君があの時言ったこと
君のお願い
君の最期のお願い
聞いてあげたら良かったのに
なぜ俺は聞いてあげなかったんだろう
まどか
晃ちゃん、晃ちゃん!
まどか
ちょっと、聞いてる?
晃也(こうや)
うん…聞いてる
まどか
スマホばっか見てないで、顔見て話してよ…
晃也(こうや)
…うん。分かってる…
まどか
もう…
付き合い始めの時
まどか
ねね、晃ちゃん!
晃也(こうや)
ん?なに?
まどか
デートしたい!
晃也(こうや)
またかぁー?昨日もしたろ?
まどか
おねがーい!お願いお願いお願ーい!
晃也(こうや)
はは、いいよ。行こ。
君はいつも「お願い」って言ってたね
それであの日も。
まどか
ねね、晃ちゃん!
晃也(こうや)
……ん?
まどか
月が見たい!
晃也(こうや)
うん…今日はもう帰ろーぜ。
まどか
えぇーだって今日は満月だよ!
まどか
しかもクリスマスだし!
晃也(こうや)
俺このあとバイトだから。
晃也(こうや)
じゃあな。
まどか
……そっか。
まどか
じゃあね…
俺は君の願いを聞いてあげなかった
君にはあの日しか無かったのに。
俺は…自分のことしか考えてなかった
ごめんな。
次の日、君は持病が悪化して
救急車の中で旅立った。
君は予知してたんだね?
次の日に自分が死んでしまうこと。
だから君は最期に俺にお願いしたんだ
なのに…俺は…
君の最期のお願いを
僕は叶えてあげたい。
晃也(こうや)
綺麗だな、クリスマスツリー。
晃也(こうや)
まどか…
晃也(こうや)
ごめんな。
晃也(こうや)
一緒に見たかったんだよな、ツリーと満月。
晃也(こうや)
ごめんな、お願い、聞いてやれなくて
まどか、俺はずっと君が好きだよ。
晃也(こうや)
まどか、好きだ。
晃也(こうや)
…なんて聞こえるはずないのにな。
晃也(こうや)
なんでもっと早く言えなかったんだろうな。
まどか
そんなことない。
まどか
私も大好きだよ、晃ちゃん。
晃也(こうや)
……!
バカみたいだけど、
俺には聞こえた。
死んだはずの君の声が。
綺麗に輝く月が
その時、俺に向かって
光った気がした。