零桜

春は、出会いの季節と言われるらしい。

儚く散る桜がとても美しい登校初日。

これから広がる高校生活に心を踊らせながら 高校デビューを目指し、学園に足を踏み入れた俺はー．

………なぜか

クラスでぼっちです……

おかしい。異常事態が発生している。

高校デビューの為にめっちゃ垢抜けた…はず。 しかも日頃の勉強のおかげか、はたまたそもそも遊ぶ友人が居なかったからか、偏差値60の高校に入れた。

なら、この後の高校生活は輝いている筈では…！？

まずい、友達の作り方が分からない。

そんなのが思いつく訳もなく、 登校初日、俺は自己紹介だけしか喋らなかった。

重いため息をつく。

結局、何処の輪にも入れなかった……。

ため息が止まらない。

なんか話しかけられたんだが

その、柴田いるまと名乗る男は、 紫髪に、インナーで白が入った目立つ髪をしていた。 ツリ目でいかにもヤンキーって感じだ。

いや、絶対うるさいって程じゃ無いだろ…… と口にしそうになるのを慌てて止める。

ん…？あれ？意外といい奴…的な……？

前言撤回。こいつ絶対失礼な奴だ。

超失礼だなこいつ！？

なんで初日に最悪な事が、こう立て続けに起きる訳！？

あいつあれだ、おもしれー女って言う系の男だ。

そう思い、俺は校舎の裏へ向かった。

校舎裏は、思っていたよりずっと綺麗だった。

穴場、と言うのが正しいだろうか、 桜が満開に咲き乱れている。

ふと、そこに男の子がいる事に気づく。

桜の中だとよく目立つ空色の髪。 アクセントの桜色と青色のバランスがいい。

雫形の耳飾りをつけていて、 空色の瞳に何処か懐かしい童顔な顔立ち。

俗に言う、"美形"だろうか。

思わず口から溢れる言葉。 それに気づいた彼と目が合ってしまった

話しかけられた事に驚き少し身を震わせる。

声まで可愛い。なに、妖精か何か？？

……雨乃、こさめ？……、何処、かで……

何処か、懐かしい響きを帯びる。

何故か、目の前の君に会ったことがある気がする。 これは、気の所為、なのだろうか。

君が居たなら目立ちそうだし分かる気がするけれど

深く聞かない方がいいのかもしれない。

そうして俺は、新しい友人と街へ向かった。

でも君に名前を呼ばれた時、とても嬉しかったのは、 ストンっとハマった感じがしたのは、 一体何故だろう。

春の風が俺の頬を優しく撫でた。