蓮斗
神社を後にして、俺は人里へ向かうことにした
石畳の道を歩き、徐々に人の気配が近づいて来る
木造の家々が立ち並ぶ風景
記憶の片隅にあるそれと比べても、大きな変化はない
だが、目に映る穏やかさの裏に、"何か"が欠けている気がしてならなかった
蓮斗
里の広場に辿り着くと、賑わいの声が耳に入ってきた
商人
子供
行商人が声を張り上げ、子供たちが走り回っている
活気はある、だが
俺が期待していたものは、どこにも見当たらなかった
蓮斗
神社の話題だ
誰一人として、博麗神社や巫女について口にしていない
蓮斗
思わず口から声が漏れる
だが、それを気にする者はいなかった
俺は足を止め、近くの商人に声を掛ける
蓮斗
蓮斗
商人は俺を一瞥し、愛想笑いを浮かべる
商人
商人
商人
蓮斗
俺は商人の言葉に首を傾げる
商人
商人
商人
商人は軽い口調でそう答え、再び自分の仕事に戻る
蓮斗
俺はただその場で立ち尽くしていた
蓮斗
かつて、博麗神社は幻想郷の中心だった
人間と妖怪の均衡を保つ巫女の存在は、住人たちの信仰を集め その力の源となっていた
だが、今の博麗神社には信仰の欠片もない
ただ「妖怪退治をする巫女」が住む場所
それ以上でもそれ以下でもないのだ
俺はさらに歩き回り、人々の会話に耳を傾ける
女性
女性
それでも、どこでも同じような反応だった
博麗神社の話題が出ることは少なく、出たとしても無関心な声が殆どだった
その内、近くの茶屋から笑い声が聞こえて来た
耳を傾けてみると、巫女についての話題が聞こえてくる
男性
男性
男性
男性
男性
蓮斗
その言葉を聞いたとき、俺は悟った
霊夢の「上手く行っている」というのは こういうことだったのだ
住人たちは博麗神社に一切の期待も抱いていない
ただ、いざというときに問題を解決する便利な存在としか見ていないのだ
そこには、信仰も尊敬も、なにもない
蓮斗
俺はその場を離れ、里を出る道を歩き始める
心の中に渦巻く感情を整理することはできない
ただ一つ、はっきりとした考えが浮かんでくる
蓮斗
博麗神社の力は信仰に支えられるものだ
それを失った今、霊夢がいくら「上手くやっている」と言ったところで 幻想郷はどこかで破綻するに違いない
俺は決意を固めた
もう一度博麗神社に戻り、この怠け者の巫女に俺の言葉を叩き込む
それでも拒むというなら____
蓮斗
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