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お嬢
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HISAKI𓃠
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10件


戻ってきた俺は、消えかけた自分の体を見つめながら、隣に浮かぶ小さな男の子の天使に向かって、ずっと胸に引っかかっていた疑問をぶつけた
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
天使
天使は何も答えず、ただそっぽを向いて少しの間、黙り込んでしまった
いつもなら生意気に煽ってくるはずの小さな背中が、どこか寂しげに揺れている
俺はその背中を見つめ、一歩も動かずに踏ん張った
ゆあんくん
俺の真っ直ぐな言葉に、天使はさらに顔を背け、静かな闇の中にぽつりと、掠れた声を落とした
天使
ゆあんくん
天使
俺が核心を聞きかけようとした瞬間、天使は話を遮るように強引にパチンと指を鳴らした
まばゆい光が収まると、そこはもふの部屋だった
部屋の中にはもふだけでなく、シヴァの姿もあった
2人は並んで机に向かい、真剣な表情でパソコンの画面を見つめている
俺はそれを見て、少し寂しそうに、でもホッとしたように微笑んだ
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
しかし、天使はピクリとも動かない
それどころか、いつも以上に冷たく、酷く悲しそうな瞳で2人の背中を見つめていた
天使
天使
天使
ゆあんくん
俺は言われるがままに耳をすませると、スピーカーから、動画の中で元気に喋っている自分の声が聞こえてきた
しかし、2人が流しているのは普通のだけでは動画ではない
動画が始まる直前の、カットされるはずの、メンバーのガヤや俺の他愛ない呟き
2人は無言のまま、何度も、何度も、その数秒の音声だけを巻き戻しては流し続けている
その瞳は完全に光を失い、焦点が合っていない
フフ、とゆあんの耳元まで浮いてきた天使が、静かに、残酷な現実を告げた
天使
壊れるよ
ハッと目を見開く俺
冷静に見えた2人は、前を向いているのではなかった
俺を失った現実を受け入れられず、誰にも頼れず、2人きりの空間で狂ったように俺の残像を追い求め、今にも限界を迎えようとしていたのだ
ゆあんくん
俺はもう腕の無い体を、全ての想いを込めてパソコンの画面へとぶつけた
神様から貰った『憑依の力』を使い、モニターの中へと魂を移す
そして、2人が見つめている画面のメモ帳を、強制的に開いた
カタカタカタ、と誰も触れていないキーボードの音が部屋に響き、画面に文字が打ち込まれていく
まずはもふへ向けた、温かい感謝の言葉
続いて、シヴァへ向けた、ゆあんくんらしい優しい言葉
もふ
シヴァ
画面に刻まれた、まぎれもないメンバーからのメッセージ
2人の瞳に、一気に光が戻る
それと同時に、張り詰めていた2人の仮面が完全に崩れ去り、2人は机に突っ伏して、まるで子供のように声を上げて泣き崩れた
正気を取り戻し、お互いを支え合うように涙を流す2人
その姿を確認し、俺はパソコンの画面からそっと抜け出した
最大の感謝が伝わった代償として、俺の身体は、今度は胸から肩のあたりまでキラキラと金色の粒子になって、これまで以上に大きく、サラサラと消え去っていく
残る体は、ついに首から上
――顔だけになろうとしていた
俺は涙を必死に堪えながら、愛おしそうに2人を見つめ、天使の元へ振り返った
ゆあんくん
天使
天使は静かに頷き、優しく指を鳴らした
まばゆい光が俺を包み込み、ゆっくりとあの最初の暗闇へと帰っていく
涙を流しながらも、ようやく自分たちの足で前を向いて生きることを決めてくれた
大切な2人の背中を、その瞳にしっかりと焼き付けながら