玲奈
拓海
体調を崩した玲奈が部屋からメッセージを送ってきた。言われた通り冷蔵庫を開けるとよく冷えたミネラルウォーターがあったので、玲奈の元に持っていった
部屋に入ると、玲奈はベッドにいて、ありがとうとペットボトルを受け取ると、またすぐに寝込んでしまった。
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
海斗
こんな風に、あまり良くないとは思いつつも、玲奈が寝込むたびに友人である海斗には連絡してしまう。
拓海
玲奈
拓海
今日は比較的落ち着いているらしい。 玲奈は線も細く、病弱とも捉えられない外見だが、もともとバスケを長いことやっていて、体力もある方なのだ。
今夜あたりは2人でゆっくり過ごせそうだし、寝込んでいる間はろくに食べていないだろうから何か美味しいものでも一緒に食べたいところだ。
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
海斗
海斗
早速、リンクが送られてきた。開くと確かに良さそうなお店だ。そして、玲奈は確か小籠包が好きだったような。
ついでに、今朝の通知が来てたストーリーもチェックすると、昨日はスーパームーンだったようで、白くくっきりとした月と夜空を映した投稿が多かった。
家に着くと、玲奈は台所に立っていた。
玲奈
拓海
玲奈
拓海
玲奈
玲奈がちょうど作っていた主菜もどうやら中華風のものらしく、かなり都合が良かった。
玲奈
拓海
おそらく先程買ってきた小籠包の梱包を解くときに使ったハサミの使い方を指しているのだろう。
玲奈と付き合うようになってから、何か片手で作業をするときには、必ず手元を見られる。そしてそれを見て目をまん丸にして驚くのだ。
あまりはっきりとは覚えていないが、小学生の頃から両利きであることがハンディキャップに近かった。それもほとんど突発的に利き手が変わったため、両親も不思議に思い、病院で検査を受けたのも苦い思い出だ。結果何一つ原因はわからなかった。
玲奈
拓海
玲奈
拓海
玲奈
この手の話は昔を思い出すようでとても気分が悪くなる。違う話でも振ろう。
拓海
玲奈
拓海
玲奈
拓海
玲奈
また、会話が戻ってしまった。とはいえ玲奈も機嫌が良さそうだし言ってしまえば病み上がりのようなものなのだから今日は話に付き合うとしよう。
拓海
玲奈
拓海
玲奈
拓海
玲奈
玲奈はそう言うと、先ほどとは打って変わって、今にも泣き出しそうだ。
拓海
人生で初めて付き合い、そしてもうすぐ入籍も控えている、それが今の玲奈という彼女であり結婚相手なのである。これからのことも考えると、こういう不安材料は早いうちにお互いの理解の中で解消していきたい。
玲奈
拓海
玲奈
しばらくハグをして、自分の肩はすっかり玲奈の涙で濡れていたが、その分お互いのわだかまりが消えた証のように思えた。
玲奈
拓海
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
拓海
海斗
海斗
拓海
海斗
拓海
海斗
拓海
拓海
自分が人の親になるというのはなんだか不思議な話である。
昔、父親と秋祭りに行った時のことである。その日は満月だった。
満月がいつまでも自分の頭上にいるようでずっと眺めていると、手を繋いでいたはずの父とはぐれてしまった。祭りの人混みの中、お父さんお父さんと何度も叫びながら右往左往していた。
誰もいない細い路地裏を通り抜けると、ようやく父の背中を見つけた。慌てて駆け寄り、元通り父の左手を握って違和感を感じた。
左手にあったはずの指輪がないことに。父は、我が息子が再び手に触れたのを見て、少しホッとしたような表情を浮かべていたが、
お父さん、どうして指輪外してるの?
という息子の驚いた表情とその問いかけには、少し不思議さを覚えたようだったが、ちゃんとここにしてるよと右手の薬指をみせてくれた。
あの祭りの帰りから、世の中の一切が反転してしまった。
まずは鏡文字になってしまった文字がほとんど読めなくなった。右利きでは処理できないことが多くなり、左利きに合わせなければならず、文字の習得も遅れた。
しかし、慣れというものは人間の順応度を抜群に上げる。この世界の違和感に気づいているのは自分だけだろうと確信できた。もしかしたら、親もそういう息子に異変には気づいていたのかもしれない。
改札も当然左側、トイレのウォシュレット操作ボタンも左側、家のドアは左開き。日常の動作をすればするほど違和感を感じる。
でも、それも遠い記憶だ。そういう違和感も感じず、今日まで生きてこれた。それは自分を育ててくれた周りの人間のおかげだろう。
これからは、玲奈とも、そして生まれてくる命も共に強く生きていきたいと思う。
玲奈
玲奈は息も絶え絶えと言った様子で、大きく息をしている。
拓海
かなり苦しそうな玲奈を見るのは苦痛だったが見届けねばならない。 そっと、布団を退ける。
拓海
拓海は目の前の光景に思わず声を漏らす。しかし、それは喜びがこぼれ落ちる声だった。
シーツの上にはびっしりと、卵があった。玲奈の身体から産卵されたものである。
ベッドルームの窓から月光が差し込み、その光を浴びた卵はキラキラと宝石のようにに輝いていた。
外では天高く、満月が。それは反転した世界をも喜びに満ち溢れさせた。
コメント
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初めての作品にも関わらず、いいねたくさんいだだいて身に余る思いです。もしよろしければコメントで改善点やダメ出しいただければ幸いです!次作に繋げたく思います。 また、おこがましいですが、フォローなどもしていただけると大変助かります