玲
(...私が、ハブられてたことぐらい、知ってた。)
玲
(...だから、早く学校に行って、)
玲
(一人の時間が欲しかった。)
玲
もう、どうしたらいいの...
私は膝を強く抱いて涙をこらえた。
香栄
...玲
香栄
何してんだよ。こんなとこで
玲
香栄...
香栄
学校、行かねぇのかよ
玲
...行くよ。
香栄
...今日、水曜だろ
香栄
音楽室、来いよ
玲
...あはは。そうだったね。
玲
.........忘れ、てた。
香栄
.........
玲
.........
動こうとしない私の手を香栄が優しく引っ張った。
玲
わっ...
香栄
約束ぐらい、守ってよ
なんで私がないているのか、
香栄は、聞かないでくれた。
優しく手を引いて、 隣にいてくれた。
玲
...香栄、
玲
そういえば、体調はもう大丈夫なの?
香栄
あぁ...大丈夫。
香栄
心配かけてごめん
玲
そっか、良かった。
香栄
.........今日は、口悪くならないんだ
玲
...口悪い方が良かった?
香栄
...どっちも好き.........
玲
え?何?
香栄
なんでもねぇ
結局学校まで手を繋いで音楽室に入る
玲
1週間ぶりかぁ...
香栄
ほら、弾いてやるよ
香栄
何がいい?
玲
...じゃあ、あの時、香栄が弾いてた...
香栄
...お前、聞いてたのかよ...
玲
...あ、
香栄
プレリュード。
玲
...
玲
音、聞こえる...
玲
なんだろう、この曲...
玲
...好きだなぁ
玲
誰が弾いてるんだろう...
玲
...香栄?
玲
ピアノ弾けるんだ...
玲
あ、ひっかかった
玲
...曲止まっちゃった
玲
なんか書いてる...
玲
...
玲
失礼しまーす
玲
(わぁ...手、長いなぁ)
玲
(前髪長い...)
玲
(あんまり話したことないけど、かっこいいなぁ)
玲
(ちょっと不良っぽいけど)
香栄
(.....なんか、見られてんだけど...)
香栄
(...誰?)
香栄
(...玲!?)
香栄
(やっべぇ、ちらっと見たけどこっちみてにこにこしてた...)
香栄
(もう、ピアノ弾けねぇ)
玲
...すごい
玲
その曲、初めて聞いたけど、すごい好き。
香栄
お前、前に聞いただろ
玲
そうだった。バレてた。
玲
この曲、ぷれりゅーど...?って言うの?
香栄
そう。プレリュード第7番
香栄
前奏曲って意味。
玲
へー。もう1回聞きたい、
香栄
...無理
玲
冷た
玲
やっぱ、頑固なゴリラ
香栄
.........
玲
あれ?落ち込んでる?
玲
ごめんごめん。
玲
ジュース奢るから!
玲
許して.........
玲
...え?
玲
大丈夫?
玲
香栄!?
香栄
ごめ.......保健室...
玲
わかった。
玲
おんぶするから乗って
香栄
お前じゃ、無理...
玲
あんた軽いから平気だよ!!!!!
玲
この、ガリガリゴリラ。早く乗れっつってんだよ。
香栄
...ごめん.........
ドサ.........
玲
.........え?
香栄が、玲に倒れてきた時、
骨を背負っているような感覚だった。
すごく軽かった。
先生と、玲の声が聞こえる。
救急車が、なんだとか、
何分後に到着だ、とか。
薄れていく意識の中、
聞こえてきた。
それだけで、俺が今、どんな状況なのか、
理解ができる。
香栄
先...生?
先生
空谷くん。今から救急車呼ぶから
先生
寝ててね!
香栄
.........
俺はもう、ダメだ。