“女みたいな男がいる”
とは噂に聞いてて
どんなもんか見てみたい好奇心と
あまり好奇の目で見てやるなよという偽善心と
そのせめぎあいの中で
手芸部のドアを開けた
彼はそこにいた
西都
お、びっくりした
西都
アイス食べる?
東吾
……
めちゃくちゃサボっていた
東吾
何やってんすか
西都
おやつタイム
東吾
先生に見つかったら怒られますよ
西都
先生は来ないよ
西都
そう、手芸部ならね
東吾
それは最高っすね
西都
でしょー
東吾
でも他の部員は?
西都
部長の僕以外は
西都
みんな幽霊部員だよ
西都
君も知ってる通り、ここは
西都
部活に入りたくない人たちの逃げ場所だからね
西都
こんなことなら帰宅部許せばいいのに
西都
うちの学校は堅いからなぁ
西都
いや、そんなこともないか
西都
僕の長めの髪は許してくれてるしね
(髪をなびかせる)
東吾
そうっすか
制服は別にスカートではないんだな
東吾
でも、俺は
東吾
結構やる気で来たんですけど
西都
あっそうなの?
東吾
はい、手芸は未経験ですけど
東吾
入部するからには学ぼうかなと
(机に手芸道具を並べる)
西都
うわーすごい
東吾
母から借りてきました
東吾
でもやり方が分からないんで
東吾
先輩、分かります?
西都
ん〜
西都
僕も全然分かんない!
東吾
……そっすか
駄目だこりゃ
西都
まぁまぁ、最初から飛ばしてもね
西都
じゃあ今日は歓迎会ってことで
西都
はい、アイス!
東吾
……はい、ありがとうございます
アイスは普通に嬉しいけど
西都
あと、敬語じゃなくていいよ
東吾
え?いや先輩ですし
西都
あーもしかして
西都
ザ・上下関係みたいな運動部にいたりした?
東吾
はい、まぁサッカー部でした
東吾
上下関係は厳しい方だったかと
西都
やっぱり
西都
ここではそういうのいいから
西都
だって僕と君しかいないもん
西都
君が幽霊にさえならなければね笑
西都
よろしくね、東吾くん
東吾
よろしくっす
東吾
って、なんで名前知って?
西都
名札名札!
東吾
あぁ
西都
東って、偶然だね
西都
僕は西だよ
西都
西の都って書いて西都(せいと)
西都
でもあんま気に入ってないから
西都
糸って呼んで
東吾
それは略し過ぎでは
西都
別に良いじゃん
西都
手芸部部長・糸
西都
可愛くない?
東吾
……
返事に困る
西都
そうだ、東吾くんのことも
西都
うごくんって呼ぼうか?
東吾
いや、それはちょっと……
西都
あはは、困ってる困ってる笑
西都
ごめん、揶揄うのは僕の悪い癖だね
西都
だから部員も来なくなっちゃったんだろうけど
西都
久しぶりに部員が来てくれて、嬉しくて
西都
ほらアイス、溶けないうちに食べな
東吾
あ、はい
西都
あと明日までに
西都
敬語直してこようか
西都
これが僕が部長として出す
西都
最初で最後の命令ね笑
東吾
あ……はい
やっぱり変わった人だった
でも悪い人ではなさそうだから
明日も来てみようと思った
女みたいなことについては
まだ聞けないし
別に聞かなくていい気もしているが
どうだろうか
つづく






