絶対に好きになってはいけない人

4月。入学式の日

家を出る前に、私は鏡の前に立ってチェックをすることにしている

私、仁科蒼（にしなあおい）は男装して高校に通うことになりました！！

というのも…

──14年前

私のお母さんが離婚して再婚した

だけど…

バシッ

私と慶人お兄ちゃんの新しいお父さんは、お兄ちゃんを毛嫌いしていて

お母さんはお父さんに嫌われたくなかったから

お兄ちゃんをしょっちゅう虐待していた…らしい

そのことが保育園でバレて、児童相談所に連絡がいき

施設で過ごしていたお兄ちゃん

その想いもむなしく、お兄ちゃんは小学生の頃に養子として

よその家の人に引き取られた

そして、10年後──

お兄ちゃんは高校2年になると、その家を出てひとり暮らしを始めたらしい

理由は居心地が悪いとかじゃなく、学校までが遠いから

義理の両親と相談し家を出た

その頃、私は中学3年生だった

年を重ねるにつれ、気になる気持ちは増す一方だった…

私は、以前から私のことを色々気にかけてくれてたあの人に事情を話して…

受験の時の性別を偽装してもらえないか相談した

この人は、お母さんのことはいいように思ってないみたいだけど

私が、お兄ちゃんのことを聞いたら星高にいるか調べてくれて内緒で協力してくれた…

偽装してもらったのは性別だけで、もちろん、筆記試験は実力で合格した

約1年間、この時のために色んなことを犠牲にして

合格するために、ひたすら頑張ってきたんだ…

──現在

そう自分に言い聞かせ、高校生活が幕を開けた

入学式も終わり、それぞれが教室に移動すると…