うり
端末を開いてやってくる通知の数々。
『素敵です!』『カッコイイ!』等のいつもと変わらないコメント欄。
俺はなんで歌ってるのか分からなくなる。
そりゃもちろんリスナーを楽しませるためだったり、
気分転換だったりするのだが。
いつもイマイチパッとしない。
とりあえずやってる感が凄い。
たまにコラボするのあとの動画や、みんなとやる撮影は楽しい。
でも、なにか足りない気がした。
うり
口に出してみれば、体の奥へと言葉が染みる。
本当に足りないものってなんだろうか。
みんなが言う、なんでも出来る俺って誰なのだろうか。
リスナーが求めているものはなんなのか、
俺が思い描く将来って明るいのか。
そんな疑問をポンポンあげては、相手のいない返答を待つ
俺は1人なんだ。
今も、今までも。
きっと、これからも。
何をするにもずっと1人なんだ。
昔から変わらない事実に目を背けてきて笑い続けてきた。
そうやってみんなと笑うのも、何時まで続くのだろうか。
分からない疑問、返らない過去、返答。
事実だけじゃなく、今いるこの時間にも目を閉じて眠りに落ちる。
心の中でなにかが止まった気がした。
ヴ-、ヴ-
うり
睡眠中に鳴るスマホ。
眠気眼を擦りつつ見つめる先に、優しい女性の声が響く。
のあ、えと、るなとは違う、
少し弱いけど優しく暖かな声色。
どこか悲しい雰囲気が、曲にあってて綺麗に鳴り響く。
うり
知らない少女が歌うからくりピエロが暗い部屋の中で聞き入っていた。
綺麗だ…綺麗だった。
暗い画面から鳴る声、小さな鼓動が鳴り響く。
少しずつ惹かれていく。
何度でも聴きたくなる。
手を伸ばしたい、届くようになりたい。
悲しそうな歌声の裏の楽しそうな笑う声も聞いてみたい。
その子が笑うところを…この目で、この耳で
シオン
通知でなり続ける端末に驚き、落としそうになる。
何となく歌って見ただけなのに来る大量の通知。
いいねとリツイートの数々と共に、褒め言葉と侮辱するようなコメントが流れてくる。
どんな風に思われてもいい。
もし、このままあの人まで届いたとしたら
そんな浮かれた思考に溢れていく。
楽しくなった。
続けたくなった。
彼は、同じ気持ちで続けているのだろうか。
こんな私の歌声に動かされる人がいるのなら、続けたいと思った。
歌うだけじゃない、彼に届くのなら、書くことも。
からくりが動かなくなってしまうまで、
動かなくなってしまっても、もう一度動かしてみせるから。
この鼓動も、もう一度動かせたら…自分のカラクリも変われる気がした。
主
シオン
主
うり
主
主
主
うり
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