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数日が過ぎ 戦の熱がわずかに冷めた昼下がり
リンゴ王国の城内は
分厚い石壁に囲まれた会議室は 昼の陽光をわずかな窓から取り込みつつも
重厚な厚いカーテンにより、薄暗く保たれていた
壁際に並ぶ燭台の蝋燭は 昼なお揺らめき
炎の赤金色が石壁に影を揺らし出し
その微かな明かりと 外界から切り離された静けさが
場にいる者たちの緊張を より深く際立たせていた
リンゴ国王が深く息を吸い込み 会議場の空気を震わせるほどに低く
重みをもった声を放った
その言葉は 石造りの会議場の壁に反響していった
……まるで、誰一人 逃れることを許されぬ、裁きの鐘のように
バナナ国王は静かに瞼を閉じた
一瞬だけ、確かに聞き取れた ─────友の声に滲む、痛み
────だが 瞼を開けばそこにいるのは「友」ではない
鉄の意志を纏った「王」そのものだった
その声は鋭く、重く 王座の間にずしりと沈んでいく
その言葉に、ざわ……と
会議場の端に並ぶ両国の家臣や護衛たちが 思わず視線を交わした
普段の二人を知る彼らにとって 今、目の前に立つ二人の「王」の姿は
あまりに、異質だった
常に穏やかで、民を気遣い 時に軽口すら交わす、二人
その面影は影もなく…今、漂うのは 刃のような鋭さと胸を圧する威圧感のみ
息を呑む音さえもはばかられるほど 場の空気は張り詰めていた
リンゴ国王はうつむき、言葉を絞り出す
重い沈黙 蝋燭の炎がゆらりと揺れる
その僅かな揺らめきですら 大きな衝撃の前触れのように感じられた
バナナ国王は指先を固く握りしめ 拳が微かに震えている
だがその瞳には、燃えさかる激情ではなく ─────冷たく、深い覚悟が宿っていた
低く響く声が 会議場にいるすべての者の胸を貫いた
その言葉が空気を切り裂いた瞬間 場に漂っていた緊張がほんの一瞬、緩んだ
だが、それは決して安堵ではない
嵐の前に訪れる あまりにも静かな気配────
護衛たちでさえ、無意識に喉を鳴らし
剣の柄に手を寄せるほどの緊張感が なお場を覆い続けていた
リンゴ国王は 会議場に満ちる沈黙を切り裂くように
重々しく言葉を発した
ざわ……と 左右に並ぶ家臣たちが小さくざわめいた
それもその筈…… 誰もが処刑を予想していたからだ
だが、国王の声には揺るぎなき決意と わずかな痛みが滲んでいるのに気付き
ざわめきは静まり、耳を傾けた
リンゴ国王の拳が膝上で固く握られる
口にする度に 胸を裂かれる思いであることは
誰の目にも、明らかだった
弟を愛する兄としての心と 王としての冷徹な決断────
その二つが、彼の声の奥でせめぎ合っていた
バナナ国王は 深く息を吸い、静かに瞳を伏せる
一瞬、場に重く冷たい気配が落ちる
リンゴ国王は、短く頷く
それ以上言葉を紡げば 胸中の痛みが溢れ出してしまうと知っていたから
リンゴ国王は立ち上がり 堂々とした声で応じた
両国の王が視線を交わした瞬間 場に漂っていた緊張がふっと解ける
だがそれは、甘い安堵ではない
───血と涙を越えて なお、未来を繋ごうとする
鋭く張り詰めた、誓いの結び目であった