小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜が面倒臭そうに先を促した。
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤は渋面の石浜を連れて、別の部屋へと向かった。
いかにも研究室らしい複雑な機器が所狭しと設置された部屋に着くと、
小澤は片隅に置かれた公衆電話ボックスのような大きな箱に近付いた。
石浜兼三
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
小澤正寛
小澤とは長い付き合いだが、昔から冗談の通じない堅物の博士が石浜は苦手だった。
バツが悪そうに頭をかく石浜を睨んでから、小澤は続けた。
小澤正寛
小澤正寛
小澤はデスクの横に置かれたゴミ箱を掴んでから、ボックスの扉を開いた。
ボックスの中は全体が金属製で、かすかにひんやりとした冷気が流れていた。
小澤は持っていたゴミ箱ごとボックスに置くと、おもむろに扉を閉めた。
石浜はあらかた手品の結末を想像して苦笑を浮かべたが、
数分後、小澤がボックスの扉を開け中を見たときは思わず感嘆の声を上げた。
石浜兼三
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
石浜はドキッとしたが、すぐに気を取り直し鷹揚な口ぶりで言った。
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
これは嫌味のつもりでなく、実際に石浜はイライラしていた。
部屋の清掃に取り組めば、多少の苛立ちも収まるだろうと思っていたが、
果たしてどれほどの効果をもたらしてくれるのだろうか…。
小澤の手配により、電話ボックス型断捨離機は石浜の自宅までトラックに運ばれた。
石浜は亡くなった父親の遺産を受け継ぎ、広々とした豪邸を住まいに暮らしている。
父の会社を引き継ぎ、独身貴族として悠々と暮らしている石浜にとっての最大の欠点。
物を捨てることへの躊躇い…。
石浜は面倒臭がりと同時に、優柔不断な性格でもあった。
捨てるべきか捨てざるべきかで悩み、いつしか大量のゴミが部屋のあちこちで山を作っていた。
ボックスを部屋に運んだその日、石浜はとりあえず必要な物、不必要な物を、
ゆっくりと時間を掛けて区分した。
小澤が言っていた通り作業も捗り、次々とボックスに不要品を入れる石浜の動きは、
夕暮れから夜になっても止まることはなかった。
小澤が開発した断捨離機が発揮した能力は凄まじかった。
数年分のゴミは全て、ボックスを通じて異空間(小澤曰くゴミが向かう世界)へと捨てられた。
石浜兼三
小澤への感謝の意をかすかに抱きながら、石浜は愛人の市原弥生のことを想った。
彼を悩ませていたというのが、ほかならぬ彼女だったからだ。
2日後の夜、帰宅した石浜は絶句した。
自宅である豪邸のリビングで、弥生が1人の男と一緒にいたからだ。
2人は親密そうに肩を寄せ合い、互いのワイングラスで乾杯をしていた。
市原弥生
石浜兼三
石浜は弥生の言葉を無視し、2人の顔を交互に見やった。
だが、弥生は石浜の戸惑いを意に介する素振りも見せず、
市原弥生
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
原口保
原口保
原口保
市原弥生
市原弥生
原口保
原口保
弥生が指を口に当てて「シーッ」と言ったが、石浜の耳は聞き逃さなかった。
石浜兼三
石浜兼三
すると、弥生はため息を吐き、石浜を蔑視の目で見つめ不敵に笑った。
市原弥生
市原弥生
市原弥生
市原弥生
市原弥生
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
決意云々はウソだが、弥生をもう一度振り返らせる目的があったのも事実だった。
が、弥生はまたしても軽蔑の眼差しを向けた。
市原弥生
市原弥生
石浜兼三
その時、原口が立ち上がった。
原口保
原口保
原口保
原口保
原口保
原口保
市原弥生
原口は得意気にガハハと笑い、これ見よがしに寄り添う弥生の肩に腕を回した。
弥生は弥生で、癇に触るような甘える声で原口に寄り添う。
石浜は逆上した。
5日後の日曜に突然、小澤博士が石浜の豪邸に現れて断捨離機であるボックスを回収し、
1週間前と同じようにトラックで元の研究所へと戻した。
困惑する石浜に、小澤は申し訳なさそうに説明をした。
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
小澤は当時のことを指摘され、少し恥ずかしそうに顔を赤くしてから、
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜は素直に感動していた。
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
石浜兼三
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤の問いに、石浜は不吉な予感を覚え息を呑んだ。
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
小澤は陽気な笑いを浮かべたが、当の石浜は青白い顔でボックスを眺めていた。
小澤正寛
小澤正寛
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤正寛
珍しく小澤が冗談をぶつけてきたが、石浜は相変わらず体を小刻みに震わせている。
小澤正寛
石浜兼三
小澤正寛
小澤が怪訝そうに見つめると、石浜は貝のように黙り込んでしまった。
研究所内に正午を告げるサイレンが鳴り響いた。
仕方ないなと、小澤は自ら動いた。
石浜が止める間もなく、小澤は金属で出来たボックスの重い扉を開いた。
途端に、ボックスからこれまで石浜が断捨離で捨てた不要物の山が、
文字通り雪崩のようにどっと押し寄せてきた。
石浜兼三
石浜と2人の目と目が合った。
小澤が「ヒィッ」と情けない声を漏らして腰を抜かした。
大量のゴミの山に埋もれるような形で、
市原弥生と原口保のミイラ化した死体がボックスから飛び出したからだ。
2020.06.06 作
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