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何故 私は

こんな村に生まれてしまったんだろう

村長

では、しきたり通り17日の夜

村長

ここに来るように

あずさ

………はい

この村には、

コンビニも、スーパーも近くにない、

野生動物ばかりの 山の中にある小さな村。

それでも、村人みんな優しくて、

住みやすいとさえ思っていた。

今回私が「生贄」に選ばれるまでは…

あずさ

はぁ…

みゆき

お姉ちゃん、どうしたの?

みゆき

なんか最近、元気ない?

あずさ

…そんなことないよ

あずさ

大丈夫!

みゆき

そっか

あずさ

(みゆきには、心配かけたくない…!)

あずさ

ねぇ、みゆき

あずさ

一緒にケーキ作らない?

みゆき

…作りたい!

あずさ

材料買いに行こう

あずさ

ショートケーキでいいかな?

みゆき

うん!みゆきショートケーキ好き!

翌日

あずさ

(例の日まで、あと10日か・・・・・・)

みゆき

おはよう、お姉ちゃん

あずさ

おはよう

みゆき

お姉ちゃん、あのね

あずさ

どうしたの?

みゆき

…また、一緒にケーキ、作りたいな

あずさ

うん!いいよ

あずさ

昨日はショートケーキだったから

あずさ

今日はチーズケーキにしようか

みゆき

うん!

あずさ

(あの日までに、どうするか決めなきゃ)

あずさ

(いずれ、みゆきが生贄に選ばれるかもしれないんだ…)

あずさ

(村のしきたりを変えるか、あるいは………………)

みゆき

じゃあ、学校から帰ってきたら

みゆき

一緒に作ろうね!

みゆき

行ってきます!

あずさ

私も出発する時間だ

あずさ

母さん、行ってきます

母親

はい、気をつけて行ってきてね

あずさ

ねえ、母さん

母親

何?

あずさ

母さんは、生贄に選ばれたこと・・・ある?

母親

…私は、他の村から嫁いできたから

母親

生贄には、されなかったのよ

あずさ

そうだったんだ

母親

この村で、生まれた女の子しか

母親

選ばれないみたいね。

母親

…あずさ、生贄をやめてもいいのよ?

あずさ

・・・・・・

あずさ

今まで、生贄を辞退した人っているの?

母親

今までには、いなかったみたいだけど

母親

時代が変わったんだから、きっと村長さんも

母親

分かってくれるわよ

あずさ

(そんなわけないよ)

あずさ

(私、村の歴史を沢山調べたから知ってる。)

あずさ

(たった一人の高校生が どうにかできる問題じゃ、ない…)

あずさ

ちょっと、考えてみる

あずさ

色々と、思うことがあるから・・・

母親

そうよね

母親

もし、村の人に何か言われても気にしなくていいわ

母親

私は、あずさの味方よ

あずさ

うん

母親

お父さんも、そう言ってたわ

あずさ

分かった

あずさ

ありがとう…

私は嫌だった

どうしても、嫌だった。

昔からのしきたりとか、

今まで断った人がいないとか、

そんなのは どうでも良かった。

あずさ

私がもし、この村から逃げたとして・・・

あずさ

みゆきが18歳になったら、

あずさ

しきたりが続いている以上、きっとみゆきも…生贄にされるんだよね。

あずさ

それなら・・・

あずさ

(母さん、父さん)

あずさ

(それに、みゆき)

あずさ

ごめんね・・・私、決めたよ

17日 夜

村長

・・・遅い!

村長

今まで、生贄の儀式に遅刻をした者は、一人もいなかった

村長

前代未聞だ!

村人

家に、様子を見に行って来ます!

村長

もし、拒否したとしても

村長

力づくで連れてこい!

村人

分かりました

村長

(これは、お仕置きが必要だな)

あずさ

きっと、すぐにバレる

あずさ

それまでに、どこまで進めるか・・・!

私は 村から逃げ出した。

村人が、車で追いかけてくるかもしれない。

見つかれば、村に連れ戻されるかもしれない。

それでも、私はしきたりを素直に受け入れたくなかった。

あずさ

みゆき、ごめんね

あずさ

ごめんね・・・!

後悔があるとしたら

大切な妹にお別れも言わずに、飛び出してきたことだ。

もし逃亡に失敗したら、もう二度と会えないかもしれない。

あずさ

村はどうでもいい・・・

あずさ

家族を、あそこに残すのは

あずさ

心配だけど・・・

それでも私は、

夫でも恋人でもない男たちに

処女を差し出すこと…

それを「しきたり」としていることを、

絶対に許せなかった。

あずさ

お願い

あずさ

もし神様が本当にいるのなら、

あずさ

今回だけは、見逃してください…!

私は、山間の坂道を

自転車で登り続けたー

数時間後

あずさ

どこだろう、ここ

長時間、夜通し自転車で走ってきた。

とっくに村からは脱出していたが、

しばらく山道が続いていたので

現在地すら、よく分かっていない。

あずさ

ああ、そうだ

あずさ

市街地なら、スマホも電波入るんだったよね

スマホの現在地は 居住地から遠く離れた場所だった

あずさ

私、こんなに走ってきたんだ…

あずさ

あずさ

もしかして、逃げ切れた?

あずさ

まだ、油断はできないけれど・・・

念の為 スマホの位置情報をOFFに設定した。

あずさ

とりあえず、休憩したい

ようやく、今の状態に気づく。

あずさ

ああ、これ朝焼けか

あずさ

夕暮れじゃ、ないんだよね・・・

あずさ

あずさ

新しい朝の、はじまりだ・・・

お年玉貯金と、保険証、

スマホ、充電器、妹の写真だけは持ってきている。

あずさ

とりあえず、働き先を見つければきっと大丈夫

あずさ

それで、1日でも早く

あずさ

みゆきを、迎えに行かなきゃ

村のしきたりは、

村に生まれた少女が18歳になる日の夜、

村の若い男たちに処女を捧げるというものだった。

あずさ

今すぐ、みゆきが生贄になることはなくても

あずさ

村には子供が少ないから、

あずさ

いつ、みゆきが生贄になるかわからないんだ・・・

あずさ

生贄になる年齢が引き下げられるかもしれないし、

あずさ

すぐにでも、準備しなきゃ

私は高校卒業まで残り僅かだったが、

今までどおり高校に通ったら、村人たちに居場所を突き止められてしまう。

あずさ

あの村に戻るのは、絶対に嫌

高卒免許は、後からでも勉強さえすれば、取ることができる。

あずさ

私はもう、村の都合を押し付けられてまで生きたくない。

あずさ

厳しい規則と監視の目が無い所で、自分らしく生きる!

あずさ

とりあえず今は

あずさ

村に戻らずに済む方法を、考えなくちゃ

父さん、母さん、ごめんなさい。

そして、

あずさ

さよなら、昨日までの私。

数年後

あずさ

みゆき

えっ、ちょっと待って下さい!

あずさ

ほら、早く車に乗って

あずさ

あいつら来ちゃうよ

みゆき

みゆき

・・・あなた、誰ですか?

あずさ

お互い変わっちゃったから、

あずさ

分からないか。

あずさ

あずさ

あずさお姉ちゃんだよ、みゆき

みゆき

え・・・?!

あずさ

ほら、話の続きは車でしようよ

みゆき

どういうこと?!

あずさ

私はあの日、しきたりを破って村を捨てた

あずさ

どうしても、生贄になることに納得がいかなかったから。

あずさ

そして、あなたが生贄になることも阻止したくて、

あずさ

今までずっと、あなたを攫う準備をしてきたの

みゆき

そんな・・・

あずさ

いきなりこんな話して、ごめんなさい

あずさ

あなたも、小さかったから

あずさ

よく覚えてないことよね・・・

みゆき

ううん

みゆきは 私の車に乗り込んだ。

エンジンをかけ、みゆきがシートベルトを付けたことを確認し、すぐに出発する。

みゆき

私、嬉しいよ

みゆき

お姉ちゃんが、戻ってきてくれて・・・!

あずさ

みゆき・・・

みゆき

私ね、生贄をやめたお姉ちゃんが

みゆき

村長さんたちに殺されて、

みゆき

山のどこかに埋められてしまったんだって

みゆき

ずっとずっと、思ってた・・・

あずさ

そんな・・・!

あずさ

ごめんね、みゆき!

あずさ

心配、したよね

みゆき

みゆき

生きててよかった

みゆき

どんな形でも

みゆき

会えて、嬉しいよ・・・

あずさ

あずさ

寂しい思いさせたね・・・

みゆき

私は大丈夫だよ!

みゆき

ところで、お姉ちゃん

みゆき

今、どこに住んでいるの?

あずさ

村から、車で30分くらいのところよ

あずさ

あなたを見守ったり、村を監視するには丁度いい場所だったの

みゆき

そっか、だからお姉ちゃんの車はトラックなんだ。怪しまれないように

あずさ

そういう事

あずさ

もし誰かにバレそうになったら、他県から来たトラックで、道に迷ったことにするつもりだったの

みゆき

・・・これからは、お姉ちゃんと暮らせるの?

あずさ

そうだよ

あずさ

みゆきが、嫌じゃなかったらね

みゆき

嫌なわけないよ

みゆき

嬉しいよ…すごく

みゆき

また、ケーキ一緒に焼きたいな

あずさ

(あの時のこと、覚えていてくれたんだ・・・)

あずさ

うん、またケーキ焼こう

あずさ

あの時より、もっとレパートリー増えたんだよ

みゆき

お姉ちゃんはすごいなあ・・・

みゆき

何でも得意で、すぐに覚えられて…

あずさ

みゆきも器用だったじゃない

みゆき

そうかな

あずさ

そうだよ。

あずさ

・・・これからは、一緒にいようね

みゆき

うん。ずっと一緒にいる!

そして、私は懺悔する。

あずさ

お父さんと、お母さんのことなんだけど、

あずさ

あの時、駆けつけられなくて

あずさ

本当に ごめんなさい!

みゆき

・・・3年前に死んじゃったこと、

みゆき

お姉ちゃん、知ってたんだ

あずさ

あずさ

うん

この件については、恨まれても仕方ないと思っていた。

みゆき

二人とも、立て続けに病気になったんだけどね・・・

みゆき

村の人は、誰もお葬式に来てくれなかった。

みゆき

だから、

みゆき

私は絶対に生贄を頼まれても、やらない!って決めてたんだ

あずさ

そうだよね

あずさ

生贄なんて、誰だって絶対に嫌だよね

みゆき

だから、お姉ちゃんと会えて嬉しい

みゆき

お姉ちゃんは、私のヒーローだよ!

あずさ

ううん、大げさだよ

あずさ

私は一度家族を捨ててるんだよ?ヒーローなんかじゃない

みゆき

そんなことないよ

みゆき

私は確かに、救われたもん

みゆき

これからの人生、一人ぼっちにならずに済むから…

みゆき

だから、ありがとう

みゆき ごめんね

両親が亡くなった時に、そばにいられなくて。

葬式に顔を出せばあなたを助ける手立てが無くなってしまうから、

たとえ親の葬式でも顔を出すことが出来なかったんだ。

逃亡した私が村人たちに見つかれば、私だけでなく、みゆきにも危害が加わっていたはずだから。

みゆき

お姉ちゃん、改めて

みゆき

本当にありがとう。

みゆき

私を、生贄から…ううん、

みゆき

あの村から、救ってくれて

これからは、ずっと二人で生きていこうね

私の自慢の妹は

そう笑いながら呟いたー。

fin

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