類
彰人くん、おはよう!今日もよか天気やなあ!
彰人
おはよーございます。すごい晴天っすね。
彰人
(なんか、昨日から類センパイに懐かれたような気がするな。嬉しいけど。)
類
今日も蔵ん整理すっとかい?
彰人
あー、そうですねぇ…
彰人
まぁ、あれはゆっくりやってけばいいですし。今日はやんなくていいでしょ。
類
そんなら、都会ではどぎゃん遊びすっとか教えて欲しかね。
彰人
えっと…都会の遊びっすか?
彰人
そうですねぇ…オレはカラオケ行ったり、ゲーセン行ったりしてましたね。
司
2人だけでこすかぞ!何ん話ばしよったんや?
類
あ、司くんに冬弥くん!おはよう。
冬弥
おはようございます。
類
今は都会でん遊びば教えて貰うとったんや。
司
おお!都会ん遊びか!
冬弥
それは俺も気になるな。彰人はいつも何して遊んでたんだ?
彰人
ゲーセンとかカラオケだな。
司
おお!都会うぽかね!
彰人
一応聞くけど、ここにカラオケとかゲーセンは…
冬弥
無いな。
彰人
だよな〜
冬弥
俺も話だけで、どちらも実際に行ったことはない。
彰人
へぇ
彰人
じゃ、行ってみる?もうちょい都会の方行けばあるだろうし。
冬弥
それは…電車でか?
彰人
おう。
司
ここん電車は1時間に1本来るか来んかばい。
彰人
い、1時間に1本?!?
類
最寄りん駅でん車で40分かかるばい。
彰人
最寄りで40分!?
冬弥
あぁ…だから、ここの人達はあまり電車を使わないんだ。
彰人
マジか…
彰人
(東京で生きてきたオレにとっては有り得ない話過ぎるな…)
司
今日は釣りでもするね?釣具なら貸しちゃるぞ!
彰人
釣りか…やった事ないっす
司
教えちゃるけん大丈夫ばい!
類
じゃあ、釣具ば持って海に集合やなあ。
司
冬弥!彰人を海まで案内しちゃってくれん!
冬弥
分かりました。
冬弥
俺も一旦家まで帰るから、着いてきてくれるか?
彰人
了解。あ、ついでにお前の家族に挨拶していい?
冬弥
あぁ、構わない。ただ、いるのは祖父母だけだぞ。
彰人
あー…父さんと母さん、海外にいるんだっけ?
冬弥
…あぁ。もう10年は帰ってないな。
彰人
そうか…
彰人
あ、兄貴たちは?2人くらいいたよな?
冬弥
どちらも都会の方で働いてる。まぁ…5年前の手紙から、連絡は途絶えたが。
彰人
へぇ、手紙…
彰人
(手紙と言えば…小さい頃、会えないからって、冬弥と手紙出し合ってた時期があったような…)
彰人
(荷物…捜せば、まだ残ってんのかな。捨ててはないと思うけど。)
彰人
(帰ったら探してみよう。)
海
司
これば使うてくれん!
類
釣りは初めてなんやっけ?教えちゃるけん安心しなっせ。
彰人
ありがとうございます!
彰人
オレ、川で魚掴みしかした事ないんだよな。
冬弥
魚掴みか…いいな。ここの川でも出来るぞ。
類
冬は寒かけん、行くなら夏がよかね。
司
大物ば釣ってみするぞ!類、勝負や!
類
フフ、望むところばい。
冬弥
先輩方は釣りが上手いんだ。素潜りも上手だぞ。
彰人
へぇ、そうなんだ。
彰人
(釣りくらいなら、絵名も誘えば良かったか…?いや、アイツ寒いから無理とか言いそうだしな、)
2時間後
彰人
めっちゃ釣れましたね
類
彰人くんは筋がよかねぇ
司
また勝てんだったか…素潜りでは絶対に勝つぞ!
類
こん極寒ん海に潜ると??
彰人
冬弥、この魚なんてやつ?
冬弥
寒サワラだな。刺身でも美味いし、焼いても蒸しても美味いぞ。
彰人
あっ、サワラか。食う前ってこんな感じなんだ。
冬弥
彰人の家に魚が捌ける人はいるか?
彰人
あー、どうだろ。母さんとかやれば出来んのかな?見た事ないけど。
冬弥
良かったら、俺が捌いて彰人の家まで持って行こうか?
彰人
えっ、いいのか?!けど、お前ん家ちょっと遠くね?
冬弥
ここではお隣さんだぞ。
彰人
マジか
彰人
でも、わざわざ持ってきてもらうの悪いし、オレが取りに行くわ。
冬弥
そうか?気にしなくてもいいんだが…
類
そんなら、彰人くんも一緒に魚捌いたらどぎゃんかい?
彰人
えっ?
類
冬弥くんな魚捌くん上手やし、教えてもらいなっせ。
彰人
あー、なるほど。たしかにオレも覚えときたいかも。
冬弥
分かった。そういう事なら、家で教えよう。
冬弥の家
冬弥
ただいま。
彰人
お邪魔します。
冬弥の祖母
おかえりなさいぇ
冬弥の祖母
あら、お友達と?
冬弥
こん前話しよった彰人ばい。
冬弥の祖母
あれま、彰人くん?久しぶりやなあ!
彰人
はい、お久しぶりです。
冬弥の祖母
背も高うてむしゃんよう育ったねぇ
彰人
?あ、ありがとうございます…?
冬弥
「むしゃんよう」は「カッコよく」みたいな意味だ。
彰人
あっ、そうなんだ。ありがとうございます。
冬弥
今から魚ん捌き方ば教えてくるけん、台所ば借るね。
冬弥の祖母
もちろんよかばい。ゆたーっとしていきなっせ。
冬弥
こうやって、えらの付け根を切りながらかまの下を切る。
冬弥
反対側も同様だ。
彰人
えらの付け根…こう?
彰人
って、ちょっと硬いな
冬弥
もう少しこの辺りに力を入れるんだ。
彰人
おぉ〜!お前すげぇな
冬弥の祖父
お、花嫁修行と?
彰人
え??
冬弥
ち、違う!魚ん捌き方ば教えとるだけばい!
冬弥の祖父
はっはっは、そぎゃん焦らんちゃいかろう。
彰人
あっ、あの、東雲彰人です!お邪魔してます。
冬弥の祖父
おお、彰人くんかい!久しぶりやなあ
冬弥の祖父
また一段とむしゃんようなったなぁ
彰人
ありがとうございます
冬弥の祖父
うちん冬弥婿にもらわんね?よか男たい〜
冬弥の祖母
これっ、爺さん!
冬弥の祖母
あんまりちょっかいかくるんじゃなかばい。
冬弥の祖父
はっはっは、すまんね。
冬弥
祖父がすまない、彰人…
彰人
いやいや、うちの爺ちゃんもあんな感じだったし。
彰人
「彼女はおらんのか?」「嫁はまだか?」だとかさ。当時のオレはまだ12歳だっつーの
冬弥
ふふっ…いいな。
冬弥
そういえば、夕飯はどうする?どうせなら、食べて行かないか?
彰人
あー…じゃあ、食べてってもいいか?
冬弥
あぁ!あとで祖母にも伝えておこう。
彰人
(オレも、あとで絵名に連絡しねぇと)
冬弥の祖母
彰人くん、魚捌くん上手やったねぇ。あとでこの魚も持って帰りなっせ。
彰人
えっ、こんなにいいんですか?
冬弥の祖母
よかよか。みんなで食べなっせ。
彰人
ありがとうございます!
冬弥の祖父
今日はみんなで釣りばしたんやって?楽しかったか?
彰人
はい、めちゃくちゃ楽しかったです!
冬弥の祖父
そら良かった。これからも冬弥と仲良うしちゃってくれんね。
彰人
はい、こちらこそ。
彰人
(げっ、人参入ってんの気付かなかった…)
冬弥
…もしかして、まだ苦手なのか?
彰人
えっ?
冬弥
人参。昔苦手だっただろう?
彰人
お、覚えてんのかよ…
冬弥の祖母
あれま、人参苦手やったと?無理せんちゃよかけんね。
彰人
い、いや、大丈夫です。食べます。
彰人
(この歳になっても人参食えないとか、流石にガキ過ぎるしな、)
自宅
彰人
ただいまー
絵名
あ、おかえり〜
彰人
これ、土産。冬弥のお婆さんから。
絵名
え、それ全部?!ちゃんとお礼言ってくれた?
彰人
当たり前だろ。とりあえず冷蔵庫入れとくぞ。
彰人
飯は?もう食った?
絵名
うん。さっき母さんが作ってくれたから。
彰人
ふーん。風呂は?
絵名
沸いてるから入ってきていいわよ。
彰人
じゃ、いってくる。
自室
彰人
えっと、荷物はたしかこの辺に…
彰人
あ、あった。
彰人
この缶、懐かしいな。大事なものしまってたっけ。
彰人
(開けるのは小学生以来か?)
彰人
…
彰人
うわっ、懐かしい!無くしたと思ってたメダルじゃん!
彰人
これ好きだったな〜…そうか、しまってたのか。
彰人
っと…お、手紙の束発見!
彰人
えっと…あぁ、小学生の頃の友達のやつばっかだな。
彰人
誕生日にもらったやつとか…ちゃんと取ってたんだ、
彰人
あ、これ冬弥のじゃね?
彰人
1、2……うわ、20枚はあるな、
彰人
そりゃそうか。6年分だもんな。
彰人
(1番初めのは…これか?)
「拝啓 東雲彰人 さま 夏はいっしょにあそんでくれてありがとう。 彰人が好きだといってくれたくだものを、来年も用いしておきます。 またあそびにきてね。 敬具」
彰人
か、可愛い……?!
彰人
てか、拝啓と敬具って…真面目かよ!
彰人
字も綺麗だな〜。これで小学1年生か…
彰人
オレの字、汚かっただろうな〜…冬弥も、オレの手紙ってまだ持ってたりすんのかな?
彰人
まぁ、アイツは貰ったもの捨てるとかしなさそうだし、持ってそうだけど。
彰人
にしても、この手紙可愛いな…
彰人
えっと、これが2枚目か?
「拝啓 東雲彰人 さま また会えてとてもうれしかった。 夏にしか会えないのはとてもさびしいけど、来年もまたあそびにきてね。 大好きです。 敬具」
彰人
うわっ、可愛い…!!!「大好き」とか、子供ってストレートだな…
彰人
え、待って…オレも書いたっけ?だとしたら恥ず過ぎるんだけど?!
彰人
オレ、手紙になんて書いてたんだろ…全く覚えてねぇ…
彰人
オレも「大好き」とか書いてたっけ?うわーーーー……無理…!!
彰人
まぁ…けど、そんだけ仲良かったって事だよな。
彰人
(残りも読んどくか)
翌日
蔵
彰人
冬弥、そっち持った?
冬弥
あぁ、上げるぞ。
彰人
せーの…っ
彰人
(ふぅ…この箪笥重かったな…)
冬弥
大丈夫か?
彰人
おう。冬弥こそ…
彰人
(って、もしかしてコイツの方が筋力ある??)
司
彰人!こん箪笥少し動かすぞ!
司
よいしょっと
彰人
?!
彰人
(さ、さっきの箪笥を1人で?!嘘だろ?!)
類
相変わらずん馬鹿力やなあ
彰人
(とか言いつつ、めちゃくちゃ重かったダンボール普通に持ち上げてるし!?)
彰人
…
彰人
…悪い。オレ、冬弥たちに比べたら非力かも。
冬弥
えっ?き、急にどうした?
彰人
いや、3人見てたらオレって非力だな…って、
類
司くんが馬鹿力なだけばい。
司
類も大概じゃなかか。
冬弥
きっと普段の過ごし方が違うからだ。俺たちは普段、畑仕事ばっかりしてるから。
彰人
それはそうかもしれねぇけど…
彰人
(一応、体力と筋力はある方だと思ってたんだけどな)
類
そういえば、明後日からやなあ
彰人
?
司
もう冬休みも終わってしまうんか…
彰人
冬休み……あっ、学校?
冬弥
ああ、そういえば明後日から始まりますね。
司
彰人もオレたちとおんなじ学校たいな?
彰人
はい。たしか男子校っすよね?
類
そうそう。こん辺りは女子の少なかけんね。
彰人
地図見た感じ結構遠かったんですけど、電車ですか?
冬弥
いいや、専用のバスが来るんだ。
司
乗り遅れたら移動手段無うなるけん、寝坊せんごつ気ば付くるったいぞ!
彰人
うわっ、マジすか。遅刻できねーじゃん
類
毎朝8時までにバス停集合やけんね。
冬弥
念の為、明後日は家まで迎えに行こうか?
彰人
悪いな。最初だけ頼んでもいいか?
冬弥
ああ。なら、明後日は7時25分頃に迎えに行く。
彰人
おう、よろしく。
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