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数分後 【馬車の中】

カタンカタンッ

カタンカタンッ

セオドア

シゼ、暑くない?

セオドア

馬車の中ではフードを取って大丈夫だよ

シゼ

あっ、はい…

シゼ

すみません、取るのを忘れてました。

セオドア

そっか。

ぱさっ。

(シゼがフードを取る)

セオドア

今日は本当に暑いね。

セオドア

喉が渇いたらすぐにルドルフに言うんだよ?

シゼ

はい。

シゼ

ありがとうございます。

シゼ

(セオドア、優しいな…)

シゼ

(奥さんにもこんな風にいつも優しくしているのかな…。)

シゼ

(いや)

シゼ

(大事な人だから私よりもっと優しく扱われてるのかもしれない…)

シゼ

…。

シゼ

!…

シゼ

(…て、いけないいけない!)

シゼ

(もうセオドアのことは考えちゃダメ!)

シゼ

(だめだめだめ!)

セオドア

セオドア

!…。

(セオドアが馬車の窓から 街の様子を見る)

セオドア

……これが、ギリカールに占領されたクリジアの町か。

セオドア

いささか、奴隷が多すぎるような気がするな…。

ルドルフ

あー、確かに多いね。

ルドルフ

ローゼ女王が出した政策のせいかな?

セオドア

!、それは

セオドア

ギリカール人が育てた奴隷を、

セオドア

国が高値で買い取るというあの政策か?

ルドルフ

そうだね。

ルドルフ

ローゼ女王はクマイド王を倒すため、

ルドルフ

たくさんの兵士を必要としてるみたい

ルドルフ

特に先月の戦いでは、

ルドルフ

3万も兵士を送ったのに5000の兵士に完敗してるから、

ルドルフ

今は少しでも多く搾り取ろうと、

ルドルフ

ギリカール人にクリジア人を沢山飼わせようとしているみたいだよ。

セオドア

クリジア人を飼わせる…

セオドア

実に恐ろしい考え方だな

セオドア

志願兵を募集するという発想はなかったのだろうか?

ルドルフ

そんなことしたら5人くらいしか集まらないよ?セオドア

ルドルフ

クマイド王は

ルドルフ

神の生まれ変わりと言われるくらい強いんだ

ルドルフ

そんな異名をつけられるくらい強い男に育てられた

ルドルフ

戦い大好きな猛将集団と戦いたいなんて変わり者

ルドルフ

世界中探してもほとんどいないよ。

セオドア

なるほど…。

シゼ

セオドア

だとすれば

セオドア

長い間、

セオドア

クマイド王の国と親密な関係を結んでいた

セオドア

クリジアにを占領したのは

セオドア

ギリカールにとって良くない選択だったのかもな。

ルドルフ

そうだね〜。

ルドルフ

ルドルフ

あ、そういえば

ルドルフ

シゼちゃんのお母さんって

ルドルフ

クマイド王の国とも面会したことがあるんだよね?

シゼ

…。

シゼ

ルドルフ

シゼちゃん?

シゼ

!ハッ

シゼ

(あ、やばっ!話聞いてなかった…)

シゼ

あ、あっ…は、はい

シゼ

そうですね、はい!

ルドルフ

カタリナ・バイロンさんだっけ?

ルドルフ

すごいよね〜。

ルドルフ

財政のことについて自伝の本を出して

ルドルフ

各国の王室から助言を求められるくらい偉い人がお母さんだなんて

ルドルフ

俺、教科書見た時びっくりしたもん

ルドルフ

“あっ!シゼちゃんのお母さんだ!”って

シゼ

あはは…そうなんですね。

シゼ

私も、びっくりしました…。

セオドア

…。

セオドア

セオドア

(シゼ、どうしたんだ?)

セオドア

(何か様子がおかしい気がする…。)

数十分後

ルドルフ

シゼちゃん、ここは右?左?

シゼ

右です。

ルドルフ

おっけー、

ルドルフ

ルドルフ

おじさーん、右だってー!

 

 

カタンッ!

(馬車が止まる)

ルドルフ

ルドルフ

よーし、着いた。

ルドルフ

ねぇねぇ、シゼちゃん

ルドルフ

ここから歩いて数分のところにシゼちゃんの家のお店があるんだよね?

シゼ

はい。

シゼ

店が移転してなければ、ここから歩いて3分ほどで着きます。

ルドルフ

おっけー。

ルドルフ

じゃあフードかぶって降りよっか。

ルドルフ

よいしょっ。

ルドルフ

ルドルフ

と、

ルドルフ

セオドア、

ルドルフ

俺、今から馬車の運転のおじさんと話してくるけど

ルドルフ

絶対にフード外しちゃダメだよ。

ルドルフ

お前、結構有名なお坊ちゃんなんだから

ルドルフ

明日の新聞にのりたくないなら深くグイッって被っておいてね、分かった?

セオドア

言われなくてもそれくらい分かってる。

セオドア

俺をいくつだと思ってるんだ。

ルドルフ

俺としては心配なの!

ルドルフ

いい、ちゃんと待ってるんだよ?

セオドア

わかった。

シゼ

…。

シゼ

シゼ

(久しぶりだ…クリジアの町)

シゼ

(もう何年ぶりだろう。)

シゼ

(昔より随分と廃れた気がするけど、)

シゼ

(幼少期の時に見た面影がまだしっかりと残ってる。)

シゼ

…。

きょろきょろ… (シゼが周囲を見回す)

セオドア

セオドア

(ふふ、)

セオドア

(今のシゼ)

セオドア

(真っ白なフードをかぶってるからか、白ウサギのように見える…)

シゼ

…。キョロキョロ

セオドア

ふふ。

セオドア

本当に子ウサギみたいだな…。

シゼ

(うわ〜懐かしい)

シゼ

(やっぱり前世と同じで)

シゼ

(ふるさとって落ち着く〜…)

きょろきょろ… (シゼが周囲を見回す)

 

ガシッ!

(突然7、8人の男達が シゼの腕を掴む)

シゼ

ひゃうっ!?

セオドア

 

おい!

 

この女、やっぱりクリジア人だ!

 

今なら誰もいない、はやく拠点へ連れてくぞ!

シゼ

えっ、ちょっ…むぐっ!?

 

早いとこ連れてけ!!

シゼ

んんんーっ!?

セオドア

シゼ!

セオドア

おいやめろ!

セオドア

その子から離れろ!

バッ!

 

ぐあっ!

(セオドアがシゼに群がる男達を掴んでシゼから剥がす。)

ドガッ!

バシッ!!

 

ぎゃぁあ!

 

うわぁあ!!

セオドア

セオドア

シゼ!

セオドア

早くこっちへ!

シゼ

シゼ

セオドア様!

タタッ!

(シゼが隙をついて セオドアに駆け寄る)

セオドア

大丈夫か。

セオドア

僕の後ろに隠れてて。

セオドア

絶対に離れちゃダメだよ。

シゼ

は、はい…。

セオドア

…。

 

!…

 

兄貴、どういたしましょう。

 

どうやらあの女、“同業者”付きのようです。

 

ああ…そうみたいだな。

 

おまけに、あの男のせいで周りが俺達に気づいちまってる。

 

 

だが…。

シゼ

?…

 

アレはいい素材を持っている。

 

市場に出せば、高く売れるに違いない。

 

 

ここは穏便に取引するとしよう。

 

!、了解しやした

 

 

そこの方、どうもごきげんよう〜!

セオドア

シゼ

 

ふふ、目が合いましたね?

 

ワ・タ・ク・シ、ギリカールで商売をしております。アレキサンダーと申します。

 

先程はそちらの“商品”が貴殿のものとは知らず手出しをしてしまい、

 

大変失礼致しました。

セオドア

セオドア

“商品”…?

 

そちらのクリジアの女のことですよ。

 

見たところ肌も白く、肉付きも良い

 

幼い頃から丁寧に育てた特上級の奴隷かと思われますが…

 

ここはどうでしょう?

 

ワタクシと取引をしませんか?

セオドア

は…?

シゼ

?…

 

私が8000ゴールドをそちらにお出ししますから

 

そちらの奴隷をワタクシにお譲りいただけないでしょうか?

セオドア

?…。

シゼ

!?

 

おや?もう少しいりますか?

 

では8600ゴールドでどうでしょう。

シゼ

!…

シゼ

(え、何このキモいおじさん)

シゼ

(私を奴隷だと思って、セオドアから買い取ろうとしてるの…?)

シゼ

シゼ

こ、

シゼ

こわい…。

セオドア

!…

 

 

まだ黙り込みますか。

 

…わかりました。

 

では12000ゴールドで、買いましょう

 

 

さぁ、いかがです?

 

その奴隷の、整った顔

 

傷ひとつない肌

 

そして

 

艶のある絹のような髪質からして

 

貴殿は

 

よほど手間暇かけてお育てになられたのでしょう…?

 

上質な奴隷を手放したくないのは

 

同業者のワタクシにもよく分かります。

 

ですから

 

私はその痛いほど分かるお気持ちを汲み取って

 

その奴隷を12000ゴールドで買い取りたいのです

 

 

さぁさぁ

 

はやくお渡しください

 

近場の奴隷市場でも

 

10000を超える金額を出す商人はこのワタクシしかいませんよ?

 

これは、

 

 

貴殿のその手間が思う存分報われるチャンスだと思いませんか?

シゼ

ひっ…

シゼ

シゼ

セ、セオドア様…たすけて…。

セオドア

…。

セオドア

セオドア

セオドア

そうかそうか…

セオドア

この子を持つ俺の気持ちが、痛いほど分かるのか

セオドア

そこの商人よ。

シゼ

シゼ

えっ…

 

 

ええ、ええ!分かりますとも

 

だからはやくその奴隷を

スパッ!

ブシュッ!

(セオドアが剣を取り出し 商人を膨らんだ腹を切る)

 

ヘッ…!?

ガシッ!

(セオドアが商人の胸ぐらを掴む)

セオドア

セオドア

…なら。

セオドア

お前の顔面をぐちゃぐちゃにしてやりたいという俺の気持ち、

セオドア

…分かってくれるな?

 

!…

(商人がフードの隙間から セオドアの顔を見る)

 

お、おお…!?

 

そ、その…紫の目…まさか?!

セオドア

この女は奴隷ではなく、

セオドア

俺の大事な友人だ。

セオドア

人の友人に無礼を働いたこと…あの世できっちり償うがいい。

 

ひぃいぃい…!?

 

外交補助官様…おゆるし

 

 

ぐお゛ッ!!?

ズバッ!

(セオドアが鞘に入ったままの剣で 男の首元を切る)

セオドア

おっと、

セオドア

俺の名前を知っているのか。

セオドア

なら記憶がなくなるまでやるしかないな。

 

あ、兄貴…!

 

ッ、テメェ…!

 

どこの誰だか知らねぇが覚悟しやが…

セオドア

ルドルフ。

ルドルフ

はぁーい。

バコッ!

(背後から現れたルドルフが 男を気絶させる)

 

ガバッ!?

ルドルフ

初めまして残念なおじさん

ルドルフ

ここからはこのオレが

ルドルフ

可愛いお嬢さんの代わりにお相手してあげるね?

 

ぁ…が…ッ…!

ルドルフ

セオドアー、周りの人の視線がすごいよ、俺らw

ルドルフ

どうする?逃げる?

ルドルフ

それとも見せつけちゃう?

セオドア

そんな手間はいらん。

セオドア

この男達は俺がやる。

セオドア

お前はシゼをつれて下がってろ。

セオドア

悪い奴には指一本触れさせるな

セオドア

わかったか。

ルドルフ

ん、

ルドルフ

了解。

シゼ

セ、セオドア様…。

セオドア

セオドア

シゼ、ちょっと待っててね。

ルドルフ

大丈夫、シゼちゃん?

シゼ

は、はい…。

シゼ

シゼ

あの、

シゼ

セオドア様、大丈夫でしょうか…?

ルドルフ

大丈夫だよ。

ルドルフ

あんな野郎共に潰されるほど、俺の主人は弱くないから。

シゼ

そうですか…。

シゼ

だといいんですけど。

ルドルフ

うん。

ルドルフ

セオドアの剣術をみてる俺が言うんだから間違いないよ。

セオドア

セオドア

悪い、遅くなった。

シゼ

!、セオドア様。

セオドア

シゼ、おまたせ。

セオドア

大丈夫?怪我してない?

シゼ

は、はい、大丈夫です。

セオドア

そっか、

セオドア

よかった…。ニコッ

シゼ

きゅん…

シゼ

(なんなの…セオドア)

シゼ

(さっきの怒った顔からは想像できないくらい優しい顔するじゃん)

シゼ

(振り幅ありすぎでしょ…)

シゼ

シゼ

(おまけに、ひとりで私を守ってくれて…)

シゼ

シゼ

(…かっこよすぎるよ。)

シゼ

シゼ

(こんなこと好きな人にされたら)

シゼ

(諦められないじゃん…)

シゼ

(本当はだめなのに…。)

16話 おわり

とある物書きの挑戦譚 【第三期】

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コメント

4

ユーザー

執筆お疲れ様です🙇‍♂️🙇‍♂️ セオドア様が格好よすぎます!!!!!!! 「その紫の目は…」は全細胞が湧き上がりました… これは惚れるなって言う方が無理です…💘💘 寝ながら読んでいたんですが、気付けば起き上がってました… 本当にお話の書き方上手すぎます…………

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