母さんがそう言ってきた

叔母さん

鈴蘭ちゃんのお母さんとお父さんは───

鈴蘭

……え…?

その日 家族は崩壊した

その後のことは曖昧になっている

だけど点滴を無理やり引き抜いて 外に出てきたのは覚えてる

忘れてるってことは やってしまったんだろう

罪のない人を初めて 私はこの手で殴った

それはこの手に付いてる血が 物語っている

鈴…?

梅宮

鈴…っ

鈴蘭

……なに

梅宮

大丈────

鈴蘭

…わたし、きっと生きちゃいけないんだ

は…っ?

鈴蘭

こんなんじゃ、誰かに愛されるわけない

鈴蘭

人殴るなんて、叔母さん達嫌がるよ

鈴蘭

早くお母さんとお父さんに会いたい

鈴蘭

2人に会って、また抱きしめられたい

梅宮

おい…っ!

腕を掴まれた

けれどそれを振り解く気力もなく ただ見つめた

鈴蘭

梅宮

なんで、なんでそんなこと言うんだよ

梅宮

お前は生きていいんだ

鈴蘭

……そんなわけ、ないじゃん

鈴蘭

だってわたしは、2人を殺した

鈴蘭

わたし…人殺しなんだよ

関係ない

少なくとも俺はそう思う

鈴蘭

関係ないって何

鈴の両親が亡くなったことと鈴がその車に乗ってたことだ

鈴蘭

なんで?

鈴蘭

2人は死んだんだよ

鈴蘭

なのにわたしはこうやって今ここにいる

鈴蘭

そんなのおかしいじゃん

鈴蘭

2人はもっと生きたかったはずなの

鈴蘭

2人はもっと望まれてたはず

鈴蘭

…わたしが生きたって、迷惑かけるだけなんだ

だからどこか行こうとするのか?

俺の知ってるお前は、そんなやつじゃない

いつもいつも喧嘩ばっかりで

でも俺達を相手にすることはない

馬鹿みたいに人のことばかりで

馬鹿みたいに優しい

それが俺の思うお前だ

その言葉にわたしは心底驚いた

でもすぐに納得する

登馬はこういう人間だ

人のことをよく見ていて 的確な言葉をくれる

鈴蘭

そういうところは わたしに合わない

鈴蘭

それ、嘘?

は?

鈴蘭

別に思ってもないこと言わなくていいよ

鈴蘭

暴力が優しさだなんて、思っちゃいけない

梅宮

人を守るためのものなら優しさになるよ

鈴蘭

ならない

鈴蘭

誰かを守るために誰かを傷つけるなら

鈴蘭

わたしはもう、誰も守らない

鈴蘭

そもそも守られる側の人間が守る側になれるわけない

鈴蘭

…わたしは君たちみたいにはなれない

そう わたしは君にはなれない

君はいつも誰かを照らす

君はいつも誰かを守る

君はいつもわたしを許す

君はいつも人を気遣う

そんな君たちとわたしじゃ 天と地ほどの差がある

関係ねぇよ

鈴蘭

っ…!

お前はお前だ

俺はお前以外見ないし、見るつもりもない

梅宮

柊の言う通りだ

梅宮

万が一、鈴が人殺しだったとしよう

梅宮

だけどそんなことで俺たちの関係は変わらない

梅宮

ずっと親友だろ?

君は笑顔で拳を前に突き出してくる

それに倣って君も突き出す

2人ともわたしを見ていた

鈴蘭

…っ

何故だかわからないけれど 涙が溢れて止まらなかった

何も言えず ただひたすらに涙を流した

梅宮

ちょっ…!?

はっ!?何で泣くんだよ…!!

焦った様子で 思わず拳が下がりそうになっていた

その手をわたしは掴む

…!

梅宮

鈴…?

さっきの位置に拳を上げさせる

そこにわたしの拳をぶつけた

鈴蘭

絶対…約束だからね

泣いているせいで震える声で 私は君たちにそう言った

鈴蘭

私がいなくなっても

鈴蘭

私が誰かを傷つけても

鈴蘭

2人だけは、ずっと私の味方でいて

…わかってるよ

梅宮

約束な!!

『わたし』が『私』になった瞬間だった

その声に届くまで

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