テラーノベル
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ラマンダーが光に溶けて消え 王の間には静寂が訪れていた
洗脳されていたリンゴ兵士達が 意識を取り戻す中
拘束された王弟リン・ゴメスが 膝立ちの姿で呻く様に言葉を絞り出した
その告白は 冷たい刃の様に場を切り裂き
王の間を一瞬で凍りつかせた
バナナ王国の家臣たちは息を呑み 兵士たちの槍先が小さく震え
誰1人声を上げられず ただ重苦しい沈黙が広がっていた
リンゴ姫は 父の姿を思い出し、目を潤ませ
声を噛み殺しながら バナナ王妃の胸に身を預けていた
バナナ王妃はリンゴ姫を抱き寄せ 衣を濡らす涙を、ただ受け止める
その姿を見たバナナ国王は 静かに視線を落とした
沈黙の奥にあるのは怒りか、悔恨か あるいは、ただの無言の誓いか─────
それは、誰にも分からない
その重苦しい空気の只中で 俺は静かに口を開いた
この言葉が王の間に落ちれば 空気が一瞬ざわめき
僅かな動揺が 壁や柱の影を伝って広がった
リンゴ姫の瞳は、ぱっと開かれ 希望の色が滲む
だが、王弟リン・ゴメスは信じず 膝立ちのまま、目を見開き声を震わせた
絶望と怒りが混じった声が 重い空気に反響した
家臣や兵士たちは武器を握り直し リン・ゴメスを断罪すべきと声を上げた
その顔には怒りと警戒が色濃く 鋭い視線が彼を射抜いている
─────だが バナナ国王は静かに首を横に振った
国王の揺るぎない決意が場を支配し 家臣たちの叫びも、次第に静まっていく
王弟リン・ゴメスの瞳は虚ろで 必死に現実を否定しようとしていた
俺は山小屋にいる爽と交信しながら 床に魔法陣を刻んでいく
リンゴ姫は息を呑み 俺の手元を目で追いながら、鼓動を早めている
希望の光と不安が入り混じり その瞳には、覚悟と期待が交差していた
魔法陣を刻む俺の動きに合わせ 光が揺らめき
王の間の緊張が、少しずつ変化していく
家臣たちの肩の力が抜け 兵士たちは微かに息を整える
膝立ちのままのリン・ゴメスは 胸を激しく上下させ
信じたくない現実が 彼の心を引き裂いているようだった
声は震え、言葉は掠れ 虚空に向かうように空しい
両手を拘束され 膝立ちで微かに揺れながらも
その視線は 魔法陣を刻む俺を追っていた
魔法陣を描き終え 俺は深く、深呼吸をした
王の間の緊張は消えず リン・ゴメスの虚ろな瞳が
じっと、俺を捉えている
リンゴ姫の手はまだ震えていて
バナナ王妃にしがみついたまま 小さく息を整えた
俺は小さく呟き、交信で爽と連絡を取る
そう言葉の後、魔法陣から光が滲み出し 王の間の薄暗い空気を淡く染めた
─────まるで 時間がほんの少しだけ緩む様な感覚…
リンゴ姫の瞳が光に反射し 微かに揺れた
希望と不安が交錯したその表情に 俺の胸も、静かに締め付けらる
次の瞬間
柔らかな光の渦が床から立ち上がり ゆっくりと空間を満たしていく
光の中で姿を現したのは 爽の腕に支えられた、リンゴ国王
リン・ゴメスは膝立ちのまま 目を見開き、言葉を失った
リンゴ姫の声が、震える王の間に響いた
希望の光が胸に差し込み 涙が頬を伝い
父の姿を目の当たりにして 震えていた小さな手が
バナナ王妃から離れ、自らの前に伸びる
俺はリンゴ姫に向かって 微笑むように告げた
柔らかな光の中 リンゴ国王はゆっくりとリンゴ姫に歩み寄る
爽は、リンゴ国王を支える腕の力を抜き
リンゴ国王は、父のしての温もりを リンゴ姫に伝える様に、両腕を広げた
リンゴ姫は 恐る恐るであるが自然と駆け寄り
父の胸に抱きつく
その瞬間
王の間にわずかに風が吹き抜けるかのように 舞う草の葉が光に反射して揺れ
淡い光の粒が空気にきらめき まるで、祝福のように二人を包み込んだ
リンゴ姫の声は震えているが その胸の奥には確かな喜びと安心が満ちていた
長く離れていた時間の痛みも、孤独も 抱きしめた瞬間の温もりにすべて溶けていく
リンゴ国王は優しく姫を抱き返し 微かに鼻先でその髪に触れた
今は亡き妻の匂いと同じような柔らかさが リンゴ姫の髪から漂い
リンゴ国王の心に 深い安堵と懐かしさを呼び覚ました
リン・ゴメスはその光景を見て 膝立ちのまま、硬直している
瞳には混乱と怒り そして、信じられないという衝撃が交錯していた
声は震え、膝から力が抜けそうになりながらも 両手はまだ拘束されたまま
絶望と怒りが入り混じり、目の奥には僅かに 認めたくない希望の光が瞬いていた
周囲の兵士や家臣たちも 抱き合う父娘の姿を見つめる
バナナ王国の家臣の眉は少し緩み 戦場の緊張は徐々に解け
王の間全体に 静かで柔らかな空気が広がっていく
俺は静かにその光景を見守り 召喚が成功したことを胸で確かめる
希望と安堵の中に漂う微かな緊張 まだ完全に納得できずにいるリン・ゴメスの瞳
王の間は、歓喜と葛藤、再会の喜びと 複雑な思惑が交錯する場所となった
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