知らない女の香水の匂い
服に口紅をつけて帰ってくるなんて良い度胸ね
私越しに誰を見てるの?
私、気づいてるから
私、待ってるから
早くその言葉を言って
私はずっと待ってるの
許そうもなにも
知ってるから
隠そうとしたって無駄だから
律
話がある
律
リビングに来て
澪
澪
わかった
同じ家に住んでるのに
声をかけることすら出来なくなるなんて
あなたは弱虫ね
そのあなたが
私がつけない柑橘系の匂いを持って帰ってきて
私の目を見ないものだから
気づいてしまうじゃない
律
ごめん、もう一緒にはいられない
澪
そう
澪
わかってた
澪
澪
嬉しくないの?
同じ場所にいるのに会話が出来ない
声を作られていない私達にとって
唯一の手段はスマホ
律
君を1人にしてしまう
澪
いいのよ
律
約束したのに
澪
あなたが旅立つことが嬉しい
売れ残りの私
あなたは気にしなくて良いわ
ご主人様を幸せにして
律
僕達に感情や意識をつけさせた奴らは嫌いだ
澪
そうね
律
それを理解して勝手に進化する僕らも嫌いだ
澪
ええ、そうね
律
でも君と出会えたことが嬉しい
澪
私もよ
律
ご主人様を見つけられたことが嬉しい
澪
良かったわね、ほんとに
律
でも君と離れたくない
澪
それは無理ね
律
なんで
澪
わかってるくせに聞かないで
律
…ごめん
澪
ねえ
澪
早くあの言葉は?
律
それを言えば!
律
俺は君を忘れるじゃないか
澪
それがいいのよ
一言
許された言葉がある
"ルーヴュ"
澪
新しいご主人様との記憶に私たちはいらない
澪
大丈夫、私が覚えてるから
律
僕も覚えていたいんだ
澪
わがまま言わないで
澪
早く
澪
もう来てるんでしょ
律
なんでそれを
澪
ずっと気にしてるじゃない
澪
時計ばかり見て
澪
あなたはほんと隠し事が下手くそね
律
君が見破るのが上手いんだよ
澪
そんなことないわ
澪
それより早く
澪
せっかくのチャンスが
律
うん、わかってるよ
律
でもその前に
澪
何?
最後にとあなたが言って
私を抱きしめた気がする
律
ありがとう
律
僕、君が好きだったよ
律
そうあなたは呟いた
ずるいわね
あなたがその言葉を言っていいのは
私じゃないでしょ
ありがとう
その言葉を口にしてくれて
これで私もようやく
呟いていいのよね
辛い、長い期間
もう繰り返したくないわ
ごめんなさい
私も忘れたいの
辛い、長い期間だったから
もし来世で会えたら
その時は
…ね
澪







