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第1話 - あ

2023年11月27日

#恋愛

結城　真矢

トウコ

妊娠したわ

ナツヒコ

ハァ？

ナツヒコ

お前、冗談は顔だけにしろよな

ナツヒコ

結婚した時はまだ見れたんだけどなぁ

トウコ

冗談なんかじゃないわ！

ナツヒコ

想像妊娠じゃないか？

ナツヒコ

もともと、腹が出てるんだから

ナツヒコ

ホントかどうか、分からないよ

トウコ

酷いっ！

ナツヒコ

俺、最近、お前のこと女に見れねぇわ

ナツヒコ

悪いんだけど

ナツヒコ

結婚して10年近く経つのに子供なんて

ナツヒコ

本当に俺の子か？

トウコ

それって、あんまりじゃない！

トウコ

あなたの子供よ！

ナツヒコ

俺、嬉しいより辛いわ

ナツヒコ

どの面下げて、不細工なお前との間に子供ができただなんて

ナツヒコ

世間に公表するっていうんだ？

ナツヒコ

今だに、なんでお前と結婚したのかって納得できないし

ナツヒコ

悩みの種だよ

トウコ

なによ！そんな事ばかり言って！

ナツヒコ

俺ってモテモテなのになぁ

ナツヒコ

きっと、魔が差したんだろうな

トウコ

もう！

～1カ月後～

トウコ

今日、病院に行って来たの

ナツヒコ

なんだよ～！仕事で忙しいんだよ！

トウコ

胎児の写真を撮ってもらえたの

トウコ

貼り付けて送るね

トウコ

仕事の合間に見てよ

トウコ

きっと、癒しになるわ

ナツヒコ

癒しどころか、頭痛の種だよ

ナツヒコ

父親だっていう、気持ちにもなれないわ

ナツヒコ

やっぱり、俺の子じゃないんじゃないの？

ナツヒコ

これっぽっちも、愛情が湧かないよ

トウコ

そんなこと言わないでよ！

トウコ

あなた以外の誰の子だって言うのよ！

ナツヒコ

そんなの、俺が知るかよ！

ナツヒコ

あ～あ、俺は子供なんて欲しくなかったんだよ

ナツヒコ

特にお前との子供はさ！

ナツヒコ

もうお前は40歳だろ？高齢出産もいいところじゃないか？

ナツヒコ

俺はまだ32歳だから、若くて可愛い女の子に産んで欲しいんだよな

トウコ

それって、別れて欲しいとか言ってるの？

トウコ

子供ができて喜んでくれると思ったのに

トウコ

少しも子供に愛情がないっていうの？

ナツヒコ

だから、そうだって言ってるじゃないか

トウコ

まさか、浮気してるんじゃないわよね？

ナツヒコ

そっ、そんなこと、してないさ！

トウコ

本当？

ナツヒコ

もちろんさ！

～数カ月後～

トウコ

あなた、つい最近帰りが遅いと思ったら

トウコ

仕事じゃなかったのね？

ナツヒコ

なに言ってるんだ。もちろん仕事だよ

トウコ

ママ友たちが、あなたと若い娘が腕を組んで歩いているのを

トウコ

ホテル街で見たって言うのよ!

トウコ

それも、目撃者は一人や二人じゃないのよ！

ナツヒコ

俺よりも、ママ友を信じるっていうのかよ？

トウコ

そうじゃないけど、目撃証言があなたの残業の日とダブってるのよ

ナツヒコ

そんなの、ただの偶然だ

ナツヒコ

そんなことより、今日は早く帰るよ

ナツヒコ

お前は不細工な奴だけど、料理の腕前はプロ級だからな

ナツヒコ

数少ない取柄だから、大事にしろよな

トウコ

それって褒めてるの？

ナツヒコ

もちろんさ。それじゃな

～数カ月後～

トウコ

子供が産まれたわよ！

トウコ

どうして出産の日に病院に来てくれなかったの？

トウコ

あなたのご両親は、来てくれたのに！

ナツヒコ

それは、急だったから仕事の調整がとれなかったんだよ

ナツヒコ

ちょうど、出張してたからさ

トウコ

あなたの会社って、出張なんてあったかしら？

ナツヒコ

えっ？どうして、そんなことを？

トウコ

確か、日帰りの出張はあっても、泊りはないはずよ

ナツヒコ

そんなこと、誰に聞いたんだよ？

トウコ

誰だって、いいじゃない！

トウコ

とにかく、病院に来てよ！

ナツヒコ

分かったよ

～翌日～

アキコ

どうして、出産の日に病院に行ってあげなかったの？

ナツヒコ

そんなこと、どうだっていいじゃないか？

アキコ

そんなわけないでしょ？

アキコ

トウコさんが出産間際の時でも、残業だからと言って

アキコ

帰りが深夜になってたそうじゃない？

アキコ

お前の会社はいつからそんなに残業が多くなったんだい？

ナツヒコ

そんなのいつからだって、いいじゃないか？

ナツヒコ

お前は父親になったというのに、相変わらずいい加減な子だね

アキコ

母さん、いつまでも子供扱いするなよ！

ナツヒコ

お前がそんなんだから、つい干渉したくなるんだよ

アキコ

とにかく、トウコさんはお前の子を産んでくれたんだから

アキコ

優しい言葉でもかけておあげよ

ナツヒコ

それにしても、不細工な子供だったな

ナツヒコ

あいつにそっくりだよ

アキコ

産まれた時は、みんなそんなものだよ

アキコ

目元はお前にそっくりじゃないか？

ナツヒコ

やめてくれよ！

ナツヒコ

それに、俺の子供かどうか分かったもんじゃないよ

アキコ

どうしてそんなことを言うんだい？

ナツヒコ

だって、結婚して10年目にして産まれるなんて

ナツヒコ

あんまり聞いたことがないしな

ナツヒコ

それに、子供に対してまったく愛情を感じないよ

アキコ

そんなこと言うもんじゃない！

アキコ

いったい誰に似たんだろうね

アキコ

お父さんに言ったら、ますます幻滅させるだろうね

アキコ

とにかく、トウコさんには優しくしておあげ

ナツヒコ

分かったよ

～３日後～

アキコ

あんた、なんてことしてくれたの？

アキコ

よくも真冬に、トウコさんと赤ん坊を車から降ろして

アキコ

道端に置き去りにしたわね？

ナツヒコ

なんでそんなことを知ってるんだ？

ナツヒコ

また、トウコが母さんに告げ口したのか？

ナツヒコ

あいつは不細工の上に、おしゃべりだな

ナツヒコ

子供が車の中で泣き叫んでうるさいから

ナツヒコ

我慢できなくなったんだよ

アキコ

悪びれもせず、よくそんなことが言えたもんだね？

アキコ

トウコさんに、少しでも申し訳ないという気はしないのか？

ナツヒコ

母さん、何言ってるんだよ

ナツヒコ

そんなふうに思ってるなら、最初からしないよ

ナツヒコ

それにほっといても、ちゃんと家には帰ってたしな

ナツヒコ

しぶとい奴らだよ

アキコ

お前って子は、なんて奴だろう

アキコ

罪悪感っていうものがないのかね？

ナツヒコ

まったくないね！

ナツヒコ

どうせあの赤ん坊は別の奴の子供さ

ナツヒコ

どうして、他人の子供を俺が育てなけりゃならないんだ？

アキコ

お前、まだそんなことを言ってるのか？

ナツヒコ

あんな、年の離れた不細工な女と子供に愛情なんて

ナツヒコ

あるわけないだろ？

アキコ

お前って子は･･･

アキコ

父さんと話し合って、内緒にしてたんだけど･･･

ナツヒコ

なんだよ？

アキコ

お前は不妊症だと言われてたんだよ

ナツヒコ

えっ？俺が不妊症？

アキコ

お前が子供の頃に、40度近い熱が3日以上続いたのよ

アキコ

そうしたら医者が、将来不妊症になるかもしれないと言ってたわ

アキコ

だから、お父さんと話し合って、お前には内緒にすることにしたの

アキコ

お前は一人息子だし、孫は諦めていたんだ

アキコ

そんなところに、結婚10年目で子供が産まれたんだ

ナツヒコ

そんな･･･

アキコ

お父さんと一緒に、どれだけ喜んだことか･･･

ナツヒコ

知らなかったよ。そうと知ってたら、もっとトウコを大事にしたのに

アキコ

今からでも遅くないから、トウコさんには優しくするのよ

ナツヒコ

分かったよ。母さん

～翌日～

ナツヒコ

今日は早く帰るから、待っててくれよ

ナツヒコ

二人で出産記念のパーティーをしようと思ってるんだ

トウコ

私と赤ん坊を真冬に車から放り出して謝りもせず

トウコ

まるで、なかったかのようなもの言いね！

ナツヒコ

あの時は、俺が悪かった。謝るよ

トウコ

謝って済むと思うの？赤ん坊が死にかかったのよ！

トウコ

あなたが車で走り去った後、15分もしたら

トウコ

私でさえ死ぬんじゃないかと思ったわ

トウコ

運よく善良な人が通りかかって、車に乗せてくれたからよかったけど

トウコ

あのままだったら、二人とも死んでいたわ！

ナツヒコ

でも、ちゃんと帰っているじゃないか？

ナツヒコ

大げさなんだから･･･

ナツヒコ

そんなに怒らないでくれよ

トウコ

たまたま運よく帰ってこれたのよ！

トウコ

あなたの顔なんて見たくないわ！

トウコ

それを、出産祝いパーティーですって？

トウコ

あなたは私を苛立たせるのは、天才的ね！

ナツヒコ

またまた～。そんなこと言って

トウコ

私は本当に怒っているのよ！

ナツヒコ

悪かったよ･･･

トウコ

それだけじゃないわ！

トウコ

知ってるのよ！あなたが若い娘と不倫してるの！

トウコ

相手は高校生だってね？

ナツヒコ

へ？

ナツヒコ

そんなことはない。濡れ衣だ

トウコ

それに妊娠しているそうね？

トウコ

親御さんが怒って、私に連絡してきたのよ

ナツヒコ

そんな馬鹿な？

トウコ

あなたがやってたことって、援交よね？

トウコ

警察沙汰になりたいの？

トウコ

子供が産まれたっていうのに、恥ずかしいとは思わないの？

トウコ

もう、これ以上我慢できないわ！

トウコ

離婚してよ！

ナツヒコ

そんなこと言うなよ

ナツヒコ

母さんから聞いたんだけど

ナツヒコ

今まで子供が産まれなかったのは、俺のせいだったんだ

トウコ

それで？

ナツヒコ

やっと産まれた俺の子供なんだ

ナツヒコ

一緒に育てたいと思ってるんだ

ナツヒコ

改心するから、離婚だなんて言わないでくれよ

トウコ

改心ですって？

トウコ

高校生の子を妊娠させたってことは、どうするつもり？

ナツヒコ

それは、きっと間違いなんだよ！

トウコ

間違い？どうして、そんなこと分かるのよ？

ナツヒコ

どうしてって、なんとなくさ･･･

トウコ

あなたは警察に捕まっていないだけの犯罪者よ！

トウコ

高校生との援交、それに殺人未遂

トウコ

そんな人とどうやって暮らせばいいのよ？

ナツヒコ

高校生の妊娠は、俺じゃないよ！

トウコ

私の子供のことも、自分の子じゃないって

トウコ

ずっと、言ってたわよね

トウコ

愛情を感じないとも、言ってたわね

トウコ

それなのに、何を信じたらいいっていうの？

ナツヒコ

そっ、それは、そんなこと言った気もするけど･･･

ナツヒコ

悪かったよ。反省しているよ

トウコ

あなたが高校生と援交していた事実は消えないのよ

トウコ

恥ずかしいと思わないの？

トウコ

高校生との援交だなんて！

トウコ

あなたへの愛情なんて

トウコ

どこかへ消えてしまったわ

ナツヒコ

そんな。お前はどんなことがあっても

ナツヒコ

俺を見捨てないって、自信があったのに･･･

トウコ

そんなわけないでしょ？

トウコ

あなたとは、離婚よ！

ナツヒコ

そんな･･･

～翌日～

アキコ

なんてことしてくれるんだ

アキコ

トウコさんから聞いたよ！

アキコ

高校生と援交してたんだって？

アキコ

妊娠させたっていうのはどうかと思うけど？

ナツヒコ

そうだろ？

ナツヒコ

高校生なのに、複数人と交際してるんだよ、きっと･･･

アキコ

どちらにしても、付き合いがあったと言うことだね？

ナツヒコ

それが、その･･･

アキコ

まったく、なさけない

アキコ

どう、責任を取るっていうんだ･･･

アキコ

お前がトウコさんを真冬に車から降ろして走り去った件

アキコ

高校生との援交

アキコ

もう、お前をかばい切れないよ

ナツヒコ

そんなこと、言わないでくれよ

アキコ

父さんと相談したけど、お前は勘当することにしたよ

アキコ

トウコさんと話をしたんだけど

アキコ

トウコさんと赤ん坊はうちで面倒をみることになったよ

ナツヒコ

俺を見捨てるってことか？

アキコ

そういうことになるね

アキコ

お前は、悔い改めて生活するんだよ

アキコ

トウコさんと援交相手の高校生との慰謝料を請求されるだろうから

アキコ

そのことは、ちゃんとしなさい

ナツヒコ

ひどいよ母さん･･･

アキコ

自業自得というものだね

アキコ

がんばりなさい

～後日談～

トウコ

離婚の原因となった高校生の子供は、同級生との子供でした

トウコ

随分ご立腹だったご両親でしたが、子供が夫の子供じゃなかったことで

トウコ

示談ということで解決しました

トウコ

高校生のカップルは、卒業後に結婚するそうです

トウコ

もちろん、私も夫から慰謝料を請求しています

トウコ

夫のご両親も、そのことについては賛成してくれています

トウコ

そして、赤ん坊の面倒をみてもらえるそうなので

トウコ

ずっと専業主婦だった私ですが、仕事に出ようと思っています

トウコ

夫はというと、私と浮気相手の高校生の慰謝料を稼ぐのに苦労していて

トウコ

競馬に手を出して、余計に支払いを増やし

トウコ

何をしてるのやらという生活です

トウコ

私は夫と別れてからの生活が楽しくなって

トウコ

なんだか、夫には悪いような気がしてくるのだから不思議です

トウコ

それだけ、心に余裕ができてよかったねと、義両親は言ってくれています

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結城　真矢

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