小の虫を殺して大の虫を助ける。とは、まさに颯詩《そうし》の思い描く理想像だった。
人々から悪者の概念を持たれようが、遠ざけられようが、もっと大切なことを成し遂げる
|—逆黒軍《さっこくぐん》—
国の将軍暗殺計画を目論む反社会組織。 颯詩はまだ八つか九つの時に、住む場所一帯と家族を皆殺しにされていた。
その頃から憎悪の念と|刷新《さっしん》とを図り逆黒軍に入隊した。
初めはなぜ入りたいかを総督の納得が行くまで湯をかけられながら尋問され、痛みに耐えるよう身体中刀で裂かれるなど、非常に辛い修羅場を耐え抜かねばならない
何度も挫けそうになったが、憎しみと憎悪と悲しみとには甘えなど勝つことはできない。
家族が無惨に殺められていく姿を見て自分だけ背を向けて逃げたのだから。
ただ、本当の【強い】を追い求めていたのだ。
だが、世間一般的には逆黒軍は無差別殺人集団と同じニュアンスでやはり恐れ、嫌悪されている。
颯詩は幾度も自分がなぜ入隊したかを人々に打ち明けたくなった。
自分の素性を隠し通して、偽りの人間関係が編み込まれていくことが、どうしても飲み込みにくかった。
入隊する理由は人それぞれ、
中には殺戮をしたいがために入るものもいる。
でも、自分は違うと、助けるためだと、嫌われたくないと思っていた。