屋上
葉月の手にはあの栞。
酒井葉月
…これ、私があげたチャームだよね
高峰理央
…そうだね、
酒井葉月
どうして、黙ってたの?
静かに問いかけたその声に 理央はいや、悠翔は何も答えられずにいた
酒井葉月
私、ずっとあの日から立ち止まってた。
酒井葉月
でもやっと前に進もうって思い始めた時にまたあなたが来て…
高峰理央
ごめん
酒井葉月
ごめんじゃない、どうして?
酒井葉月
どうして悠翔じゃなくて理央になってまでここに来たの…?
高峰理央
…葉月にもう一度会いたかった。でも悠翔として会えばきっと君は前を向けなくなる
高峰理央
そう思ったんだ
酒井葉月
そんなの…私が決めるよ、
高峰理央
そう、だよなでももう葉月の幸せを壊したくなかった
高峰理央
名前を捨てても嘘をついても君のそばにいられたらって、バカだよな…
酒井葉月
…ずるいよ。なんで全部一人で決めてんの
酒井葉月
それでもあなたじゃなきゃ、だめなのに…
言い終わると同時に我慢していた涙が零れた
高峰理央
今は、もう一度だけ言わせて。
酒井葉月
…え?
高峰理央
葉月、俺ずっと葉月が好きだった。生きててよかった、って思えたのは
高峰理央
また君と出会えたからだよ
その言葉に私は涙が止まらなかった。
けれど二人の時間はもう"前と同じ"には戻らない。嘘と沈黙と想いが絡まった時間だった