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期限付きの恋心 part2
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一年前、僕はそう医者に告げられた。 急にそんなこと言われても実感が湧かなかった。 まるでドラマのワンシーンを見ているような感覚で直後は悲しいという感情もない
でも、周りの音は聞こえなくて心臓の規則正しく動く音が耳に響く。 こんなに元気に動いているのに心臓に損傷があるなんて…
母
母が震えた声で尋ねる。 先生は右手で細かくマウスを動かす手を止め難しそうな顔を浮かべる。 その時に見た母さんの絶望した顔は今でもはっきりと覚えている
それだけでも理解が追い付かないのに先生はまた意味の分からないことを言い出す 『余命は一年』だと 『死』を意識するなんて何年も後の話だと思っていた。
先生
先生は優しい声でゆっくりと話し始めた。
先生
先生は僕を励ますように色々な話をしたが 『助かる』なんて言葉は先生の口から出なかった。
この病院には大きな図書館がある。ここでは小さな子供から高齢の方が本を読んだり雑談をして過ごしている。
図書館は静かで、今日もページをめくる音だけが響いている。
🌷
いつもの席に座って本を読もうと思ったら、その席の斜め前にあのオレンジ髪の少女がいた。
彼女はひとりで来ていて、分厚い本をゆっくり読み進めている。 笑ったり、首を傾げたりーーその姿を見ているだけで、気がつくと時間がたっていた。
名前も知らない。話したこともない。 でも、どうしてかずっと目を離せなかった。
その日、カウンターに本を返しに行くと、床にカードが落ちていた。 拾ってみると、それは図書カード。 見た瞬間、胸が少し高鳴った。
🌷
彼女の本にしおり代わりに、よく挟まっていた図書カード。
🌷
声をかけると、彼女が振り返った。
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一瞬驚いた顔をして、それから少し笑った。
🍫
彼女の声を初めて聞いた。
声と笑顔。たった一枚のカードで、世界がつながった気がした。
それからしばらく、彼女はまたさっきの席に座るようになった。 でも違うのは、彼女が時々こちらを見て、目が合うと小さく会釈してくれること。
名前を知っただけじゃない。きっと、次はもっと近づける。