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コメント
2件
初コメ失礼しますッツ!めちゃくちゃ表現の仕方好きです、、(泣)
rr
俺は、そうちゃろに呼びかける。 暑い日差しが、俺とてぃーの肌を焼いていた。
ちゃろの声は、ずっと綺麗だった。 ただ、綺麗だった。 きっと、ずっと綺麗なんだとも思う。
◯月☓日 昼
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兄さんの声は悔しいけど、綺麗だ。 器用に変化するその声が、色んな話や歌の色彩をつけていく。 ………………今思えば、その全ての言葉が嘘だとしても、それに気付ける人は誰もいなかったのだろう。
rr
割と、俺は兄さんを馬鹿にする。 その、3歳差という年齢差に不釣り合いなほどに、俺は兄を友達のように接していた。
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rr
声を被せて話の行く末を阻む。 ちょっとめんどくさかった
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一拍おいて、 ちゃろは話の方向を変えた。
rr
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rr
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しつこく話を続ける兄に 嫌気がさしてくる。
rr
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rr
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ずいっと、顔が近づく。 いくら冷房が効いてるからとはいえ、 やっぱり暑苦しい。
rr
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rr
暫くの沈黙が続く。
外と窓ガラスで遮断されたこの部屋は、適度な気温と、 静かな空間が守られていた。
その適度な環境を壊すのはこの緑頭だ。
しかし、 この緑頭を強く突き放すこともせずに 許容しているのはたしかに俺。
なんだかいらっとしてきたから、 自分の髪をちょっと引っ張る。
rr
灰色の髪が1本、手のひらに落ちた。
俺は自分の髪が、大嫌いだ。
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rr
このテキストは応用の問題集だ。 兄には前提条件さえも分からないだろう。
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rr
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rr
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たしかに一般的に考えれば兄が分かる、ということには 全く違和感を持たないだろう。
しかし、相手はあの「ちゃろ」だ。 あのちゃろが!? 高2用の問題集とはいえ、分かる!?
trp
rr
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俺の手にはぐちゃぐちゃになった解答があった。
rr
trp
rr
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兄さんが大学に行く行かない論争は、 家族内でかなり話題に上がった。
……兄さんと父さんと母さんが 会話をするくらいには、 3人にとって大事な話だったのだろう。
割と昔から、 あの3人には微妙な空気が漂っていた。
◯月☓日 夕方
部屋に静寂が訪れ、外からは元気な小学生の声が聞こえてくる。
そろそろてぃーが帰ってくる頃かもしれない。
rr
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rr
…ではないのかもしれない。
rr
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rr
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rr
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rr
じっと、こちらを見ている。
俺を見透かして、その先の遠くを見ているようで、なんだか、怖い。
この時だけ、そう、本当にこの時だけ。
俺は 兄さんの考えてることが分からない、 そう思った。
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何事もなかったように兄さんは笑った。
豪快に、いつものように。
ただ、笑顔で。
笑顔以外のなにも感じさせぬ様に。
俺は、いつものようには笑えなかった。
Til♀
階下から妹の元気な声が飛び込んでくる。
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Til♀
間延びしたてぃーの声。
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でれでれな声を発する兄。
これは本心か演技か。
rr
吐き捨てる様に告げた俺。
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喚きながら笑う兄。
Til♀
rr
Til♀
母
てぃーの声を遮るように、 部屋の外から遠慮がちな母の声が 聞こえてきた。
Til♀
rr
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Til♀
兄に引っ張られる様にして、 てぃーは歩いた。
Til♀
ころっと態度を変え、 天真爛漫に振る舞う妹。
これは演技かそれとも……………。
◯月☓日 夜
父
父の帰還。
tll♀
元気に声を返すてぃー。
rr
うちは同年代の子供に比べたら、父と子の関係は良い方だと思う。
trp
兄を除けば。
父
rr
父
rr
父はちょっと悩んだ顔をした末、 ちゃろにも言った。
父
ガタン。
父が言い終わる前に、 ちゃろは勢い良く椅子から立ち上がり、階段を駆け上がって自室に引き籠った。
父の声のトーンは、優しく。 でも決して、特別扱いした風ではない。 子供にとって理想の父にかけられる声 だったと思う。
不登校の息子なりの、コンプレックスでも刺激されたんだろうか?
少し、悲しそうな顔をして、父はうつむく。
rr
言い終わる前に、母が料理を運んできた。
ゆったりと、その美しい黒髪を翻す。
父が帰ってきてからは、もう母は一言も喋らない。
ただ、美味しいご飯と暖かいお風呂を用意して、片付けて、布団に入り母は眠る。
表情も変えずに、なるべく父を見ずに、ただ淡々と、ハイレベルな家事をこなしていく。
機械的な作業。
機械的な表情。
10年前の写真に写る母の面影は、疾うの昔に消えていた。
理解力があって、優しくて、しっかりしていて、大企業に勤めている緑色の髪を持つ父。
父の上司の娘で、夫と一切の会話を交わさない、黒色の髪を持つ母。
不登校で、出来の良い父との会話を拒む緑と黒の髪を持つ兄。
基本、普通のスペックの灰色の髪を持つ俺。
基本、笑顔で明るく振る舞うピンクと白の髪を持つ妹。
それが、俺達家族の歪な形。
………………何故?
何故俺の髪色は灰色になった?
一体、どこから?その遺伝子が??
何故、母親は父と言葉を交わさない?
なにか後ろめたいことでもあるのか?
何故、ちゃろは学校に行かない?
一体何が嫌だったのだろうか?
そして、何故それを父と母が聞かない?
何故、 「もう学校行かない」と言われた時、 母は納得したような、 もともとこうなると思っていた様な、 そんな表情をしたのか。
何故、てぃーは髪色がピンクと白なのか??
白はどこからきたのか?
歪だ。
歪んでる。
重い重い頭を抱えて、俺は今日も眠る。
ただ、母親の不倫に見て見ぬふりをし続ける日々に、少し。疲れていた。
その日の夜だった。
暑い暑い日だった。
昼間の蝉の鳴き声と、車の音が酷く煩く 耳にこびりついていた。
その、暑い暑い夜だった………………。
見せかけの全てが壊れたのは。
ふと、深夜に目が覚めて、 ベットを出た。
そうしたら、ちゃろの部屋から何かが軋む音と、声が聞こえた。
こんな深夜に何をしているのか、 という疑問と、 だから眠くなるんだよ、 といった呆れを抱きながら、 そっと扉を開けると、 そこには
××××をしている兄と父の姿があった。
驚いた様に目を見開いた後、 死んだ目でこちらを眺めて嘲笑している兄がいた。
その目が、全てを物語っていた。
rr
rr
父
父
焦る様子もなく、その腰を止める様子もなく、 ただ飄々と「父」 と呼ばれる存在はそこにあった。
ただ、鋭く胸が打ちはじめ、体中の血が抜けていく錯覚に襲われる。
rr
掠れた声が口から漏れる。
唇が歪に引き上がっていくのを感じた。
あぁ、なんだ。俺も歪なんじゃん。 そんなことをぼんやりしている頭の片隅で考えた。
父
一切躊躇いも躊躇もなく、 そのおぞましい言葉を口から吐き出した。
rr
俺は歪に頬の一辺を上げることしかできなかった。
その様子を見て、ちゃろは静かに眉をひそめていた。
父
ちょっと変な笑い方をして、朗らかに父はその単語を口走った。
そう、明らかに口走っていた。
変だな、と。ただそれだけ思った。
父が口走ったその瞬間、兄さんの手は動いていた。
ちゃろの手にはカッターが握られていて、それは父の横腹めがけて飛び込んだ。
しかし、その手はいとも容易く父の大きな掌に止められてしまって、鋭く握られ、ぎりっ、という嫌な音が漏れた。
じんわりと、慈愛の念を感じさせる笑顔で、父は優しく言葉を吐いた。
父
体中の毛が逆立つ感覚がした。
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精一杯力の限りを出したであろうちゃろの声は、掠れていて震えていて、ちゃろの顔は、ぐちゃぐちゃで歪に歪んでいて、昼間の面影は遠くに消えてしまった。
お調子者で、馬鹿で、まるで男子中学生の様なノリを繰り返している兄は、ここにはいなかった。
父
軽薄とも満面の笑みともとれる不気味な表情で、父は言葉を吐く。
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ちゃろの目は殺気立って、どこまでも鋭い鋭利な目で父を見つめていた。
父
父がふっと肩の力を抜いて、腕の縛りをほどいた。
ずぶっ
そういう、不快な気持ちの悪い音を立てて、赤色の体液が溢れ出した。
父は、最後の最後まで、その不気味な表情を崩さず、笑顔で冷たくなっていった。
結局、父の血は汚い訳だ。
理解のある父。
優しい父。
誇りの父。
そういった俺の描いていた父の姿が、その日、足元から崩れ落ちた。
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肩で繰り返し繰り返し息をする兄。
ゆっくりとした動作で、こちらを見る。
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ちゃろは、素早くその手元にある血に塗れた刃物で、自分の頸動脈を引っ掻いた。
真っ白なちゃろのシーツが、毒々しい赤に侵されていくのを、ただ呆然と眺めていた。
母
後ろには、いつからか母が立っていて、静かに、血の海を眺めていた。
夫と、「実の息子」の死体が転がっていようと、その顔に過去の暗さと明るさが戻ることは無かった。
………………その瞳には、無言の訴えが隠れ偲んでいたというのに。
耳鳴りが激しくなって、体の細部の感覚が、段々と消えっていった。
金縛りの様な感覚に脳を侵食されて、首筋に冷たい感覚を与え続けている力を振り払う気にもなれなかった。
ぼんやりと、視界におぞましい赤と、蛍光灯の黄色が混ざった。
脳内に、この15年間見ていた様々なちゃろの笑顔がフラッシュバックしていた。
その瞬間、 長い緑の髪に視界を占拠された。
感情を表さないはずであったその緑の瞳から、あたたかい涙がこぼれ落ちて、俺の頬を濡らした…………………。
視界が、赤色に染まった。
Til♀
その金縛りを解いたのは、てぃーだった。
この世で一番、この光景を見せてはいけない人だった。
rr
Til♀
rr
Til♀
rr
てぃるの困惑した声と、サイレンをBGMに、俺は冷たい体と血の海に、ゆっくりと横たわった。
そこからの記憶は、あんまりない。
ただ、今も、あの日のことは、俺等を苦しめている。
不気味な笑顔で死んだ父と、
諦めと憔悴の混じった笑顔で死んだ兄と
幸せそうな笑顔で穏やかに死んだ母が
今も俺等の脳を苦しめている訳だ。
rr
俺は、そうちゃろに呼びかける。
暑い日差しが、俺とてぃーの肌を焼いている。
ちゃろの声は、ずっと綺麗だった。
ただ、綺麗だった。
きっと、ずっと綺麗なんだとも思う。
だって、もう、記憶のなかでしか、ちゃろの声は聞けないから。
目の前の墓石から、元気な声が聞こえた気がした。