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第1話 - あ

2023年10月05日

#恋愛

結城　真矢

ミライ

セイラちゃん！

ミライ

今月の売り上げ、ひどいんじゃないの？

ミライ

やる気ある？

セイラ

すみません、私なりに頑張ったつもりなんですが...

セイラ

力及ばなかったみたいです

ミライ

力及ばなかった、ってね...

ミライ

他の2人はあなたより1.5倍も多く売り上げてるのよ？

ミライ

どうしてあなただけ、こんなに少ないの？

ミライ

もう少し、家電の良い点、悪い点を勉強してお客さんとトークできるようになりなさい

セイラ

はい、すみません

ミライ

私があなたのトレーニングをしてる身として言わせてもらうけど、

ミライ

トレーナーの私の評価も下がるの

ミライ

それ、分かってる？

セイラ

はい、これからは迷惑かけないように、気を付けます

ミライ

そしたら、今月売れた売り上げ商品のデータだけど、

ミライ

明日中にまとめて私に出してくれる？

セイラ

え？明日中にですか？

ミライ

できるでしょ？

セイラ

いや、さすがに明日は...今日も閉店まで仕事があるので厳しいかと...

ミライ

そんなの、どうにかして終わらせるの

ミライ

社会人なんて、そんなものよ

ミライ

それが仕事、ってものなの

ミライ

そう言うことで、よろしくね

セイラ

はい、分かりました

～翌日の21時～

ミライ

セイラちゃん、もう21時だけど？

ミライ

データまとめ、終わった？

セイラ

えっと、すいません意外と量が多くて...

セイラ

もう少しかかりそうなんです

ミライ

もう少し、ってあとどれくらいかかるの？

セイラ

えっと、たぶんあと30分くらいはかかると思います

セイラ

でも、私明日は朝から外に研修があるので、家に帰って終わらせてもいいですか？

ミライ

何言ってるの？

ミライ

あと少しなんだったら、終わらせて帰ってよ

セイラ

えっ、でも...明日早く起きないと行けなくて...

ミライ

もう少し睡眠時間ほしい、とか言いたいわけ？

ミライ

そんな甘えたこと、言わないでくれる？

ミライ

私だって、睡眠時間削ってでも仕事してるの

ミライ

新卒でここに入ってきたと気だって、必死で頑張って売り上げ上げてたのよ

ミライ

それなのに、セイラちゃんはそんな甘えたことばっかり言って...

ミライ

ゆとり世代は言うことが違うわね

セイラ

必ず、家で終わらせて来るので...

セイラ

家の自分のパソコンの方が、データ入力もしやすいんです

ミライ

そんなの、言い訳に過ぎないでしょ

ミライ

これからは、職場のパソコンに慣れなきゃいけないのよ

ミライ

自分のパソコンじゃないと仕事にならないなんて、

ミライ

そんな理由が通るなんて思わないでよね

ミライ

そういうことだから、しっかりデータ入力、終わらせてね

～翌日の朝8時～

ミライ

セイラちゃん、今日、研修で足りなかったものがいくつかあったから、

ミライ

今からリストアップするものを買って来てくれる？

セイラ

え？今からですか？

セイラ

私、まだお店にいるんです

セイラ

リストアップされたもの、ほとんど文房具なので、

セイラ

他の子に頼んでもいいですか？

セイラ

出勤の前に文房具店に少し寄ってから調達できるものばかりなので...

ミライ

え？なんで？

ミライ

そんなこと、する必要ないでしょ

セイラ

え？でも...

ミライ

私はセイラちゃん、あなたに頼んでるの

ミライ

他のみんなには割り当てられた仕事があるんだから、これ以上仕事を任せれないでしょ

ミライ

もう、データ入力は終わったんじゃないの？

セイラ

終わったんですけど、徹夜したので少し休憩したくて...

ミライ

え？あと1時間くらいで終わる、って言ってたでしょ？

セイラ

それが、会社のパソコンの調子が途中で悪くなって、

セイラ

データが全部飛んじゃったんです

セイラ

それで、別のパソコンでもう一度試して、今朝やっと終わったんですよ

ミライ

会社のパソコンのせいにして...

ミライ

どうせ、セイナちゃんの扱い方が悪かったんじゃないの？

セイラ

そんなはずはないと思うんですが...

ミライ

え？本当にそう思ってる？

ミライ

ちょっとしたミスは、今までにも何度かあったじゃない

ミライ

USBを指す方向を間違えて、そのUSB使えなくなっちゃったとか...

ミライ

そんな初歩的なミス、大学生でもしないと思うけど？

セイラ

それは、本当にすみませんでした...

ミライ

そういうことで、必要なもの、買って来てね

ミライ

あと、もう1つ連絡事項ね

ミライ

来月の売り上げのことだけど、今の3倍は売り上げ出すこと

セイラ

え？3倍、ですか？

セイラ

どうして、そんないきなり...

ミライ

私の名誉にかかわるでしょ！？

ミライ

あなたがこのままの売り上げでいたら

ミライ

何か数字にして目標を立てないと、ダラダラ仕事するだけじゃない

セイラ

ダラダラ仕事したことなんて、私ないですよ

ミライ

本当に？

ミライ

他の新卒の子は普通にやってて、良い営業成績を出せているんだから、

ミライ

あなたが手を抜いてるとしか思えないけど...？

ミライ

私が新卒のときは、今の新卒の子たちより最高で2倍は売り上げを出してた時があるんだから

ミライ

それに勝ってみなさいよ

セイラ

さすがに、いきなり2倍は厳しいかな、と思いますけど...

セイラ

頑張ってみます

ミライ

頑張る、じゃなくてやるの！

ミライ

目標達成できなかったら、私の仕事の一部、代行してもらうから

セイラ

え？それは違うんじゃないですか！？

ミライ

セイラちゃんが売り上げを出せなかったら、私が対策を練っていかないといけないの

ミライ

その対策案を考える時間を作らないといけないんだから、

ミライ

その間は私、自分の仕事ができないのよ？

ミライ

代わりにあなたが何か他のことをするのは、当然のことでしょ？

ミライ

それくらいのことは、分かるわよね？

ミライ

返事は？

セイラ

はい、分かりました

ミライ

じゃあ、そういうことでね

ミライ

しっかり買い出ししてきてから、研修の準備もしておいてね

～2週間後～

ミライ

セイラちゃん、今月の営業成績の発表まであと2週間だけど、大丈夫？

ミライ

今度こそ、いい成績出せなかったらどうなるか、分かってるよね？

セイラ

私なりに、頑張っているつもりです

ミライ

本当に？

ミライ

私が新卒で必死に働いてた時は、ほぼ毎日、残業して働いてたのに...

ミライ

定時で帰ってるじゃないの

ミライ

本当に、大丈夫なんだよね？

セイラ

大丈夫です

ミライ

そう...

ミライ

どうなっても、知らないからね

～2週間後～

セイラ

ミライさん、今月の営業成績、見れくれましたか？

ミライ

え？まだだけど...

セイラ

私、しっかり目標達成できましたよ

セイラ

目標は3倍に増やすことでしたけど、5倍も多く売れました！

ミライ

え？ウソでしょ！？

セイラ

本当ですよ

セイラ

しかも、ミライさんの営業成績も上回ってるんです

ミライ

え...本当だ...

ミライ

何か、ずるい手でも使ったんでしょ！？

ミライ

いきなり、こんないい成績出せるわけないもの！

セイラ

いえ、別にずるい手なんて使っていないですよ

セイラ

というか、ずるい手を使っているのは、むしろミライさんの方じゃないんですか？

ミライ

え？なんで？

セイラ

この前、お客さんから聞いちゃったんです

セイラ

ミライさんが、家電のことをよく知らない年配のことをカモにして、

セイラ

高いものを選ばせる、って...

ミライ

は？そんなこと、するわけないでしょ！？

セイラ

前に、私が対応した40代の徐勢が言ってたんですよ

セイラ

その人のお母さんが掃除機を買いに来た時、ミライさんがメリットしか言わなくて、

セイラ

限定商品だから、今すぐ買った方がいいです、って...

セイラ

でも、その掃除機は今年度いっぱいまで売るものですよね？

セイラ

どうして限定商品なんて、ウソついたんですか？

ミライ

あれ？限定商品だと思ってたけど、違ったかしら...

ミライ

勘違い、しちゃってたのかもね

セイラ

他にも、同じようなこと言われた、っていうお客さんは沢山いたんですけど、

セイラ

それもミライさんがうっかりして、間違ったことを伝えちゃったんですか？

ミライ

えっと...多分、そうかもしれないわね...

セイラ

ちなみに、カウントしたらそういうお客さんが、10人くらいいましたよ

セイラ

私のミスはすごく責めるのに、ミライさんも随分ミスしてることになりますね

ミライ

これからは、減らしていくように気をつけるわよ

セイラ

そうですか

セイラ

ミスに気づけて良かったですね

セイラ

でも、ミライさんについていたお客さんは、

セイラ

これからは私のことを信頼してくれるみたいですよ

ミライ

は？なに？

ミライ

どういうこと...？

セイラ

ミライさんから高額な商品を買わされてた、って気づいたお客さんたちが、

セイラ

今度から私から商品を買いたい、って言ってくれたんです

ミライ

え？セイラちゃん、何か変なことでも言ったの！？

セイラ

いえ、何も言ってないですけど...

セイラ

私はただ、買うようにミライさんから勧められた商品は今年度まで売っていることと、

セイラ

メリット、デメリットを伝えただけです

セイラ

そしたら、お客さんが「今度からはあなたから商品を買いたいって言ってくれたんですよ」

ミライ

は？何それ...

セイラ

ミライさんは、家電商品の良いところだけお客さんい伝えていたみたいですけど、

セイラ

それだけじゃお客さんにニーズなんて伝わらないですよね？

セイラ

お客さんは自分の求めていることと、商品が持っている機能がマッチしているか知りたいのに...

セイラ

私たち販売員がそれを伝えなきゃ、誰が伝えるんですか？

ミライ

まあ、確かにそうね

ミライ

今回は、少し間違ったことをしちゃったかもしれないわ

ミライ

でも、今度からは気を付けるし...

ミライ

だから、誰にも言わないでよね

ミライ

言ったら、セイラちゃん、どうなることか分かってるよね...？

セイラ

いや、私がお客さんに商品は今年度の12月まで販売することを伝えたら、

セイラ

すぐに店長を呼んで、ってすごくご立腹で、もう店長は知っていますよ

ミライ

え！？それ、いつの話！？

セイラ

えっと...３日前だったと思います...

セイラ

店長も、すごく困った顔してましたよ

ミライ

今日、店長から話がある、って言われてたのはそれだったのね...

セイラ

もうすでに、知っているんですね

セイラ

心の準備、大丈夫ですか？

ミライ

セイラちゃんに心配される必要はないわよ

ミライ

私なら、大丈夫だし

ミライ

放って置いてくれていいから

セイラ

そうですね、もうここで働かないかもしれないですしね

ミライ

それは、まだ分からないでしょ

ミライ

あ、店長からLINE来てる...

ミライ

えっ...工場に配属勤務、って...そんな...

セイラ

まあ、そういうことですね

ミライ

そういうこと、って...

ミライ

あなたが偉そうに、言わないでくれる！？

ミライ

こうなったのも、セイラちゃんがしっかりお客さんに売ってくれたらよかったのよ！

セイラ

私は、目標は達成できましたよね？

セイラ

それに、ズルして売ろうとするミライさんより、

セイラ

よっぽどセールス力はあると思っています

セイラ

そういうわけで、私はこれからこの店の販売員のリーダーとして昇進するので、

セイラ

いい勉強の機会をくれて、ありがとうございました

ミライ

え？昇進！？

セイラ

はい、おかげさまで

セイラ

じゃあ、工場勤務、頑張ってくださいね

～後日談～

セイラ

私はお客さんのニーズを読み取る力をどんどん養っていき、

セイラ

お得意様を増やすことができました

セイラ

営業成績よりも、お客さんと真摯に向き合うことを考えたら、こんなにも売り上げを上げれるとは、

セイラ

すごくいい経験と勉強になりました

セイラ

これからも、販売店リーダーとして頑張り、次期店長になるため、日々邁進していきたいです

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結城　真矢

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