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車の中は相も変わらず静まり返っていた。
エンジン音だけが、この車内に響く。
どうしたってこんな気まずいことになっているかというと、大方眞琴のせいである。
1週間ほど前、彼が訪ねてきた際に依頼されたこの調査。
それはある村の調査なのだが、どうやら僕に"あれ"を持たす程度には危険らしい。
本当は危険なので人が多い方が安心だといって出雲も一緒に、ということだったのだが、生憎出雲は別の依頼が入っておりそれは叶わなかった。
だから今日、僕の運転する車の助手席には出雲ではなく、眞琴の後輩である八橋渉が座っている。
出雲となら何ともない沈黙も、殆ど初対面みたいな八橋とでは流石に気まずい。
特段コミュニケーション能力が高いわけではないが、とにかく何か話しておこうか__と考えていると、八橋に先に沈黙を破られた。
八橋 渉
月見 晴翔
予想外の質問に、素っ頓狂な声が出てしまう。
どういう人かなんて、本人に聞くよりも眞琴や出雲に聞いた方がいいのではないか、と思いつつも、質問に答える。
月見 晴翔
八橋 渉
もごもごと口篭ってしまう彼に、物珍しさを感じる。
それでも、彼の口から出た次の言葉に酷く動揺はしてしまった。
八橋 渉
月見 晴翔
柄にもなく動揺してしまったが、何とか冷静を取り戻す。
どうやら、彼は思っていた通りの生い立ちらしい。
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
八橋 渉
ぴりとした空気感に変わってしまう。
どうやら本気で知りたいらしいが、僕の一存では勝手に話してはならない内容だ。
ふうとひとつ息をついた後、口を開く。
月見 晴翔
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
沈黙が再び流れるのを阻止しようと、小さな疑問として残っていたことを彼に聞いてみた。
八橋 渉
ぽつりぽつり、と彼は話し始める。
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
八橋 渉
月見 晴翔
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
八橋 渉
八橋 渉
八橋 渉
月見 晴翔
きゅ、と苦虫を噛み潰したような顔をする彼には、恐らく罪悪感なるものがあるのだろう。
それでも彼は、僕には"憑いてる"から何とかなるのではとも思っている。
まあ実際のところは何とかなるんだろう。
じゃないと眞琴は、こんな依頼は警察からだとしても受けたりしない。
と言っても自分でも僕に憑いてる何かがどういうものなのか理解しきれていないが。
___考えていて、ふと疑問に思ったのだが。
月見 晴翔
先まで俯いていた八橋も、パッと顔を上げた。
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
また沈黙が流れる。
結局、目的地までは一言も喋らなかった。
目的地に着いて、眞琴が取ってくれていた旅館の駐車場に車を停める。
ふと周りを見渡してみると、どこか異様だった。
八橋 渉
月見 晴翔
きょろきょろしていると、不意に声を掛けられた。
男性
八橋 渉
男性
どうやら旅館は僕の名前で取っていたようだ。
そうだと伝えると中へ通される。
そういえば気にもしていなかったが、旅館だけは何故か他よりも廃れている__気がした。
通された部屋は外見通り、こぢんまりしていてどこか暗い部屋だった。
そして、僕らの他には誰も客はいないようだった。
八橋 渉
男性
八橋 渉
月見 晴翔
正直に喋ったのは感心しないが、特段困ることもないので黙っておく。
男性
月見 晴翔
男性
男性
男性
八橋 渉
そう言って接客係の男性は部屋を後にした。
その背中を見届けてから、僕は部屋の中を見渡してみる。
どこか怪しい匂いがするのだ。
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
八橋 渉
月見 晴翔
部屋に一つだけある窓から身を乗り出して、上やら下やらを見てみる。
すると、ひとつスマホが窓の縁に立てかけられていたのを発見した。
そしてその横には、不自然にも人の手形のようなものがあった。
月見 晴翔
八橋 渉
ひょこりと隣から顔を出してきた八橋もそれを見て顔を青くした。
八橋 渉
八橋 渉
顔面蒼白で慌てる八橋に、少々同情する。
しかしここは年上として、そして探偵として慌てるわけにはいかなかった。
こんなことで慌てていられない、それが本音である。
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
八橋 渉
それでも多分、僕は慌てていたのだろう。
本来ならそんな判断はしないはずなのに、あろうことかこんな状況下で八橋と別行動を取ってしまった。
待ってろ、そう言って月見さんは部屋から出て行ってしまった。
多分、あの人も慌てていたんだろう。
八橋 渉
なんて、誰も聞いていないのに独りごちる。
ちゃぶ台の上には、通された時に出されたお茶と、そして先程見つけたスマホ。
スマホは少々汚れていたが、使えない程ではなかった。
八橋 渉
ボクはここに調査しに来た。
だから、何か成果を上げなければ。
そう思ってスマホの電源を入れると、次に画面に表示されたのは真っ黒い動画だった。
再生してみると、何人かの女性の声が聞こえてきた。
『__と、__様について調査__。』
言葉は途切れ途切れで多少聞きづらいが、音量を上げてそのまま聞いていく。
『ぽ_ぽぽぽ__』
あの有名な八尺様の笑い声らしき音の後、動画を撮っているであろう女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
八橋 渉
しかし好奇心には勝てず、動画は止めなかった。
『え__、__ぅ__!』
女性の呻き声が聞こえ、その後ごつんと何かが殴られたらしい音が聞こえる。
そして、猟銃か何かの発砲音も。
確実に撃った、それは人をなのか、八尺様をなのかは分からないが。
『ぽ__ぽぽぽ』
『ぽぽ、ぽぽぽ』
八橋 渉
未だ鳴り止まない八尺様の笑い声にそう思い、画面をタップしてみた。
___が、動画はとっくに止まっていた。
『ぽぽぽ、ぽ』
『ぽぽぽぽ』
ぽぽぽぽぽ
八橋 渉
動画の音では無い、現実なのだ。
背中に酷く威圧感を感じるのだから後ろに確かにいる、と思っていると、急に視界が回る。
ぐるりと回った視界の中、最後に見えたのは髪の長い女性の姿だった。
__[5.隠された犯罪 ㊦]に続く