テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

LINE１２９８

第1話 - あ

2023年11月06日

#スカッと

タナカトシキ

フミノリ

おい、いつになったら子供を産むんだ！

フミノリ

仕事にばかりかまけおって…。女は、子供を産んでこそ一人前なんだからな！わかってるのか！

サヤ

お義父さん、私達夫婦には私達のペースがあります

サヤ

今は仕事が繁忙期で、それどころでは…

フミノリ

嫁の分際で口答えしおって。何が仕事だ

フミノリ

そんなものしてるから女は生意気になって役割を放棄し、男を立てず子供も産まなくなる

フミノリ

お前がいい例だ

サヤ

放っといてください。私は仕事が好きですし、コウジさんも理解してくれているので

フミノリ

そういえばお前、コウジに家事をさせてるそうじゃないか

フミノリ

家事は女がするものだろう！

フミノリ

コウジもコウジだ！尻に敷かれおって、情けない！

サヤ

共働きだから家事を分担するのは当たり前です

サヤ

これがうちのやり方なんです

サヤ

男だからこう、女だからこう、などと決めつけるのは今の時代、古いと思います

フミノリ

偉そうな口利くな！だから今の時代はダメなんだ！

フミノリ

昔から男女の役割というのは決まっておる！

フミノリ

家に籠って、出しゃばらず、男を立てるのが女の役割だ

サヤ

お義父さん達はそうかもしれませんね

サヤ

でも私達は違いますので

フミノリ

お前はコウジの嫁だろう！

フミノリ

ならば、うちに嫁いだも同然だ！うちのやり方に従ってもらう！

サヤ

どうして従わなくてはならないのですか？同居もしていないのに

サヤ

お義父さんこそ、昔から『老いては子に従え』って言いますよね

フミノリ

ああ言えばこう言う！昔の嫁みたいに、夫の親を尊敬する気持ちはないのか！

サヤ

お義母さんのことは尊敬していますよ

フミノリ

なっ…！家長である俺は尊敬していないのか！あんな、家事しかできない無能ババアのどこを！

サヤ

お義父さんみたいな人に耐えて、立派にコウジさんを育て上げたことを尊敬しています

サヤ

それに、私にもとても良くしてくださいますし

サヤ

というか、お義母さんは正に家に籠って夫を立てていて子供も産み育てた、

サヤ

お義父さんの理想の女性ですよね

サヤ

それなのに、お義父さんはそんなお義母さんのことも見下すんですか

フミノリ

当たり前だ！俺が長年養ってやってるんだぞ！

サヤ

どっちにしろ見下されるなら、働いても働かなくても同じですよね

サヤ

なら、好きに働かせていただきますね

～数週間後～

サヤ

お義父さん！

サヤ

会社に私をやめさせるようクレームの電話を入れるなんて、何考えてるんですか！

サヤ

お陰で大変でしたよ！

フミノリ

ふん、嫁の分際で生意気な口をきいた罰だ。無駄に大層な会社に勤めおって

フミノリ

嫌なら早く仕事をやめるんだな

サヤ

もうお義父さんの電話は着信拒否に設定しました

サヤ

これ以上嫌がらせするようなら、訴えさせていただきます

フミノリ

言うに事欠いて、夫の親を訴えるだと！？

サヤ

大事な出世がかかってるんです。お義父さんに邪魔はさせません

フミノリ

ふざけるな！女の分際で何が出世だ！

フミノリ

大企業だか何だか知らんが、子供も産まん女をこんなに勘違いさせて碌な会社ではないな！

サヤ

会社を侮辱するのはやめてください。女性の働きやすい環境が整っていて、

サヤ

私の他にも大勢の女性社員が働いているんです

フミノリ

うるさい！だから碌な会社ではないんだ！

フミノリ

コウジのためにも、何が何でもそんな仕事辞めさせてやるわ！

（【リョウコ】が追加されました）

リョウコ

その前に、私があなたの妻をやめます

フミノリ

へ？

サヤ

すみません、お義母さんが、どうしてもお義父さんと話がしたいというので、

サヤ

LINEを追加してしまいました

リョウコ

ありがとうね、サヤさん

フミノリ

おい、なんでそこでお前が出てくるんだ！

フミノリ

お前は女の分際で出しゃばるな！

フミノリ

黙って夫の言うことを聞いていろ！

リョウコ

嫌です。言わせていただきます。いくら舅でも、サヤさんに仕事をやめさせる権利はありません

リョウコ

それにあなたのしたことは、サヤさんだけでなく、会社の他の方にも迷惑をかけてしまう行為ですよ

フミノリ

うるさい！家長たる俺に向かって！

フミノリ

おい、お前のせいでリョウコまで生意気な口を利くようになったじゃないか！

リョウコ

サヤさんのせいじゃありません。私が、もう黙らないと決めたのです

リョウコ

私はあなたの、そういう所にもうついていけないのです

リョウコ

だから先ほど言った通り、あなたの妻をやめさせていただきます

フミノリ

できるわけないだろう！お前は、俺が養ってやってるんだ！

リョウコ

養ってるも何も、今は私達、どちらも年金暮らしでしょう

リョウコ

それに、コウジとサヤさんが同居を強く勧めてくれましたから

リョウコ

今後はパートなどで働くことも考えています

フミノリ

なんだと！？余計なことをしおって！

フミノリ

それではうちの家事はどうするんだ！女の役割を投げ出すな！！

リョウコ

ご自分でやればいいでしょう

リョウコ

無能ババアの私でもやれたことなら、ご立派なあなたにもできるはずです

リョウコ

大体、女は働くなといいますけどね

リョウコ

私だって働いていたことがありますよ。忘れたとは言わせません

リョウコ

あなたが昔、一時期職を失った時、私が代わりに必死でパートで働きました

リョウコ

それなのに、あなたは家事も育児も何もしてくれなかった。男の役割じゃないとか言ってね

リョウコ

だから、私がすべて一人でやるしかなかった

フミノリ

だ、だが普段は俺が養ってやってたんだぞ！

フミノリ

それくらいで対等ぶるのはやめろ！

リョウコ

フミノリさん

リョウコ

私はね、夫婦は持ちつ持たれつだと思いますよ

リョウコ

どちらが偉いわけではない、対等な存在だと

リョウコ

それなのに、あなたはいつも私を見下していた。私からの感謝を要求するばかりで、

リョウコ

私がいくら尽くしても、あなたが感謝してくれることは一度もなかった

リョウコ

息子夫婦を見て、私は思ったんです

リョウコ

この二人のような夫婦関係を築きたかったと

フミノリ

お前も働きたかったというのか！？

リョウコ

少し違います。私はあなたに、対等な存在として尊重されたかったんです

リョウコ

でも、もういいわね

リョウコ

離婚届を置いてきました。今までありがとう。さようなら

フミノリ

おい待て！

（【リョウコ】が退出しました）

フミノリ

お前…よくも妻にまで変なことを吹き込みやがったな！

サヤ

私のせいにしないでください。お義父さんの横暴な態度のせいでしょう

サヤ

それから、そんなに私が働くのが気に食わないなら、

サヤ

もう仕送りを止めますね

フミノリ

へ？

フミノリ

何を言う！仕送りはコウジが送ってきてるんだろう！

サヤ

違います。たしかにコウジさんの口座から振り込まれてますけど、

サヤ

私、実はコウジさんの倍くらい稼いでるんです

サヤ

だから仕送りの大半は、私のお金から出してました

フミノリ

は！？

サヤ

でもそれももうやめますね。コウジさんもそれでいいと言ってくれました

サヤ

今まではお義母さんの為にも仕送りしてましたが、もう離婚されるのですし

サヤ

それでは、私達もお義父さんとは縁を切らせていただきます

フミノリ

待て！それは本当か！？おい！！

～数ヶ月後～

フミノリ

おい、相変わらず働いているのか？

フミノリ

この際働くのを認めてやるから、仕送りを再開しろ！

サヤ

おやお義父さん、何があったのですか？

サヤ

家事の担い手だったお義母さんがいなくなってから家が荒れ放題になって、

サヤ

何度もお義母さんに復縁要請しては断られているとはお聞きしていますが

サヤ

コウジさんにも何度もお義母さんを説得しろ、仕送りしろと連絡しているそうですね

フミノリ

うるさい！いいから仕送りしろ！俺は今、金がなくて大変なんだ！

サヤ

年金暮らしで仕送りも止まったのにキャバクラに通い続けていれば、

サヤ

そりゃあお金も底を尽きるでしょう

フミノリ

な、なぜそれを…！

サヤ

お義母さんから、お義父さんがキャバクラに通い詰めてることはずっと前から伺ってました

サヤ

生活の足しにと送った仕送りも、勝手に全額それに費やしていて、お義母さんが反対しても

サヤ

『女が俺に逆らうな！』と一蹴したのだとか

サヤ

だからそうじゃないかと思ったんですけど、図星でしたか

フミノリ

仕方ないだろう！こっちは寂しいんだ！

フミノリ

キャバの女の子達はお前たちのような生意気な口を利かない！

フミノリ

俺の説教を素直に聞いてくれる！

フミノリ

俺の話に『そうですね』と笑って頷いてくれる

フミノリ

俺を立ててくれるんだ！お前らも少しは見習え！

サヤ

キャバで説教って…それ典型的な痛客ですね

サヤ

キャバ嬢相手に威張るしかできないって、もう哀れすぎますよ…

フミノリ

なんだと！？

サヤ

キャバ嬢が素直に頷いてくれるのも、立ててくれるのも当たり前です

サヤ

営業ですからね。心から賛同してるわけじゃありません

サヤ

というか、キャバ嬢だって働く女性ではないですか？

サヤ

働く女性は気に食わないくせに、キャバの仕事はいいんですか？

フミノリ

相変わらず生意気な！それより仕送り100万寄こせ！

サヤ

嫌です

サヤ

なんでそんなことのために、そんなに振り込まなきゃいけないんですか？

サヤ

キャバクラで散財して借金したのはお義父さんの自業自得ですよね

フミノリ

なぜ借金のことまで…！

サヤ

やっぱり。コウジさんが、消費者金融に出入りするお義父さんを見たと言っているんです

サヤ

でも家長で偉いお義父さんなら、きっとおひとりで何とか出来るでしょう

フミノリ

夫の親を見捨てる気か！？こんなに困っているのに！

サヤ

えぇ、見捨てます。お腹の子が産まれたら、この子に沢山お金がかかりますし

サヤ

それなのに余計な出費はしたくないんですよ

フミノリ

は！？今、なんて言った？お腹の子…？

サヤ

えぇ、私今妊娠してるんですよ

サヤ

あと何か月かすれば、産休に入ります

サヤ

私達は共働きですから、働いている間子供は誰が面倒を見るかという問題があって、

サヤ

中々子作りには至れませんでした

サヤ

ですが、今はお義母さんが面倒を見てくれると仰ってくれています

サヤ

だから、安心して妊娠できたんです

サヤ

家族みんなで、産まれるのを楽しみにしています

フミノリ

だったら、俺にも孫の顔を見せろ！

フミノリ

孫には生意気な口は利かせん

フミノリ

男女の役割というものを、幼いうちからたたき込んでやる！

サヤ

まだそんなこと言うんですね…

サヤ

そんなあなたに、大事な我が子を会わせるわけにはいきません

サヤ

それでは

～後日談～

サヤ

その後、義父は更なる借金をしてまでキャバクラに通い詰めるも、

サヤ

調子に乗るあまりあちこちのキャバクラで迷惑行為を繰り返し、

サヤ

どこの店も出禁になってしまったとか

サヤ

嬢たちにも案の定、陰で煙たがられていたそうです

サヤ

膨大な借金を背負ってしまった義父は、

サヤ

バイトの面接を受けるも居丈高な態度が災いして、中々どこでも雇ってもらえず、

サヤ

やっと雇ってもらえた人手不足の工場でのバイトで、

サヤ

年下の先輩や女性の先輩たちに指導され叱られながら、

サヤ

大分プライドをへし折られているようです

サヤ

私は無事に元気な赤ちゃんを産み、産休を終えた後、

サヤ

すぐに仕事に復帰しました

サヤ

仕事中は義母が子供の世話をしてくれるので、安心です

サヤ

夫も積極的に育児に協力してくれています

サヤ

仕事と育児の両立は大変ですが、この恵まれた環境を活かして頑張ろうと思います

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE１２９８

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE１２９８

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧