また同じ夢を見た。
ある意味クラスに欠かせない存在だった僕の学生時代の夢。
僕はみんなのおもちゃだった。
クラスの片隅に一人座る僕に
誰かがゲーム感覚で二言三言話しかけ、僕の受け答えを笑いながら仲間のところに戻っていく。
ノートを机に入れたまま教室を離れたら
悪趣味なアートがいつのまにか追加されて雑に引き出しに戻されている。
定期的に始まるヒーローごっこ。
悪役はいつも僕がやらされる。
陽太
陽太
陽太
何度見たかわからない夢。
それでも毎回冷や汗が寝起きの顔を不快なほど濡らす。
悪ふざけで階段から突き落とされ、全身打撲で病院に通う羽目になってから
学校に行こうと制服に着替えるだけで吐き気がするようになり
そのまま僕は引きこもってしまった。
母さん
母さん
母さん
おずおずとドアをノックして母さんが言う。
陽太
陽太
母さん
パタパタとスリッパを履いた足音が遠ざかっていった。
陽太
陽太
画面の中の世界はいい。
現実のどうしようもない自分を忘れさせてくれる。
パーティー仲間
パーティー仲間
陽太
陽太
ドンドンドン
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
陽太
陽太
パーティー仲間
パーティー仲間
陽太
兄さん
兄さん
陽太
陽太
陽太
陽太
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
気がついたら手元にあったペットボトルを部屋のドアに投げつけていた。
兄さん
兄さん
陽太
陽太
陽太
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
ドンドン、と威嚇するように大きな音を立てて階段を降りていって…
兄さん
兄さん
陽太
母さんは救急車で運ばれていった。
陽太
陽太
兄さん
兄さん
母さん
兄さん
兄さん
兄さん
陽太
兄さん
陽太
兄さん
兄さん
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
渋々僕はうなずいた。
洗濯
兄さん
兄さん
母さん
母さん
料理
兄さん
陽太
兄さん
母さん
母さん
兄さん
兄さん
陽太
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
陽太
僕だってわかってる。
このまま母さんに依存した生活をしてはいけないと。
…しかも僕は
母さんが倒れたあの時、母さんの心配よりも
…今後の家事の心配をしてしまったのだ。
陽太
陽太
陽太
陽太
陽太
歩いて10分のスーパーに向かう。
陽太
???
???
???
周りの人達が僕のことを悪くいってる気がしてならない。
視線が怖い。
陽太
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
ピリリリリ、と兄さんの携帯が鳴った。
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
兄さん
陽太
兄さん
兄さん
兄さんは僕をおいて行ってしまった。
陽太
陽太
陽太
陽太
行列に並び、店員にカゴを渡す。
店員
陽太
店員
その店員は…
僕をいじめていた主犯だった。
堪らなくなり、スーパーの外へと逃げて行く。
店員
陽太
5年間引きこもっていたせいもあって体が鈍りきっており、すぐにへたり込んでしまった。
店員
陽太
陽太
こいつと顔を合わせたくない、今すぐここから逃げ出したい。
這いつくばって逃げようとする。
店員
陽太
陽太
陽太
店員
店員
主犯の子は近くの自販機でジュースを二人分買ってきた。
店員
そう言ってベンチに腰掛け、自分のジュースの封を開ける。
陽太
僕は抗議も込めて、ベンチの端に顔を見なくてもいいように横向きに座った。
店員
店員
店員
店員
店員
店員
陽太
店員
店員
陽太
店員
店員
陽太
数歩離れてそいつが着いてくる。
店員
陽太
店員
店員
陽太
店員
店員
店員
陽太
店員
店員
店員
店員
陽太
陽太
店員
店員
店員
店員
店員
店員
店員
それだけ行ってそいつは帰って行った。
陽太
過去に囚われ、スペックを呪い努力せず、5年前のまま止まっていたのは僕だけだった。
それがアイツに言われて初めて分かったのは悔しいけれど…
近所の人
陽太
陽太
陽太
陽太
近所の人
近所の人
陽太
陽太
近所の人
近所の人
陽太
陽太
陽太
陽太
陽太
過去に囚われず、一旦置いておいて今日を生きる。
それを繰り返して…
そして大人になってゆく。
コメント
16件
誰にでも起こり得そうなことですが「一旦置いておく」そして人は成長するんですね! とても素敵なお話でした。 心が温まりました。ありがとうございます。
あかいとまとさんのビブリオテラーからやって来ました! 人が少しずつ変わる姿いいですね!
あかいとまとさん 彼もきっと立ち直れますよね…!