テラーノベル
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橙 。
今日もまた、彼女の向かいに座ってしまった俺に、
橙はフォークで小さく切ったモンブランを差し出してきた。
緑 。
橙 。
橙 。
ぶっきらぼうな言い方。
でも、その手元が丁寧すぎて、なんだか可笑しかった。
緑 。
口に入れると、栗の風味とふわふわのクリームが広がる。
緑 。
って、感想を漏らすと、彼女はほんの少しだけ口元を緩めた。
橙 。
橙の視線が、テーブルに置かれた小さな猫のぬいぐるみに移る。
店内を自由に歩き回る本物の猫たちとは別に、各席にはおまけのように飾られているものだった。
緑 。
橙 。
橙 。
橙 。
緑 。
橙 。
ふとした拍子に返ってきた、素直な声。
その一言がやけに印象的だった。
俺の知ってる橙は、教室の片隅で誰とも話さず、教師に質問にも「別に」と答えるような子だったはずだ。
でも今、目の前にいる彼女は_
緑 。
橙 。
橙 。
緑 。
思わず口から出した言葉だった。
彼女がこちらをじっと見つめてきた。
いつもの表情ではなく、驚いたような、それでいて少しだけ困ったような顔。
橙 。
緑 。
それにしても、こんな顔をする橙を、誰が想像できただろう。
モンブランを大事そうに食べる姿。
膝に乗せた猫を、優しく撫でる指先。
窓から差し込む夕陽が、彼女の横顔をオレンジに染めて_
なんだか、目が離せなかった。
緑 。
橙 。
橙 。
緑 。
橙 。
即答かよ、と笑いかけた瞬間。
橙の口元が、ふっとほころんだ。
その笑顔は、たぶん誰も見たことがない。
俺だけが、偶然手に入れた"秘密"。
甘いものも、猫と、優しい笑顔。
その全部が、橙の"本当"なんだと思った。
コメント
3件
え、好き過ぎる。 jpet好きだったけど、もう構成からやばい🤦♀️とえひこが不良ってのも分かるし、心情も丁寧に書かれてるし、書くの上手すぎない? 応援してます🔥