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息を吸うたびに、
何か甘いものが、肺に残る。
僕に、こんな匂いは不要だ。
血と火薬と鉄の臭い。
それだけで十分なはずなのに、
今日に限って、鼻腔の奥に残るのは、
蜂蜜のような、柔らかい甘さだった。
_______喰え。
さっきから、僕の本能がそう囁いている。
あれから、随分と時間が経った。
第一次ウィーン包囲は失敗、第二次ウィーン包囲も失敗し、その後も彼と戦争をして、
共通の敵を通じて、敵だった彼に接近した。
甘い香りが、ほんの僅かに強くなる。
カップを置く音や紙が擦れる音などのなかに、
鮮明に、彼の声が聞こえた。
オーストリア
オスマン帝国
オーストリア
たまたま僕の隣に座っていた彼は、呆れたように僕にそうついた。
今は、会議中だ。
これからこの戦争だらけの世界に、どう向き合っていくか。
…どこで、どの国との戦争を起こすのか。
それを決める、会議。
オーストリア
オスマン帝国
彼の手が、僕の手に触れる。
思わず掴んでしまいそうな衝動をなんとか抑えて、
強い食人欲求を紛らわすように、自身の手を握りしめた。
暫くは、彼を支配下には置けないだろう。
だからこそ、余計に食人欲求は高まった。
抑制剤を飲んでいても、あまり効いていない気がする。
ここ最近は、他の蝶のフェロモンにすら反応しなくなってきた。
なのに、それに反比例するように食人欲求は高まっている。
もうかなりの時間我慢しているから、流石に食したいのだが。
やがて会議が終わりを告げると、隣の彼が僕に話しかけた。
オーストリア
オスマン帝国
オーストリア
オーストリア
オスマン帝国
…危ない。
これ以上彼と一緒にいたら、本格的に食ってしまうところだった。
オスマン帝国
聞いていなかった会議の内容を聞くべく、
僕は重い脚を、動かした。
オーストリア
オレは自室で、
ぽつりと呟いた。
会議中はずっとぼーっとしてるし、
オレが彼に触れるとすこし肩を震わせる。
…出逢ったときより、ずっとおかしい。
オレ、なんかしたかな。
なんであぁなってるのかの心当たりはある。
初めて会って道を案内した日。
オレ、すっごい体調悪そうだったから道案内しただけだったんだけど。
…あの時、何をおもったのか、
アイツはオレの腕に噛みついた。
まぁよくあることか、と思って見ないことにしたら、
案の定、記憶がないのかその後普通にオレと接してたし。
あと、墺土戦争。
飛んできた弾丸、あいつ守ってくれたんだよな。
理由はわかってる。
それに、意味なんてなくてもそっちのが都合がいい。
それはそうと...
…サラエボ事件について、だ。
オーストリア
オレは机に置いてあったコーヒーを飲み干した。