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私は私でいたいだけ

第1話 - 私は私でいたいだけ

2022年04月23日

#ファンタジー

#SF

#死神

#魔導学校

まろ

リンゴ

そんなところにいたのね

ツムギ

…あなた、この学校だったんだ

ツムギ

ほっといて

リンゴ

………

リンゴ

そんな傷ついた顔して

リンゴ

ほっとけるわけない

ツムギ

何それ？

ツムギ

友達でもないくせに

ツムギ

あたしに同情してるわけ？

ツムギ

あ、いい子ぶってるんだ〜

ツムギ

先生への点数稼ぎか

リンゴ

そんなこと…

ツムギ

じゃなきゃおかしいもんね

ツムギ

あなたみたいな人が

ツムギ

あたしを気遣う理由がないもん

リンゴ

何言ってるの？

リンゴ

ただ心配してるだけじゃない

ツムギ

そういうの、ウザいよ

リンゴ

………

ツムギ

誰も、あたしの気持ちを理解なんて出来ない

ツムギ

こんなに苦しくて辛くて

ツムギ

必死に必死に、もがいているのに

リンゴ

誰だって悩ましいのは同じ

リンゴ

自分だけが特別に苦しい、みたいな言い分はやめて

リンゴ

悲劇のヒロインぶるのやめたら？

ツムギ

あなたに何がわかるの？

リンゴ

わかるよ

リンゴ

決まってるでしょ、共通の認識

ツムギ

何もわからない

ツムギ

あなたしのことなんて

ツムギ

美人で優等生のあなたにはね

リンゴ

…つまりあなたは

リンゴ

自分に自信がないのね

ツムギ

………

リンゴ

私だってあなたと同じ

リンゴ

自分に自信なんてないよ

リンゴ

っていうか、基本みんなそうでしょ？

リンゴ

それに誰にでも不満はある

リンゴ

理不尽さも十分に味わってる

リンゴ

万全な状態なんてない

リンゴ

毎日が楽しくて

リンゴ

理想のまま、夢の生活を送っている人なんて

リンゴ

本当に世界の一部でしかないんだから

リンゴ

それこそファンタジーよね

ツムギ

………

リンゴ

私もしょせんは小さな家の娘…

リンゴ

どんなにチヤホヤされても

リンゴ

媚を売られても

リンゴ

私はただ、ずっと周りに合わせてただけ

リンゴ

空気を読んで

リンゴ

周囲のペースに合わせるの

リンゴ

異端者になりたくないから

リンゴ

一人だけ感性や考えが違って

リンゴ

省かれるのが恐い

リンゴ

それは誰だって同じでしょ？

ツムギ

…そうなの

ツムギ

じゃああなたも、臆病者なんだ

ツムギ

あたしと一緒で

リンゴ

そういうことになるかな

ツムギ

じゃあやっぱり、信用できない

ツムギ

あなたのことなんて

リンゴ

ねぇ

リンゴ

それは…どうして？

ツムギ

何がよ？

リンゴ

私のこと信用できないって

リンゴ

さっきからずっと言ったじゃない

ツムギ

そりゃそうよ

リンゴ

どうして？

リンゴ

（私が名家の娘だから？）

リンゴ

（他の生徒よりも優遇されてるから？）

ツムギ

…でも

ツムギ

信用できないけど、尊敬はする

リンゴ

…？

ツムギ

あたしさ、前に言ったよね

ツムギ

周りの奴らがみーんな

ツムギ

自分よりも、ずっと優れてるように見えるって

ツムギ

もちろんあなたもそう

ツムギ

あたしの出来が悪い…のは、認めるし

ツムギ

わかってる

ツムギ

あたしなんかに、才能も需要性もないってことは

ツムギ

でもそれ以上に、あなたたちはおかしい

リンゴ

おかしい？

ツムギ

そうよ！

ツムギ

なんで優秀で強いやつばっかなの？

ツムギ

クラスでも学科でも

ツムギ

ほとんど全員が名門出身のエリート

ツムギ

なんの夢もない…恵まれない家庭に生まれて

ツムギ

境遇や才能の差を見せつけられてるのは

ツムギ

あたしだけなのよ！

リンゴ

才能…

ツムギ

…そういうことだから

ツムギ

もういいよ

ツムギ

あたしなんかに構ってたって時間の無駄

ツムギ

あなたは早く予習でもしたら？

ツムギ

期待の優等生は

ツムギ

こんなとこで遊んでる暇ないんでしょ

リンゴ

本気でそう思ってるなら

リンゴ

あなたは間違ってる

ツムギ

あらそう？

ツムギ

別にあたしは

ツムギ

優秀なあなたがあたしを気にかけるのが嫌で…

ツムギ

なんか、ムカつくのよ

ツムギ

馬鹿にされてるみたいで！

リンゴ

馬鹿にはしてない

ツムギ

ふふふ

ツムギ

そんな蔑んだ目で見られて

ツムギ

馬鹿にしてないわけないでしょ？

リンゴ

………

ツムギ

それにね、欲を言うと

ツムギ

いい加減、自立して欲しいのよ

リンゴ

…？

ツムギ

あなたは死神だから

ツムギ

せっかく恵まれた才能があるんだから

ツムギ

自分の道を進んで欲しい

ツムギ

こんなところで立ち止まってないで

ツムギ

早く飛び立って

リンゴ

飛び立つ？

リンゴ

私はもうとっくに飛んでるよ

リンゴ

自分の道をね

リンゴ

思い切って挑戦したら

リンゴ

本当に少しだけ、前に進めそうな気がしたの

ツムギ

…そうなんだ

ツムギ

やっぱあなたは、優等生だ

リンゴ

ふふ

リンゴ

それはどうかな？

ツムギ

え？

リンゴ

私が本当に、才能なんか持ってるように見える？

リンゴ

本気でそう見えるのなら

リンゴ

あなたはまだまだ未熟者ね

ツムギ

…っ

ツムギ

なによ、上から目線に

リンゴ

でもあなたはまだ伸びる

ツムギ

え…

リンゴ

可能性はちゃんとあるの

リンゴ

だから諦めないで

リンゴ

どうかその手で、あの子を…

救ってあげて

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