テラーノベル
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手首に嵌められた冷たい輪は、最初こそ恐怖の象徴だった
だが、いつの間にかそれは「安心」の証になっていた。 ジェルに繋がれているからこそ、自分はここにいていい。 そう思えるようになっていた。
監禁生活は季節を跨いだ
外の世界との繋がりはすべて断たれ、 残されたのはジェルの笑顔と声と、鎖の音
それだけで日々は回っていく
朝はジェルに起こされ、食事を共にする
昼は鎖の届く範囲で過ごし、ジェルの帰りを待つ
夜は互いを確かめ合い、熱に溺れる
その繰り返しの中で、心は少しずつ変化していった
「外に出たい」という思いはやがて、 「外に出るのが怖い」に変わったのだ。
ある日、ジェルがぽつりと告げた
かちり、と金属の音がして、手首が解放される
久しぶりに鎖のない感覚に、おれは一瞬安堵した
けれど、すぐに胸の奥がざわめいた
何かが足りない
自由になったはずなのに、不安でたまらない
ジェルが席を外す
たったそれだけで心細さが押し寄せ、体が震えた
ベッドの上で膝を抱え込み、おれは声を押し殺す
そして、戻ってきたジェルの顔を見た瞬間、 堪えきれずに口を開いた
自分から求めてしまった。
ジェルの瞳が大きく揺れ、次いで蕩けるように細められる
頬を撫でられ、キスを落とされる
再びかちりと音がして、手首に冷たい輪が 戻ってきた瞬間、胸が安心で満たされる
涙が溢れるほどの安堵だった
夜
ジェルは何度も確かめるように抱きしめ、 何度も口づけを交わしてくる。
肌を擦り合わせ、熱を分け合い、囁き合う
甘く、苦しい
繋がれたまま、鎖が揺れるたびに、 愛と快楽の証が部屋に響く
痛みも羞恥も、すべてが「俺はジェルのものだ」と いう実感に変わっていった
やがて絶頂に達し、汗まみれで 抱き合ったまま、二人は息を整える
ジェルの胸に顔を埋めながら、 かすかに笑った
その言葉にジェルの瞳が潤み、 強く抱き締められる
それからの日々、鎖は決して外されることはなかった
おれはもう、それを望まなかった
自由を捨て、檻の中で愛されることを選んだのだ
外の世界がどれほど広がっていても、もう関係ない。
この部屋、この鎖、この腕の中
それこそが、二人にとっての永遠の世界だった
Merrybadend
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