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玲奈ちゃん!?男の子を押し倒したの!?すごっ!!((そこじゃない 「ごめんね」って言葉は簡単そうで難しい言葉だよね……。でも、玲奈ちゃんならきっと悪魔さんに「ごめんね」って言える日が来ると思う👀✨
夜明けの眩しい光が、私の瞼を 明るく照らす。
その強い眩しさに、眼を 覚ましそうになりながらも
睡魔には勝てず、開きかけた 瞼を閉じようとする。
耳の中に小鳥のさえずりが 突然鳴り響いた。
驚いた私はようやく、 眼を覚ます。
凍えるような寒さに気づき、 慌てて飛び起きる。
手元を見ると、柔らかく 温かな毛布が一枚。
ふと隣を見ると、見慣れない 悪魔の姿___
そうだった…。
昨日の記憶が次々と蘇る。
何もかも捨てようと、 飛び降り自殺を試みたこと。
自殺する寸前で、悪魔が お姫様抱っこをして
助けてくれたこと。
それに驚いた私は 崖から落ちてしまったこと。
それに気づいた悪魔が、 もう一度助けてくれたこと。
ずっと誰にも言わなかった 本音を、泣きながら
打ち明けてしまったこと。
その間に悪魔が、優しく背中を さすってくれたこと。
そして
初めて誰かを信じてみたいと 思えたこと。
もう一度、生きてみたいと 思えたこと。
ずっと側にいてくれる 『誰か』 がいることは、
こんなにも幸せなんだって 気づいたこと__
相変わらず、悪魔は隣で 気持ちよさそうに寝ている。
まるで家にいるように寛ぐ その姿に、思わず
ふっと笑みが零れた。
毛布にくるまっている悪魔に、 蚊の鳴くような小さな声で_
眠い眼を擦って、もう一度
温かい毛布にくるまって 二度寝を始めた___
悪魔の嫌味を聞いて、咄嗟に 言い返そうと
前に身を乗り出す。
その1秒後。
ぐうぅぅぅと、腹の中の虫が 情けなく鳴いた。
…私のお腹は正直だった。
どこかからかうような口調で 言われ、ぐっと口を噤む。
悪魔はけたけたと笑いながら、笑いで滲んだ涙を拭う。
怒った私は顔を真っ赤にして 目を逸らした。
さっきの笑い声とは 打って変わって、
真剣な声色で言われ、 思わず言葉を失くした。
気まずい雰囲気の中、先に 口を開いたのは悪魔だった。
悪魔はそう言うと、 黒い翼を大きく羽ばたかせて
青空へと飛び立った。
悪魔の頼もしい姿が 少しずつ小さくなって…
等々見えなくなった。
脳裏に浮かんだのは、
真っ直ぐで強い瞳の色。
申し訳なさそうに言う、 真剣な声色。
優しくて柔らかくて
ちょっぴり意地悪な笑顔___
心の中にぽっかりと大きな穴が 空いてしまったような…
そんな気持ちになった。
こんな気持ちになったのは 初めてだ。
これが…『寂しい』って 気持ちなの…?
い、いやいや、そんなこと あるはず____
ない、よね?
そうだよ、そんなこと あるわけないって!
…いや、違う。
きっとそんな風に思い込んで、 自分を押し殺してるだけ__
…本当は、自分の口から、 自分の言葉で伝えたかった。
私が言った『ありがとう』は 悪魔に、届かなかった。
届かないことを知った上で、 言えた言葉だった。
『ごめんね』だってそうだ。
悪魔は謝ってくれたのに、 私は言えなかった。
たった四文字の言葉なのに。
もっと素直になれたら、 どんなに良かっただろう…。
そう思うと、今の自分が 途轍もなくカッコ悪く思えて
早く逃げ出したくなって、 無意識に足が動いた。
歩くスピードは段々と 速くなって…
ただただ、走った。
夢中で、無心で。
何かにぶつかりそうになって、 咄嗟にブレーキをかける。
しかし、あと一歩のところで 間に合わなかった。
ぶつかる寸前のところで その背中がくるりと回転して
後ろを振り向いた。
?
振り向いたのは 焼けた肌がよく似合う
野球帽を被った男の子__
そう思ったのもつかの間、
男の子を押し倒すようにして 二人一緒に地面に倒れた。