主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
目が覚め、辺りを見回す
白い壁に、白い床、白い天井
どこを見ても白色しかない、部屋だった
おまけに窓もなければ出入口となる扉も見当たらない
とりあえず探索をしてみることにした
と言っても、隠し通路などなく、ヒヤリとした壁に囲われているだけだが
壁に沿って歩き、何かここから出る手がかりがないか探す
1周、2周して、ふと気付く
壁に何か、文字が書かれている
白い壁に、白い字で
こんな所に閉じ込められていること自体腹が立っているのに、こんな見えずらくされていたら、更に腹が立つ
……こんな事で腹を立てていても、なんの解決にもならない
ひとまず、その文字を読んでみることにした
首を切断しないと出られない部屋
胡蝶しのぶ
しのぶは困惑する
自分が読み間違えたのではないか、そう思いもう一度読み返す
胡蝶しのぶ
しかし、何度読んでも書いていることは同じであった
胡蝶しのぶ
困惑、焦り、戸惑い、動揺
しのぶはいまだ寝ている後ろの人物を見やる
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
迷っている暇などない
やるしかないのだ
胡蝶しのぶ
ベルトに掛けてある自身の刀
それを引き抜_____
胡蝶しのぶ
本来あるはずの刀はなく、鞘だけがベルトに掛かっていた
慌てて部屋中を見渡すが、もちろん刀など落ちていない
何故、どうしてと疑問が浮かぶ
自身の軽量された刀なら辛うじて持てるものの
本来の刀は、腕力のないしのぶにはいささか重すぎる物なのだ
それを持ち己の首を斬るなど、到底彼女は出来なかった
胡蝶しのぶ
………考えた末、仕方なく、彼を起こすことにした
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
何度目の説明か
しのぶは己の首に手を添えながら冨岡に協力を乞う
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡は今にも泣き出してしまう子供のような表情をした
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
さぁ、早く。と冨岡を急かす
それでも刀を抜かない冨岡に、しのぶ自ら冨岡の柄に手を添える
冨岡がそれを制止するよりも早く、しのぶは刃を引き抜いた
青く輝く刀身は冨岡の瞳と同じ色をしている
胡蝶しのぶ
しのぶは何かを思いついたように、ニコリと微笑み刃を自身の首に沿わせる
胡蝶しのぶ
少し食い込ませればつつ...__と赤い血液が首筋を流れ、隊服に染み込む
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
しのぶの表情から笑みが消える
冨岡義勇
冨岡は何も言えず、何も動けず、ただただしのぶの首から垂れる血を見ているだけだった
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
また数ミリ、冨岡の刃がしのぶの首に食い込む
しのぶの顔が、痛みに歪む
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
「すごく、いたいのです」
これ以上、後にも先にも行けない
冨岡は、恐怖で手が震えている
冨岡義勇
それは紛れもなく、しのぶが死ぬという恐怖だった
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡は必死にそう叫ぶ
絶望に打ちひしがれた表情で
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
刃に付いた血が、ぽとりと床に落ちる
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
白い床に、赤い血はよく映える
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
虚ろな目をして、しのぶは冨岡を見る
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
懇願するように、深く切願するように
か細い声で、冨岡に頼み込む
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
告白とも受け取れるその言葉を
冨岡義勇
冨岡は
冨岡義勇
冨岡義勇
しのぶの手の上から包み込むように、刀の柄を握り、頷く
そして
ザシュッ
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡はハッとして、目を開ける
冨岡義勇
そこは、自分の屋敷とは違う天井だった
冨岡義勇
冨岡義勇
カーテンの隙間から差し込む太陽の光
時間を確認したいが起きるのも億劫で、冨岡は何もせず、天井を見続ける
冨岡義勇
冨岡義勇
何分が経過しただろうか
控えめに、扉をノックされる音が聞こえた
神崎アオイ
神崎アオイ
水を乗せたおぼんがガシャンと音を立てて落ちる
冨岡は眉をぴくりとも動かさず、アオイを見た
____涙を流しながら、アオイはフリーズしていた
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
心配で声を掛けたつもりが、酷く掠れていて脅かしてしまったらしい
アオイの肩がビクッと跳ね、バタバタとどこかに走り去ってしまった
冨岡義勇
冨岡は床に広がっている水を拭こうと寝台から出ようとするが
体どころか、指一本も動かせない
おぼんを落としたのはアオイだが、ビックリさせたのは自分だ
しかし体が動かず拭くことすら出来ない。冨岡は罪悪感で誰か来るのを待つしか無かった
冨岡義勇
………再び、ドタバタと誰かが走ってくる音が聞こえた
なにやら、先程のアオイの時よりも急いでいるようだ
そして、走ってくる人物が冨岡の前に現れる
冨岡義勇
冨岡はふにゃりと笑い、喜びを隠せないようだった
しのぶの手の上から包み込むように、刀の柄を握り、頷く
そして
ザシュッ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡はしのぶから自身の刀を奪い取ると、
己の首に、刃を食い込ませた
血が飛び散る
しのぶは目の前が真っ白になる
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
しのぶは急いで冨岡に駆け寄る
その瞬間、カチッという音と共に白い部屋は消え、元居た森に戻された
しかし、出れたということにも気付かずしのぶは冨岡の首に自身のハンカチを当てる
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
ハンカチはすぐ血で真っ赤に染まった
その光景に、しのぶは鳥肌が立つ
胡蝶しのぶ
姉も、こんなふうに、血が、止まらなかった
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
自分の目の前で、大切な人が死ぬのは、もう
耐えられない
胡蝶しのぶ
必死に冨岡の血を止めるが、しのぶも首から出血している
そして森の中と言えど、ここは酸素が薄かった
しのぶは気絶してしまった
冨岡は手を伸ばす
彼女は自身に伸ばされた手を掴み、握る
冨岡は、精一杯の力で握り返す
冨岡義勇
掠れた声は、安堵と悲しみと愛おしさを含んだ柔らかい声音をしていた
胡蝶しのぶ
ぎゅっと、手を握る力が強くなる
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡は、しのぶの首に巻かれた包帯を見る
冨岡義勇
冨岡の手は、しのぶの頬に伸ばされる
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
しのぶは冨岡の手を包み込む
そして、再度
と、言った
冨岡義勇
冨岡義勇
しのぶの涙を、冨岡は親指で拭き取る
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
しのぶと、冨岡の瞳が合う
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
砂糖よりもアイスクリームよりも、何よりも、その声音は甘く優しかった
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
ぽろぽろと溢れる涙が止まらない
「ばか、ばかぁ」と呟き続けるしのぶを、冨岡は柔らかく微笑み、静かに見ている
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
名を呼んでから、数秒の沈黙
冨岡は勇気を出して、口を開き、言葉を放つ
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
陽の光が当たり、2人を照らす
冨岡義勇
冨岡は捨てられた子犬のように、しゅん…とした表情でしのぶの顔を窺う
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
しのぶは、幸せそうに、泣きながら笑う
冨岡義勇
冨岡も頬が緩み、締りのない顔をして呟いた
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
冨岡義勇
胡蝶しのぶ
終わり
コメント
1件