執務室
ルイ
……
ツカサ
………
ツカサ
…よし、終わりだ
ツカサ
ご苦労様、
ルイ
将校殿も、お疲れ様です
ツカサが労いの言葉をかけると、 感情のこもっていない無機質な 声音でルイは答えた。
ルイ
紅茶を淹れて来ます。
ツカサ
ああ、ありがとう
そう言い、ルイは 奥の方の部屋へ消えていった。
ツカサ
………
ツカサ
(薄っぺらい笑顔で、おまけに声色も固い)
ツカサ
(しようと思えば簡単に出来るだろうに…)
ツカサ
(…アイツの中で、きっと複雑な気持ちが渦巻いているのだろう)
ツカサ
(そうだろう?ルイ)
ルイ
(何故、上手くいかない?)
ルイ
(自ら決めたことなのに、どうして)
ルイ
(どうして見透かされる程、)
ルイ
…どうして?
ルイ
(そうだ、…僕には、できない)
ルイ
(できないから、…だ。)
ルイ
(正しい道筋を僕は選べない)
ルイ
(導いてくれる人はもういない)
ルイ
……
ルイ
ふ…、
思わず、乾いた笑いが漏れた。
ルイ
(主を無意識の内に求めてしまう)
ルイ
(貴方の言う通り、本当に虚しいですね)
ルイ
お待たせしました
ツカサ
ありがとう、
ルイが運ぶ紅茶から、 ふわりと良い香りが漂った。
ツカサ
…うん、いい香りだ
ルイ
クッキーもよければ。
ツカサ
…美味そうだな
ルイ
では、失礼します
ツカサ
……ああ
ガチャリ、と執務室の扉が 閉じられた。
ツカサ
(…刺されるかもしれないと思っていろ、なんて言われたが)
ツカサ
(刺すつもりも毒殺するつもりもないんだな)
ツカサ
(…面白い奴だが謎も多い)
ツカサ
ん、美味い
ツカサ
(…いいな)
ツカサ
…気に入った
ツカサ
(今度からはこれで淹れてもらおう…)
ルイの部屋
ルイ
……はぁ
ルイ
(心底、己に腹が立つ)
ルイ
(…なんて我儘なのだろうか)
ルイ
(僕自身が主を求めていることなんて、とっくに知っている)
ルイ
(きっと奥底には、服従したい、なんて醜い欲もある)
ルイ
(服従なんて、しようと思えば誰にだってできるはず。)
ルイ
(なのに、できない)
ルイ
(己が求めているものは服従)
ルイ
(けれど、服従させてくれない)
ルイ
(本当に将校なのかと疑いたくなる程に。)
ルイ
…………はぁ
ルイ
(…寝よう)
ギシ、と ベットへ寝転んだ。
ルイ
…
ごちゃごちゃの頭の中を 掻き混ぜているうちに、 いつしか意識が落ちていた。







